随所に光るアルファロメオらしさ、現行ジュリアは理想のベルリーナだった!

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新世代アルファロメオはジュリア、SUVのステルヴィオが登場したことで徐々にラインナップを拡充し始めている。そんな中で冷静な目線でジュリアというクルマを改めて見た時、その姿はどのように見えてくるのか?

理想のアルファロメオ・ベルリーナとは?

このヴェローチェはベースモデルの200psから一気に280psまでスペックを高められており、その力感や加速感は、さすがはアルファロメオと呼べるものだ。

20歳代の頃2000GTヴェローチェを所有していた身としては、ジュリアを名乗る車種への評価はどうしてもシビアになる。伝統の盾を据えた顔を隠してしまうと、アルファロメオらしさがあまり伝わってこないスタイリングに、この時は微妙な気持ちを抱いた。

2年後に日本上陸を果たす頃には、この形は”醜い”という褒め言葉をいただいたベルリーナより、クーペのフォルムに似ていることに気づいて納得したのだが、いざ走り始めてみると、今度は違う部分で違和感を抱くことになってしまった。

それについては後ほど触れるが、同じプラットフォームとパワートレインを用いているSUVのステルヴィオは、むしろ個性的というポジティブな気持ちとともに受け入れることができたから、やはり先代一族を所有していた経験が、少し過敏な反応に結び付いてしまったようだ。

日本仕様のジュリアは2L直列4気筒ターボエンジンを積むベースモデル、スーパー(ディーゼルもあり)、ヴェローチェという3グレードがあり、別枠として2.9L V型6気筒ツインターボのクアドリフォリオが君臨する。

すべて右ハンドル、8速AT、FRが基本だが、ヴェローチェだけは4WDのQ4が選べ、これのみ左ハンドルになる。取材車はQ4だったので、愛車だったヴェローチェと同じ左ハンドル。コックピットに収まると、ふたつのアナログメーターが目の前に並ぶ。これも昔と同じ眺め。ドライな液晶パネルを見ることが多くなったからこそ嬉しい光景だ。

フィアット・グループ独創のマルチエアシステムを採用した2Lターボは、ベースモデルとスーパーが200psなのに対しヴェローチェは280psで、最大トルクは40.8kg-mに達する。だから1670kgのボディを軽快に加速させるけれど、多くのクルマ好きはまず音のほうに引き込まれるだろう。

最後のコラムでは新旧ジュリアとその間の系譜にあった4気筒エンジンを紹介している。ツインスパークあり、直噴ありと形式はさまざま。しかしどれも心地よいサウンドでドライバーを魅了してくれた。現行ジュリアのマルチエアも例外ではない。人がクルマを操るとき、どんな音が心地良いのか。ミラノの名門は熟知しているようだ。

スペックを競うことよりドライバーを喜ばせる

日本でのジュリアは、2.9リッターV6ツインターボのクアドリフォリオを除けば、全てオールアルミニウムの2リッター4気筒ガソリンターボ。

レッドゾーンが6000rpmからという設定もアルファらしい。かつての2000GTヴェローチェも132psを5500rpmで発生し、レッドゾーンは5700rpmからだった。でもどちらのヴェローチェも踏む楽しさ、回す楽しさが満喫できる。スペックを競うことよりドライバーを喜ばせることが大切。そんなメッセージが伝わってきた。

高速道路での安定感もまたアルファらしい。Q4ということもあるが、ロックトゥロックが2回転ちょっとのクイックなステアリングを持っているとは思えない。しかもアダプティブクルーズコントロールの作動は正確で、ハイテク面はグローバルスタンダードのレベルにあることが確認できた。

しかしこのクイックなステアリングは、ワインディングロードでは主張が強すぎると思うようになる。前輪駆動の156や159がクイックだったのは、前の重さを薄めるための技でもあったはず。前後重量配分50:50にこだわった現行ジュリアでは、ここまでしなくてもいいのにという気持ちもある。

でもおとなしいタイヤを履くベースモデルではあまり気にならなかったから、グレード選択で解消できるかもしれない。それにノーズがインを向いてからの身のこなしは、逆に自然かつ素直なものだった。

真横から現行ジュリアを見ると、FRであることを勘定しても前輪とキャビンの間が長く、逆にキャビンとトランクは短めだ。よってドライバーはホイールベースのほぼ中間に座る。前後重量配分は約50:50だから、着座位置と車体重心が限りなく近い。これが想像以上の人車一体感を生み出している。

これにアルファらしい接地感あふれる足がコンビを組む。スロットルやブレーキ、ステアリングできっかけを作り、コーナーに合った姿勢を整え、気持ち良く曲がっていく。Q4はもちろん必要に応じて前輪も駆動するけれど、スポーツ4WDの経験も豊富なブランドだけあって、乗せられている感はない。あくまで主役はドライバーだ。

