カローラが304馬力!? “モリゾウ”の名を冠した「GRカローラ モリゾウエディション」に迫る! 【トヨタ・スポーツ】

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新発売のムック「トヨタ・スポーツ」は、トヨタのスポーツカーやモータースポーツの魅力を1冊に凝縮した完全保存版だ。ここでは、そのコンテンツからGRカローラ モリゾウエディション誕生の経緯をチラ見してみよう。

ラリージャパンでも”0カー”で走行し、注目を集めたGRカローラ。 ここではメディア向け説明会で聞かれた開発ドライバー石浦宏明選手や開発担当者のコメントを元に、モリゾウエディション誕生の経緯などをご紹介したい。

【写真6枚】モリゾウエディションの内外装、エンジンを見る!

「野性味事件」。聞き間違えではない。6月1日に日本国内で発表されたGRカローラのメディア向け説明会で、関係者から聞かれたキーワードだ。これこそが、モリゾウエディション誕生のキッカケになったという。

順を追って説明しよう。2018年に登場した12代目カローラ。かつてTE25でWRC初優勝し、カローラ・レビンで1000湖ラリーを制するなど、元々カローラはモータースポーツと近い位置にあるクルマだった。しかし21世紀になるとカローラのスポーツ色が弱まってきていて、それに対して本来のカローラを取り戻したいと考えた。誰が? そう、他ならぬトップの豊田章男社長だ。

豊田社長が『モリゾウ』というニックネームを持ち、レースに自ら出場していることはあまりに有名で、マスタードライバーとしても役割を果たしているのもご存知かと思う。GRカローラ開発途中でモリゾウ”選手”はひと言、「野性味が足りない。何とかせい!」と発破をかけたのだという。

開発陣はこれを”野性味事件”と呼んでいるそうだが、まず困ったのはエンジン担当。パワートレインはGRヤリスの1.6L 3気筒ターボと4WDを使用することは決まっていて、そこからのパワーアップは計画になかった。そこでGRヤリスで当時参戦していたスーパー耐久用の304ps版エンジンをインストールすることから始めたという。かくしてエンジンだけでなくGRカローラの各部を突き詰めていったらどうなるか? というテーマが生まれ、それまで1本だったものが、通常モデルとモリゾウエディションの2本立てとなり開発がリスタートしたそうだ。

モリゾウ選手は「野性味が足りない。何とかせい!」と発破をかけた。

開発にはレーシングドライバーの石浦宏明選手も参加している。それもある程度出来上がったものを少し乗って評価するのではなく、企画時点から会議にも参加する本格的なものだ。最初は遠慮気味だった石浦選手も、野性味事件を経てガンガン指摘するようになり、それに対し開発側も指摘されたことは必ずデータにあるはずだと、すぐに検証、反映。それがかなり早いサイクルで行われたという。これはレーシングカーを作る過程とそっくりで、水素エンジンのカローラでスーパー耐久選手権に出場しそのデータをフィードバックするなど、まさにモータースポーツと近い位置にあるカローラ復活となった。そしてGRカローラは2022年3月31日にカリフォルニアで世界初お披露目され、日本でも6月に発表。発売は2022年後半とされているから、本誌発行時点では発売開始しているはずだ。

GRカローラの成り立ちを簡単に説明すると、スポット打点増しなどで骨格をレベルアップして体幹を鍛え、GRヤリスから32ps増しとなる1.6L+4WDを搭載し、前後トレッドも拡大してロングホームベースを生かした走りを創り出し、フェイクはひとつもないダクト設置や床下のフルフラット化で空力と冷却を強化し、それに見合う内外装のデザインを与えた……といったところだ。

モリゾウエディションはここからリアシートレスで約30kg軽量化し、トルクも30Nmプラスし、ローギアド化と1〜3速のクロスレシオ化などで、よりサーキット走行、スポーツ走行を愉しめる仕様となっている。  

説明会で最終的なジャッジはモリゾウ選手がするのか聞いたところ、OKが出たのは方向性だけで、まだ上を目指すように言われているという。そもそもOKを貰ったことがないと石浦選手は苦笑していたが、ゴールはスタートであり、顧客に届けてからが新たなスタートになる。「完全なものはないですから、真摯に受け止めてお客様を置き去りにしない」というコメントも聞かれた。場合によっては発売後にパーツを出し、ソフトウェアのアップデートも考えているのだという。

マスタードライバーの存在、日本のトップドライバーが企画から参加する体制、その声を受けて常に前を向いて開発するエンジニアたち。生産車のばらつきを抑えるため各部品を測定し、A Iで瞬時に最適化する取り組みを行っている元町工場のGR専用ファクトリー。そして”匠”がいるエンジンの下山工場——。

聞けば聞くほど痺れてきた。これが今のトヨタ・スポーツ、GRの姿だ。

【CONTENTS/掲載全内容】
●Prologue
巻頭言:トヨタとはスポーツカーの名プロデューサーである
年表:スポーツブランド”GR”に至るまでの系譜
表紙のクルマ:セリカGT-FOUR1995年サファリ・ラリー・バージョン
●New Cars
GRカローラ:”モリゾウ”の名を冠した究極のカローラが登場
GR86:ハチロクの聖地で考える”86とは”
GRスープラ:近くに見えて遠い境地
GRヤリス:3車3様に見るヤリスの多様性
コペンGRスポーツ:似た境遇を持つ”国産”オープンスポーツ
カタログ:新車で買えるGRのスポーツカーたち
●Heritage Cars
コラム:トヨタ・ツインカムの時代
2000GT:日本の誇りを世界に示す時
オーナーヒストリー:目黒通りの2000GT
スポーツ800:軽さがもたらすスポーツ性とは
1600GT:トヨタ・ツインカム第二章
セリカLB:ファストバッククーペの逆襲
スプリンター・トレノ:トヨタ・ツインカム帝国拡大へ
セリカXX:儀式や注釈なしに楽しめる国産スポーツ
イラスト:ヤングタイマーなトヨタのスポーツモデルたち
コラム:ソアラがなければLFAもなかった
●Motor Sports
WEC:世界耐久選手権を次世代へ繋いだ孤高の挑戦者
WRC:母国開催ラリーのポディウムを目指して
ヒストリー:モータースポーツの系譜
●Life with Toyota Sports
フォトグラファー神村さんのMR2人生
9台を所有してきた渡辺さんのヨタハチ人生
KP61スターレットでパリダカに挑んだ日本人たちの記録
モデルカーで辿るトヨタGTマシンの変遷
あなたのトヨタ・スポーツ愛、語ってください!
●And More
編集後記/スタッフリスト/読者プレゼント
自動車画家Bowさんの表紙画の世界
スクランブル・アーカイブ・シリーズのお知らせ

 

タイトル:スクランブル・アーカイブ トヨタ・スポーツ
定価:1,980円(本体1,800円/税10%
発行年月日:2022125
 本誌購入は以下より
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text&photo:Daisuke HIRAI(平井大介)

写真&取材協力:トヨタ自動車(phone:0800-700-7700)

text&photo:Daisuke HIRAI(平井大介)

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