ブリヂストンの「ブリザック」は高い氷雪上性能で、冬道の安心安全を追求し続けてきたスタッドレスタイヤだ。その最新モデルが「VRX3」で、従来モデルより性能が向上しているという。今回は北海道でVRX3の実力を確かめてみた。
冬季の路面状況を問わず信頼感の高い性能を獲得
本誌は3月号となるが、この原稿を書いているのは1月だ。ニュースでは北日本や日本海側の大雪が報じられ、先日は東京でも大雪警報が発表され都心で10cmの積雪を記録。一部地域を除き、どこにおいても降雪の可能性は高い。
しかも、日本は欧米の降雪地と比べ冬季における日ごとの気温差が大きいという。つまり、日中に溶けた雪が夜間に凍り、ミラーバーンやブラックアイスと呼ばれるツルツルの氷上路が発生する事態が容易に起こるわけだ。そのため、ユーザーがスタッドレスタイヤに求める役割では氷上性能が最重視される。その割合は、氷上ブレーキ性能に限ると82%に達する。
そこで、ブリヂストンは昨年の9月に、11世代目のスタッドレスタイヤとなるブリザックVRX3を「断トツの氷上性能の向上」をコンセプトに投入した。実際に特設のスケートリンクで試乗したところ、従来型のVRX2と比べABSを作動させた場合の制動距離が短いことを確認。氷上ブレーキ性能で20%向上という発表データを実証した。ABS作動直前状態を維持するためのブレーキの踏み加減も、その領域が従来型よりも拡大し操作しやすかった。
今回の試乗では、特設コースで公道に近い雪上と氷上の性能を確かめることができた。しかも、雪上と氷上が混ざり合ったシャーベット状の路面も含むだけに、公道よりも過酷な場面設定となる。
たとえば、コーナリング中に雪上から氷上に路面が急変するとグリップ力が減少するが、ステアリングの切り増しで対応できる可能性が高い。氷上でも、ステアリングに与える舵角の通りの反応を示す領域が広いことがVRX3の特徴となるからだ。
ブレーキングでも、同じ効果が実感できる。その過程で雪上から氷上に路面が急変しても、制動力がいきなり抜けることがない。雪上で安心して減速が可能なブレーキの踏み加減なら、氷上でも減速状態が保たれる。それどころか、氷上をしっかりつかんでいる実感さえ伝わってきた。
ステアリングにしてもブレーキにしても、自らの操作でグリップ力が引き出せる領域が広いことがVRX3最大の魅力といえる。それだけに、横滑り防止装置やABSといった安全装備に頼る機会が少なく、万が一の際の保険として温存しておくことができるわけだ。
今回は、ほぼ乾き一部だけ濡れた舗装路でも試乗した。降雪地のユーザーでも、冬季に雪上や氷上をスタッドレスタイヤで走る割合は半分くらいとのこと。かつては、トレッド面の柔軟性を得るために、乾いた舗装路ではグンニャリした頼りないグリップを示すスタッドレスタイヤが多かった。だが、VRX3はその心配がない。
従来型と比べトレッド面のパターン剛性が大幅に向上しているので、コーナリング中の腰砕け感がなく直進時もステアリングがセンターで落ち着いている。高周波のパターンノイズが気にならないことも、VRX3の特徴となる。
また、従来型に対して摩耗を抑えることでライフ性能が17%向上。同時に、摩耗によるグリップ性能の低下抑制が実現できていることも見逃せない魅力といえる。