昔の名前を復活させただけではない。トランスアクスル世代が築いた50:50のノウハウや、前輪駆動でアルファロメオらしさを探求した155→156→159の経験が各所から感じ取れる。半世紀以上の系譜をもとに、理想のベルリーナを再定義した結果が現行ジュリアだということが分かった。

ボディカラーはミザーノブルーで内装色はブラック(ステッチはダークグレー)となるが、受注生産ながらシートカラーとステッチをタンにすることもできる。

SPECIFICATION
ALFA ROMEO GIULIA VELOCE(左ハンドル/Q4)
■全長×全幅×全高:4655×1865×1435mm
■ホイールベース:2820mm
■トレッド(F/R):1555/1625mm
■車両重量:1670kg
■エンジン形式:直列4気筒DOHCツインスクロールターボ
■総排気量:1995cc
■ボア×ストローク:84.0×90.0mm
■最高出力:280ps/5250r.p.m.
■最大トルク:40.8kg-m/2250r.p.m.
■圧縮比:10.0
■変速機:8速A/T
■サスペンション(F/R):ダブルウィッシュボーン/マルチリンク
■制動装置(F&R):ベンチレーテッドディスク
■価格:609万円

アルファロメオ4気筒ミニヒストリー

新旧ジュリアの共通点のひとつ。それは主力エンジンが直列4気筒であることだ。いやジュリアだけではない。その間の系譜をつないだ車種たちも例外なく、4気筒が主役を務め続けてきた。

1962年デビューの旧型ジュリアは、初代ジュリエッタとともにデビューした軽合金製ブロックの直列4気筒DOHC8バルブを搭載。これがトランスアクスルを備えたアルフェッタ、2代目ジュリエッタを経て、1985年発表の75まで受け継がれた。

自然吸気が基本ではあったが、ジュリア時代はグループ5仕様として1.6Lにスーパーチャージャーを装着したGTA-SA、2代目ジュリエッタにはターボチャージド2Lのその名もターボ・アウトデルタがあった。75にも1.8Lのターボが存在し、グループAホモロゲーションモデルのターボ・エボルツィオーネに積まれたことが知られている。

しかし我が国のアルフィスタにとっては、75と言えばツインスパークのイメージが強いだろう。ジュリアスプリントGTAと同じツインプラグを電子制御点火/噴射装置、可変バルブタイミング機構とともに取り入れたこの2Lは、後継車155にも積まれた。

ところが155は途中で、フィアットのスチールブロックにアルファ設計のヘッドを組み合わせたツインスパーク16バルブに換装。ヒット作となった156にもこれが積まれた。しかしまたもモデルライフ半ばでエンジンを一新。フィアット・グループが以前から開発していた直噴技術がJTSの名前で投入された。

JTSは後継車にあたる159にも積まれた。ただしこちらは、当時フィアット・グループが提携していたGMのオペルが使っていたオールアルミ製2.2リッターが土台だったという違いはある。現行ジュリアの2リッターはマルチエアターボだから第6世代となるだろう。

旧型ジュリア・スーパー(1965年):旧型ジュリアが生まれたのは1962年。最後に追加されたディーゼルを除けば、エンジンはジュリエッタから引き継いだ1.3Lとその拡大版1.6Lの2種類で、後者はシングルキャブのTI、ツインキャブのスーパー、ツーリングカーレース用ホモロゲーションモデルのTIスーパーなどがあった。

75ターボ・エボルツィオーネ(1987年):1985年誕生のトランスアクスル最終世代75は、1.6Lから3Lまでディーゼルを含め多彩なエンジンを用意。そこには1.8ガソリンターボもあり、これをベースにグループAツーリングカーレース用として500台生産されたのがエヴォルツィオーネ。排気量は他の1.8ターボとは微妙に異なる。

155ツインスパーク(1992年):このクラスのアルファでは初の横置きエンジンとなる155は、日本仕様は2L 4気筒の自然吸気とターボ、2.5L V6を販売。2L自然吸気は写真の前期型では75のツインスパークを引き継ぎ、マイナーチェンジ後はフィアット製ブロックをベースとしたツインスパーク16バルブに変わった。

156JTS(2002年):155同様、156も途中で2L 4気筒エンジンの世代交代を果たした車種だ。当初は155後期型から受け継がれたツインスパーク16バルブだったのに対し、2002年からはジェット・スラスト・ストイキオメトリックの頭文字を取った直噴ユニットJTSを搭載。直後に登場した写真の後期型にも継承された。

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フォト=山本佳吾 K.Yamamoto カー・マガジン489号より転載

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