ミッドサイズ・プリマスの旗艦モデル
プリマスは、今はもうなくなってしまったブランドだが、クライスラーのラインナップ中、最もボトムレンジを担当する部門だった。1962年型で、プリマスのフルサイズ(フューリー/ベルベディア/サヴォイ)はホイールベースが116インチ(2946mm)に縮小されている。これはダッジも同様だったが、他社(フォードとGM)がインターミディエイトと呼ぶべき小さめのボディサイズを準備していることを、当時のクライスラー社長が聞きつけ、それをフルサイズ車のダウンサイズ敢行と勘違いしたのが原因とも言われる。
その真偽はともかく、1962年型以降のプリマスは若干小さめのボディとなっていたが、1965年型ではフューリーにのみホイールベース119インチ(3023mm)のフルサイズ・ボディが与えられ、一方前年までのボディも、そのままインターミディエイトとして存続することになった。このミッドサイズ・モデルはベルベディアの名を継承し、フロントマスクを丸目2灯に変更、タテ目4灯のフューリーと明確な対照をなした。
シリーズは廉価版のベルベディアⅠと上級モデルのベルベディアⅡに分かれたが、さらにその上級のスポーティなプレミアム・モデルとして設定されたのが、ベルベディア・サテライトである。ベルベディア・サテライトには4ドアやワゴンは設定されず、2ドア・ハードトップとコンバーチブルのみ。専用装備としてバケットシートとコンソールが奢られ、外観ではリアフェンダーの縦線のアクセントやホイールアーチモールなどのクロームトリムによって差別化されている。
エンジンはV8のみ、標準は273-cid(4.5L/180hp)、オプションとして318-cid(5.2L/230hp)、361-cid(5.9L/265hp)、383-cid(6.3L/270hpと330hpの2種)、426-cid(7L/365hp)の各種が設定されていた。
さて、ここでご覧頂いているのは、メビウスモデル製1/25スケール・プラモデルの1965年型サテライトである。パーツを共用した2ドア・セダンのベルベディアⅠもあり、それぞれにノーマルとドラッグレース仕様があるので、ちょっとしたバリエーションを形成しているが、これは見てお分かりの通り、ノーマルのサテライトをごく普通に組んだ作品だ。
凝ったパーツ構成が魅力、好感の持てるキット
キットは2015年に発売されたもの(品番1215)で、このあたりから、メビウスモデル初期に物議をかもした表面処理(梨地仕上げ)は滑らかなものに変化し、パーツ構成などもこなれてきた感じである。
ボディは全体によい雰囲気だが、パーティングラインがAピラー付け根などにあるので要修正。ここはドアラインと重なるので注意しよう。ボディ後部の左右両端には段差があったので注意深く削り込んで成形した。スジ彫りは全体に少し深くしたいところで、特にワイパーカウルのルーバーは塗装で埋まりそう。そこでスジ彫りをしたが刃が滑って大失敗! ルーバー部分を切除しプラ板で再生した。ボディカラーはコードSのアイボリー。クレオスGX1クールホワイトにC44タン、GX2ウイノーブラック、GX4キアライエローで調色。
エンブレム類はモールドされていたのだが、表面を整えているとき不注意で一部削ってしまったので、ここはデカールを貼ることとし、削り取ってしまった。ボンネットはキットのパーツのままだと塗装しろが無いので若干削った方が良い。ウィンドウは外から付ける方式だが、接着しろがパーツの断面だけなので細心の注意が必要だ。エンジン、足周りは良い出来で、何も手を加えなくてOK。ただし折れやすい所もあるので扱いには注意だ。タイヤはホワイトリボンが印刷されていてトレッド面の表現も申し分なく、非常に良い感じ。
このタイヤだけ別売りしてくれると嬉しいのだが。車高、トレッドはそのままでも問題ない。車体下面の塗装は説明書に従い、“リアリズム表現”を行った。シャシー中央に残ったグレイプライマーの表現には、クレオスの1000番サフェにC33つや消し黒を加えたものを使用している。エンジンにはプラグコードを追加したのみだが、ご覧の通り良い感じに仕上がる。塗装は説明書の写真の通りで問題ない。
インテリアはディテールの表現も良く、そのままで充分だ。珍しくドアのロックノブがモールドされているが、作例で用いたキットは右側が破損していたので、左右両方とも削り落として虫ピン#2に置き換えている。フロアパン先端とファイアウォールとでそれぞれのトンネル部分が合っていないが、これはファイアウォール側を削って調整した。
グリルのメッシュ部分は彫りが浅いのでスミ入れがやりづらい。もう少し彫りを深くしてほしいものだ。ヘッドライトのパーツ構成は他のキットでは見られない凝った分割だが、レンズを汚さずに塗装できてよい。