連載【桃田健史の突撃!キャンパーライフ「コンちゃんと一緒」】~急激なEVシフトでもハイエースのディーゼル存続に光明!?~

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コンちゃんでサーキット走行?

7月9日、コンちゃんで東北自動車道を北上した。目指すは、宮城県のスポーツランド菅生だ。相変わらず、2.8Lディーゼルエンジンは低回転域からトルクが太いし、追い越し加速でもグイグイと元気がいい。長距離移動があることを想定して、コンちゃんはガソリンではなくディーゼルをチョイスしたことに改めて満足している。また、ロシアのウクライナ侵攻という異例の社会情勢の影響で燃料価格が高騰する中、ガソリンに比べて価格が安定的に安い軽油(ディーゼル燃料)のありがたみを実感しているところだ。
そんなディーゼルだが、世の中を見回してみると、主流なのはコンちゃんのような商用車やトラック・バスであり、乗用車での需要は限定的だと言わざるを得ない状況だ。いったいディーゼル、これからどうなるのか?

そんな思いを抱きながら到着した、スポーツランド菅生。今回の旅の目的は、スーパー耐久シリーズ第3戦・SUGO 3時間耐久レースに「Mazda2 Bio concept」で参戦するマツダスピリットレーシングの密着取材である。

およそ1ケ月ぶりに、マツダスピリットレーシングの皆さんにお目にかかった。先回のシリーズ第2戦は、富士スピードウェイで行われた富士24時間レースだ。決勝レース中は、ホテルにシャワーを浴びてちょっとだとウトウトしただけで、24時間のうち20時間ほど現場にいたのが…。
残念ながら、ゴールまで残り1時間20分ほどで「Mazda2 Bio concept」はヘアピンの先でクラッシュしてリタイヤしてしまった。今回はすっかりマシンもリペアされて、公式練習と予選ではノントラブルで順調な走りを見せる。

さて、マツダスピリットレーシングについて、少し補足しておきたい。マツダ本社の直轄モータースポーツとしては1991年のルマン24時間で優勝した「787B」以来となる、マツダ肝いりのプロジェクトだ。狙いは、大きく2つある。ひとつは、ロードスターという日本を代表するスポーツカーを有するマツダとして、ユーザーを巻き込んだ新しいサブブランドを作ること。そのために、ロードスターのワンメイクレースである「パーティレース」と連携して、国内ツーリングカーシリーズではスーパーGTに次ぐ規模であるスーパー耐久で、パーティレースのドライバーの中からのステップアッププログラムを計画中だ。

カーボンニュートラルに独自路線

もうひとつが、次世代バイオディーゼル燃料に対するするクルマの研究開発だ。ここでの目的は、カーボンニュートラルを既存のディーゼル車で実現することだ。

カーボンニュートラルという言葉をよく聞くようになった。CO2など温室効果ガスと呼ばれる気体による地球の気温上昇を抑えようという世界規模の考え方である。

例えば、欧州では「欧州グリーンディール政策」という欧州連合(EU)として意思統一されていて、これによって「2035年までに欧州域内で販売する新車乗用車100%が(事実上)ZEV」になることを目指している。ZEV(ゼロ・エミッション・ヴィークル)とは、EV(電気自動車)、またはFCV(燃料電池車)を指す。
これを受けて、ドイツのメルセデス・ベンツは「市場環境が整えば、2020年代末までグローバルで新車100%をZEV化する」と発表している。そのため、モデルの主流をEV専用ブランドのEQにシフトしている。
また、スウェーデンのボルボと英国のジャガーはそれぞれ、EV専用ブランドへの転換を決定している。こうして、欧州各国でこれまで主流だったディーゼル車が次々と姿を消している状況だ。また、アメリカでも2021年8月にバイデン大統領がクルマの電動化に関する大統領令を発令したことで、一気にEVシフトの風が吹き始めている。さらに、世界最大の自動車市場である中国でも、欧州やアメリカのEVシフトの動向を睨みながら、中国独自の電動化規制を強化しているところだ。

このようにグローバルでの急激なEVシフトが起こっている中、日本は独自の路線を突き進んでいる。自動車メーカー、バス・トラックメーカー、二輪車メーカーでつくる業界団体、日本自動車工業会では「カーボンニュートラル達成には、様々な道筋がある」という考え方で産業界の意思を統一している。
つまり、EVは段階的に普及することに加えて、日本では普及率が高いハイブリッド車もさらに進化させ、またガソリン車やディーゼル車などには製造過程でCO2排出量が少ないカーボンニュートラル燃料や、次世代バイオディーゼル燃料などを活用するといった、全方位戦略を進めているのだ。

話をディーゼル車に絞ると、「Mazda2 Bio concept」で使用しているのは、ユーグレナ社が提供する次世代バイオディーゼル燃料だ。油脂を含む藻類(もるい)を国内で培養し、そこに家庭や飲食店などからのてんぷら油などの廃棄油を混ぜ、それを国内で精製して、ディーゼル車向けや、ジェット機向けの燃料を抽出している。
すでに、全国各地で路線バスや飛行機で実証試験として採用されているのだ。次世代バイオディーゼル燃料はまだコストが高いことなどもあり、これらは既存の軽油を混合していて使用しているが、「Mazda 2 Bio concept」では次世代バイオディーゼル燃料100%でレースという過酷な使用条件を満たしている。
こうした日本発の技術によって、次世代バイオディーゼル燃料が大量生産されれば、コンちゃんを含む既存のディーゼル車は、カーボンニュートラルに対して一定の貢献をすることができることになるだろう。ユーグレナ社では2025年以降に、大規模生産拠点の稼働を目指している。
ハイエースも近年中に300系シフトが行われると思われるが、さすがにEV化は難しいだろうが、ハイブリッド導入はもちろんのこと、ディーゼル需要は見過ごせないはず。コンちゃんに次世代バイオディーゼル燃料を給油する日は、さほど遠くないのかもしれない。

蔵王に行っても、やっぱりいい場所がない

今回の菅生取材では、レース現場からクルマで40分ほど離れた蔵王に宿をとった。
決勝レースの翌日は、蔵王周辺をコンちゃんで巡ったのだが、積んできたチェアやテーブルを外に出してのんびる出来るような場所は見つからなかった。コンちゃんと各地を巡ってみて改めて思うのだが、日本は気軽にクルマを停めて、キャンプというほどではなく、ちょこっとチェアを出して休めるようなシーンが本当に少ない。
道の駅は基本的に、そうした行為はNGであり、むろん車中泊も一部を除き原則NGだ。また、高速道路のSA/PAも「あくまでも休憩場所であり、宿泊との明確な区別は難しいが、基本的には車中泊はお断りしている」というのが、筆者が直接、NEXCO東日本、中日本、西日本、そして首都高速に問い合わせた際の回答だ。
河川敷についても、地元の自治体では、車中泊またはチェアやテーブルを出しての休憩などについて明確な規則があるケースは極めて稀だ。結局、オートキャンプ場や、日本RV協会が認定するRVパークを利用するのが王道ということになる。
そうなってくると、一番使い勝手が良いのは、コンちゃんのリアスペースでのしばしの休憩。このところ、コロナ禍の第七波に入ってきたこともあり、我が家では基本的に外食をしておらず、今回の旅でも遠刈田温泉で台湾料理のテイクアウトを買ったり、帰路では東北自動車道の那須高原SAでカツカレーを買って、コンちゃんのリアスペースをフル活用した。

さて、来月は1年ぶりに「アルトピアーノ蓼科」に立ち寄り、そのほか長野各地を巡ろうと思う。

フォト=桃田健史 K.Momota

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