「こいつはヘビー(な工作)だ!」アオシマ製プラモ「デロリアン」をまさかのノーマル戻し!!【モデルカーズ】

全ての画像を見る

哀しき失敗作から夢のタイムマシンへ

デロリアンといえば、やはり映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を思い起こす方が多いだろう。あの映画がなければ、デロリアンも歴史の彼方に埋もれたままになっていたかもしれない。デロリアンの名で一般的には認知されているが、正確にはデロリアンDMC-12、つまりDMC-12が車名である。このクルマを生んだデロリアン・モーター・カンパニー(DMC)は、1975年にデトロイトで設立された。その社名は、創業者のジョン・ザッカリー・デロリアンの名をそのまま用いたものである。

このデロリアンという人物は、それまでGMの副社長を務めていた。同社の最年少役員として知られていたデロリアンは、長年ポンティアック部門の責任者として辣腕を振るってきたことでも有名だ。1960年代のポンティアックに色濃く見られた趣味性からも分かるように、デロリアンはスポーツカーの大好きな人物であった。その思いが昂じて、GMを退き会社設立、自分の理想のスポーツカー造りに至ったという訳である。DMCはアイルランドに工場を建設、資金難に苦しみながらも1981年にやっと市販にこぎつけたのが、このDMC-12だ。

DMC-12の設計はロータス・カーズが請け負い、鋼板製バックボーンフレームにFRP製ボディという、ロータス・エランやエスプリ等で実績のある構成が採用されていた。ガルウィングのドアが特徴的なボディはジョルジュエット・ジウジアーロのデザインによるもので、メンテナンスフリーを狙って無塗装ステンレスで覆われている。レイアウトはRRで、エンジンはPRV(プジョーとルノーの共同開発によるV6 SOHC 2.8L)、ミッションは5速のMTあるいは3速ATが組み合わされる。インテリアには本革が用いられ、装備も充実した豪華なものとなっていた。

こうして世に出たJ.Z.デロリアンの夢の結晶だが、その結果は惨憺たるものだった。DMC-12自体クオリティコントロールに難がありすぎたのだが、さらにデロリアン本人が麻薬取引によって逮捕されてしまう。彼は裁判で無罪を勝ち取るのだが、評判は地に堕ち、彼も会社も復活は困難なものとなった。それでもデロリアン本人は最後まで自動車ビジネスを諦めることなく様々な活動をしたが、2005年に世を去った。映画にタイムマシンとして採用された際には、プロデューサーに感謝の手紙を送ったという逸話が残されている。

ここでお見せしているのは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』仕様のプラモデルをノーマルのDMC-12に戻した作例だ。DMC-12はノーマルのプラモ化はなく、映画仕様のキットがアオシマから1/24と1/32、1/43の各スケールで、ポーラーライツから1/25スケールでリリースされているが、ここで使用したのはアオシマ1/24のキットである。

Back to the Future is a trademark and copyright of Universal Studios and U-Drive Joint Venture. Licensed by Universal Studios Licensung LLC. All Rights Reserved.

ノーマル戻し工作のみならずドア開閉まで!
使用したのはパート1仕様のキット。ボディには張り巡らされた配線がモールドされているので、カッターナイフで削り落としヤスリで整える。タイムマシン関連のパーツ取り付け孔も各所に開いているので、伸ばしランナーで塞いだ。フロントはバンパーとスポイラーの間隔が狭いようなので、スポイラーを一旦切り離し、バンパー下に0.5mmプラ板を貼り付け、厚みを増したうえで再接着。

ガルウィングドアを開閉可能にするため、BMCタガネでスジ彫りを深くする要領で彫り込んでいき、ドアを切り離す。ボディにはプラ板で開口部の断面部分をプラスし、ドアにも内張り部分を追加。ウィンドウパーツもフロント用とドア用に切り離した。ドアのヒンジはプラ板を4枚、瞬間接着剤で軽く貼り合わせた上で成形し、その後に元の4枚に分割すると同じ形のパーツを揃えることができる。ヒンジはドアにしっかりと固定。開閉のためのダンパーは、ヒートン(吊り下げ用の金具。手芸店で購入)、アルミパイプ、洋白線で自作した。

ノーマルのボディ後半はエンジンフードが二重に付く。表側は0.3mmと0.5mmプラ板で造形、後端部メッシュはエッチングと洋白線でそれらしく。内側フードは1mmプラ板をベースに排熱用の開口部を切り抜き、ナイロンメッシュを貼り付けた。ボディの塗装はMr.カラーのスーパーファインシルバーをエアブラシで吹き、そのままとすることで無塗装ステンレスを表現。乾燥後、前後ライト周りをニュートラルグレーで塗り分けた。シャシーは飛行タイプに変形するものでリアリティに欠けるため、フジミのフェラーリ348から流用。

室内のパーツにもタイムマシン関連のモールドがなされているので削除、ダッシュボード中央の空調やオーディオはプラ板や伸ばしランナーで新造した。シート裏側が肉抜きされているのでプラ板で塞ぐ。ドア内張りはキットパーツからドア部分を切り離して使用、上面(天井側)の内張りは1mmプラ板の積層で再現。サンバイザーもプラ板で自作した。

作例はこの他、前後のライトパーツ内側に、ハセガワのミラーフィニッシュを貼ってリフレクターを再現。サイドマーカーを0.5mm透明プラ板から自作、ワイパーをエッチングに置き換えるなどしている。

作例制作=棚瀬和重/フォト=羽田 洋 modelcars vol.229より再構成のうえ転載

注目の記事

「ル・ボランCARSMEET」 公式SNS
フォローして最新情報をゲット!