清々しささえ感じるスッキリとした乗り味
その後に、イプシロンの兄弟車であり、ベースともいえる現行型パンダに乗り換えた。イプシロンとの違いがとても気になるので、パンシロン(パンダ+イプシロン)を競わせてみることにしよう。
パンダは2017年にマイナーチェンジが施されインパネの色が黒一色に、シートが2トーンカラーに変更、ステアリングホイールも最新のフラットボトムタイプになりアルミホイールも新デザインになるなど、細かな改良が行われている。右ハンドル、0.9Lツインエア+デュアロジックという基本メカニズムや性能に変更のアナウンスは無い。
イプシロンから乗り換えると、フィアットとランチアの性格付けの違いが改めて明らかになる。実用車として割り切ったパンダにはこれでいいよね、充分だ! という清々しさもある。マイナーチェンジで一層スムーズな印象を得ているデュアロジックはイージードライブでパンダのゲタ性にぴったりだ。乗り味はスッキリしていて。フィアットは小型車づくりが上手いなと心底感心する。
ポップで親しみやすくアシとして気負いが無く誰でも乗れるパンダと、旧来からある上質なクルマの価値観を守り続け、少々乗り手も選ぶイプシロンが、同じプラットフォームから作り分けられているのも驚きだ。シートもバケット気味のパンダと、ソファー的でフラット気味のイプシロンには大きな違いがあり、ブランドによる区別が徹底している。
日本のバッジ違いの兄弟車とは区別のレベルが違う。フィアットとランチアがここまで作り分けられているなら、自分らしい方を選ぶことで自らの生き方や価値観を外に示すことも出来るだろう。
性能や装備の差、質感の差で言えばイプシロンの勝ちなのだけど、好みやライフスタイルで考えるとどちらも「適切」。だからパンシロンの争いは、パンダもイプシロンも「アナタのお好み次第。ドロー!」という結果に収まった。
そして、トリノでなぜイプシロンが数多く走っていたのかがわかった。イプシロンにはちょっとオトナの雰囲気があるのだ。小型車が有り難い都市部だからクルマは小さいほうがいい。でもシックで上質なのがいい……という層にイプシロンが売れるのは必然だったのだ。
【SPECIFICATIONS】ランチア・イプシロン1.2GOLD
■全長×全幅×全高:3837×1676×1518mm
■ホイールベース:2390mm
■トレッド(F/R):1411/1407mm
■車両重量:965kg
■エンジン:水冷直列4気筒DOHC
■総排気量:1242cc
■最高出力:69PS/5500rpm
■最大トルク:10.4kg-m/3000rpm
■サスペンション(F/R):ストラット/トーションビーム
■ブレーキ(F/R):Vディスク/ドラム
■タイヤ(F&R):185/55R15
【SPECIFICATIONS】フィアット・パンダ0.9 Turbo Easy
■全長×全幅×全高:3655×1645×1550mm
■ホイールベース:2300mm
■トレッド(F/R):1409/1407mm
■車両重量:1070kg
■エンジン:水冷直列2気筒SOHC+ターボ
■総排気量:875cc
■最高出力:85PS/5500rpm
■最大トルク:14.5kg-m/1900rpm
■サスペンション(F/R):ストラット/トーションビーム
■ブレーキ(F/R):Vディスク/ドラム
■タイヤ(F&R):185/55R15
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この記事を書いた人
1971年生まれ。東京都在住。小さい頃からカーデザイナーに憧れ、文系大学を卒業するもカーデザイン専門学校に再入学。自動車メーカー系レース部門の会社でカーデザイナー/モデラーとして勤務。その後数社でデザイナー/ディレクターとして働き、独立してイラストレーター/ライターとなった。現在自動車雑誌、男性誌などで多数連載を持つ。イラストは基本的にアナログで、デザイナー時代に愛用したコピックマーカーを用いる。自動車全般に膨大な知識を持つが、中でも大衆車、実用車、商用車を好み、フランス車には特に詳しい。
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