「美しいデザインが好き」というイタリア車好きの施主は、新築作業時に漆喰や収納のペイントにも参加する器用さ。
真っ赤なディーノがガレージに収まった木造2階建ての住宅。ビカビカの1971年式ディーノ246GTは、オーナーのIさん自らの手で約13年かけてレストアしたという、思い入れのある一台である。ディーノ購入後、クランクが折れたことをきっかけに、自身でレストアすることを決意したという。
エンジンを分解し、ピストンを削るなどプロさながらの作業で、休日をレストアに費やしたのだそう。なんと元のペイントも自分で剥離し、ボディショップに持ち込んでガンで吹いたというが、拝見したところ素晴らしい仕上がりであった。まさに手塩にかけた1台。「お金には替えられない愛情があるので譲りません」と、Iさんは語る。
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大切なディーノを収める風通しのよい家
そんな大切なディーノが収まるガレージハウスの設計・施工を行ったのは、「自然に、自然と、暮らす家」をテーマに湘南で家づくりを行なっている「solasio」だ。
「4社の住宅メーカー、設計士さんにプランニングを依頼していたのですが、『solasio』さんの設計が一番気に入りました」とは、Iさん。中庭から光が差し込むガレージやリビングは、明るく、風通しもよく、とても心地がいい。周りが住宅地ということもあり、プライバシーの確保のため中庭を設け採光性を高めているのだそうだ。
Iさんがガレージハウスを建てるきっかけとなったのは、自身の結婚。将来は一軒家で子育てをしたいと考え、約80か所の土地を見て歩いたそうだ。元々は古い家を購入しDIYで修理しながら住もうと考えていたが、理想的な約164平米の土地が見つかったので、購入したという。
目の前に公園があって学校も近く、そして予算にも見合うなど好条件。趣味が波乗りということで、新築であればサーファーズハウス的なスタイルがよいと工務店を検索すると、雑誌で見たことのある「solasio」のHPに行きついたという。エアコンが苦手というIさんの希望は、「風の通りがいいアジアンテイストな家」。奥さまの要望は露天風呂だったという。
建築時に施主もDIYペイントに挑戦
プランニングを担当した「solasio」の代表・玉造さんは、住宅街の真ん中で、いかに採光と風通しのよいガレージと露天風呂を両立させようか、を熟考したという。結果、中央に坪庭を取り入れたレイアウトを提案した。
これまで湘南地域で、サーファーズハウスを多く設計してきた「solasio」だけに、光を取り入れて風が抜ける家の設計は得意であり、Iさんが希望したガレージや収納も要望どおりに収まったという。
建築時には、手先が器用なご主人にリビングの漆喰や収納のペイントなどを、DIYで行うことも提案。そもそも古家を自身でリノベーションしたいというIさんであったが、新築でも作業に加わることで、家への愛着がさらに湧くのではと考えたそうだ。
昔から美しいデザインが好きというIさんの車歴はイタリア車中心。現在はディーノと実走行2万2,000kmというミントコンディションのマセラティ・ギブリを2台所有しているが、どのクルマもデザインに惚れて購入したのだという。
「イタリア人の性格が好きなんです」と語るIさんは、昔のハンドメイドで仕上げられていたモノや昭和の香りがする旧い工業製品に心惹かれているらしい。
Iさんの好きなモノを理解した「solasio」玉造さんは、ガレージハウスの設計にもそのエッセンスを取り入れていったのだそうだ。取材時にお二人の会話を聞いていると、この依頼で初めて出会ったにも関わらずまるで昔からの友人のよう。それは二人が何度も打合せをし、納得のいく注文住宅が完成した証なのであろう。