手に持てる大きさ、だけど本物!?イタレリ製1/12プラモ「フィアット500F」を超細部まで極限ディテールアップ!【モデルカーズ】

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イタリア全土を埋め尽くした傑作小型車

現在のフィアット500(312系)の直接のモチーフとなったのが、2代目フィアット500、いわゆるヌォーバ500(110系)だ。現代の500と同様、と言うよりそれ以上のヒット作である2代目500だが、現行の3代目500があくまで可愛らしいスタイルを売りとするファンシーな小型車であるのに対し、こちらは必要最低限のメカニズムを具えた “ミニマムトランスポーター”、“庶民の足”であり、そのキャラクターは全く異なるものと言っていい。

ヌォーバ500の登場は1957年。当時のイタリアでは日本同様、かつての軍需産業(航空機メーカーなど)がスクーターを世に送り出し、それらは安価で便利な移動手段として歓迎されていた。1950年代も後半となれば敗戦直後のような貧しさも過去のものだが、それでも自動車は庶民には縁遠く、手の届くクルマといえばスクーターに毛が生えたようなバブルカーしかなかった。こうした層を顧客として取り込めれば、という目論見でフィアットが企画したのがこのヌォーバ500だったのである。

その開発を命じられたのは当時の技術部長、ダンテ・ジアコーザ。しかし彼はこの企画に不満もあったという。というのは、1955年発表の600(初代500の後継車)こそ、そうした欲求を満足させる最低限の自動車だ、という自負があったからだ。それでも、この難題をクリアして生み出されたヌォーバ500は、イタリア全土を埋め尽くすヒットモデルとなり、キャビンスクーターをジャンルごと葬り去ってしまうに至ったのである。

ヌォーバ500は、先述のフィアット600をベースに、さらにギリギリまで無駄を省いた自動車、と表現して間違いない。当時の自動車技術では、空間を最大限に有効活用するにはRRが最適というのが常識で、この2車も共通してRR方式を採用している。また、前:横置きリーフ/後:セミトレーリングアームというサスペンション方式も同じだ。

逆に600から省かれたものとして挙げられる筆頭がラジエターである。600のエンジンは水冷式だが、500では空冷となり、メカニズムの最小化に貢献した。また、エンジンは600の直列4気筒に対し2気筒で、2気筒分省かれたことになる。丸みを帯びたボディはジアコーザ自身のデザインだが、エンジン音がこもるのを防ぐためにキャンバストップを採用。フィアット600では通常ルーフのボディが標準だから、つまり屋根も省かれたと言っていいだろう。

ヌォーバ500の変遷について触れておくと、デビュー当時は排気量479cc/最高出力15psだったが、1960年には500Dへと発展し499.5㏄/17.5psに。この時ヘッドライト下にウィンカーが付き、お馴染みの顔となった。1965年には500Fへと発展、ドアがスーサイドから後ろ開きとなり、テールレンズもさらに大型化。1968年には豪華版の500Lも登場、これはバンパーガードやメッキの前後窓枠を装備し、パッドで覆われ横型メーターを装着したダッシュボードなどを具えていた。

そして1972年には500Rに一本化。この「R」は「Revised(改訂版)」の意味で、同年デビューの126と同じエンジン(594cc/23ps)を搭載するのが最大の特徴だ。外観ではフロントエンブレムが横長の「FIAT」(1970年代から1990年代まで使われたロゴ)となるのが目を引く。生産終了は資料により1975、1976、1977年とまちまちで、定かではない。

さて、ここでお見せしているのは、このヌォーバ500のうち1968年型の500Fを再現した、イタレリ製1/12スケールのプラモデルである。4年ほど前にリリースされたこのキットは、大スケールらしくかなり細かなディテールを持ったキットであったが、作例ではそれをさらに引き立てる細部加工を行った。これについて以下、説明していこう。

細かな配線をプラスして実車さながらに!
キットはエッチングなども付属した豪華なものだ。仮組みしてまず気が付いたのが、インテークホース位置が妙な所。後席後ろのトレイがそのまま上部隔壁となり、そこにホースが付く形となっている。実車はリアウィンドウ下のスリットから吸い込んだ空気をホースで導くはずだが、この形状ではそうはならない。そこでトレイ部分を二重にしてダクトを下げ、これに合うよう各パーツも調整。仮組みのためエンジン/ミッションはなるべく先に一体化。さらにエンジンルーム内のディテール(パネルの折り返しやリブ)もプラ板で追加する。

フロントのトランク周りも、同様に不足しているボディパネルやフード裏側などをプラ板で追加する。ヒンジはキットのままでは組み合わせることが不可能だったので、完全に作り直した。可動は諦め、開閉差し替え式に。

シャシー裏面には各種配線がモールドされているが、1/12としてはぞんざいな表現なので削り取った。フロアトンネルを通ったコードやケーブルが出てくる孔を開孔、配管を押さえるブラケット類をプラ材で追加する。前輪のブレーキホース基部はプラ材とジャンク品の金属パーツで自作。フロントの谷間の部分に付くはずのマスターシリンダーが省略されているので、プラ材で自作したものを取り付けた。ミッションケースのパーツには、クラッチのレリーズアームをプラ材から作って追加する。

エンジンのファンハウジング上部に、スロットルリンケージをプラ材、金属線、金属スプリングで追加した。後輪ブレーキの2種類の配管は、写真のようにサスアームに這わせて取り付ける。シャシーには各種資料を元にフロアトンネルからの配管を取り付けた――フューエルパイプ、スターターケーブル、ブレーキホース、クラッチケーブル、ハンドブレーキケーブル、スロットルワイヤー、バッテリーケーブルなど。エンジンルームにも灯火類や電装関係の配線を張り巡らす。

エンジンを載せたらクラッチケーブルを繋げる。さらにトランク内も同様に配線を追加。ダッシュパネル裏側からスイッチや表示灯のコードが伸び、ヒューズボックスや灯火類、各種電装パーツへと繋がるが、実車の配線図を参考にこれらのコードを配線するため、その基部をダッシュ裏に取り付けた。実際にはコードは黒いコネクターでまとめられ接続されているが、見えないことなどから省略。各色のコードは木綿糸に塗装とコーティングを施したものを使用した。ヘッドライト裏蓋にも配線を取り付けたが、ここは若干推測を交えている。

こうして実車さながらのフィアット500Fが出来上がったが、配線類はこれでも多少は間引いてあるということだ。なお、このキット最大の美点は、実はボディにある。ヌォーバ500のプロポーションをここまで巧みに捉えたモデルは他にないのではないかと思われるほど素晴らしいボディ形状なのだ。それゆえ、作例のようなディテールアップを行わずとも充分以上に価値があり、楽しめるキットであることは、最後に申し添えておこう。

作例制作=周東光広/フォト=服部佳洋 modelcars vol.269、270より再構成のうえ転載

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