個性的なフォルムとピュアスポーツならではの乗り味で魅了するヨーロッパ。手に入れたいならぜひ知っておきたいシリーズの変遷とそれぞれの特徴を、ヨーロッパをはじめとするロータスのオーソリティであるベンオートで聞いた。オリジンとしての魅力を放つシリーズ1をご覧いただきながら、話を進めよう。
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低さと軽さを追求した工夫が、ヨーロッパSr.1のいたるところに見られる
少し視線を低くして、この真横から見た姿がすべてを物語っていると思うけれど、ロータス・ヨーロッパに魅せられたら、もう代わりはない気がする。迷う必要はない。すぐ造詣が深いスペシャルショップのストックを物色しよう……。なんて、そそのかしておきながら、ひとつ頭に入れていただきたいことがある。生産された9年あまりの間に、ヨーロッパはモディファイを繰り返し大きく変貌したということだ。1966年にデビューした”シリーズ1(Sr.1)”、1968年からの”シリーズ2(Sr.2)”、1971年登場の”ツインカム”、そしてシリーズ最終形で1972〜75年まで生産された”スペシャル”の4モデルである。”サーキットの狼世代”のみなさんにとってはスペシャルが憧れの的だと思うけれど、今回ヨーロッパのアウトラインを説明する素材として取材したのは1967年式のSr. 1。丁寧なレストレーションが施されるとともに、オリジナルの雰囲気を損ねぬよう配慮しつつ乗りやすさを求めたモディファイにも、好感が持てる1台だ。
そんなSr.1(ロータス・タイプ46)は文字通りヨーロッパの原点である。1966年12月20日に発表され翌年から本格的なデリバリーがスタートするが、当初はエンジン供給元であるルノーとの関係を活用しフランス(=ヨーロッパ大陸)で販売をスタート。ゆえに左ハンドルのみで、英国では販売されていない。外観上はバーチカルフィンと呼ばれるリアフェンダー上部の峰と、左右ヘッドランプの間にウインカーを持たないことが特徴。また、サイドウインドーは固定式で三角窓がない。エンジンは1966年に登場した縦置きFFのルノー16用直4OHV 1470ccユニットを4速M/Tもろとも前後逆さにし、鋼板バックボーンフレームが抱きかかえるかたちでミッドに搭載した。
Sr.1最大の注目ポイントは、FRPボディパネルがフレームを包み込むように下回りにも張り込まれ、ボルトだけでなく接着で固定されること。鋼板フレームを用いているが、エリートのFRPフルモノコックとの近似性を感じさせる手間のかかった構成で、剛性や空力へのこだわりが垣間見える。それでも車両重量は613kg。82psのルノーユニットながら、現代の路上でも素晴らしく軽快に走らせることができる。
しかし、このボディ&シャシーは整備性に難があり、下回りのパネルを一部省き、ボルトのみで取り付ける方式としたSr.2(タイプ54)へ移行。外観上は左右ヘッドランプの間にウインカーを追加し、テールレンズも変更されたことで識別できる。またカーペットやラジオが標準となり、固定シートをスライド式に変更。さらにパワーウインドーも採用した。こうして車両重量は50kg程度増えたが、カスタマーの要望に応えるため快適性を優先させたわけだ。なお1970年にはフェデラルタイプと呼ばれる北米輸出向けのSr.2が登場(タイプ65)。フェンダー形状を変更してヘッドランプの位置を高め、エミッションコントロール対策ユニットを搭載していた。
このようにSr.1→2で若干快適性向上が図られたが、1971年10月、ツインカム(タイプ74)の登場でヨーロッパはさらに大きく変わる。その名の通り、ルノー・エンジンより強力な1588cc 105psのロータス・ツインカムが搭載され、ボディは後方視界を改善するためバーチカルフィンが低められたのである。ツイン燃料タンクを採用するなどロングツアラーとしての能力も高められたが、より速く、より遠くまで……そんなキャラクターの徹底は、翌’71年9月デビューのスペシャル(タイプ74)で極まった。126psの”ビッグバルブユニット”を搭載し、ルノー12ゴルディーニ用5速M/Tを投入。前後トレッドも拡大され幅広タイヤが装着されるなど走りをより強化し、内外装も豪華に飾られた。重量はさらに増加し730kgとなったが、最もパワフルなヨーロッパとして現在も多くのファンに愛されている。ヨーロッパの生産台数は合わせて9230台ほど。どのモデルであっても、そう簡単に探し出せるわけではないが、五感を研ぎ澄ましてネイキッドなライトウェイトスポーツと一体になる快感に浸りたいのか、それとも余裕のある走りと扱いやすさでヨーロッパの持つ素性をより気軽に楽しみ尽くしたいのか。このどちら側に気持ちが振れるかを慎重に見極めつつ、4世代に大別されるシリーズの中から自身にフィットするモデルを選んでほしい。