メルセデス・ベンツのコンパクトSUVであるGLBのEVバージョンといえるEQBの海外試乗会が行われた。GLBのウリである7人乗りはそのままに、どんなBEVに仕上がっているのか? 早速その第一報をお届けしよう。
用意周到な商品企画力はさすがメルセデス
メルセデス・ベンツのEQBは、簡単に言ってしまえばGLBの電気自動車(BEV)版で、それ以上でも以下でもない。しかしEQBが追加されたことにより、メルセデスはとりあえずAからVまでのBEVを揃えたことになる。すなわち、EQA/EQB/EQC/EQE/EQS/EQVで、3サイズのSUVと2サイズのセダン、そしてミニバンの計6車種である。2030年頃の自動車を取り巻く環境が実際にはどうなっているのか、現時点ではまだ不透明なものの、2021年にすでにほぼフルラインナップに近いBEVを用意したメルセデスの行動力というか迅速性には恐れ入る。
もうひとつ恐れ入ったのは先を見越した用意周到な商品企画力だ。エンジンを横置きに積むMFAと呼ばれるプラットフォームはA/Bクラスに使われているけれど、EQAもEQBもこのプラットフォームを共有している。つまり、前後のモーターや駆動用バッテリーを積むことを想定してこのプラットフォームは設計されていたことになる。MFAは内燃機にもBEVにも使えるプラットフォームだったというわけだ。
だからEQBはGLBと同様に3列シートの7人乗りも実現している。2列目と3列目のフロアが若干高くなってはいるものの、キャビンスペース全体の容量はGLBと比較してもほとんど変わらないそうだ。「BEVにしたらさすがに7人乗りはキツいなんじゃなかろうか」という予想は見事にハズレてしまった。
したがってEQBのボディサイズはGLBとほとんど変わらない。現時点ではEQB300とEQB350のいずれも4MATICのみで、228ps/390Nmと292ps/520Nmを発生、航続距離はどちらも419kmと公表されている。日本への導入モデルはまだ未定だが、2022年下半期以降には上陸するとのこと。ちなみに本国では今後、前輪駆動モデルや航続距離の長いモデルも追加される予定である。
そもそもGLBは出来が素晴らしく、それがスポイルされていないことを願っていたが大丈夫だった。試乗車の300と350はどちらも18インチのピレリを履き、電子制御式ダンパーを装着していたが、いずれも路面状況にかかわらず同じようなしっとりめの乗り心地を提供してくれるし、ハンドリングは操舵応答遅れのないレスポンスと正確なコントロール性を兼ね備えている。ただ原因がイマイチよくわからず、おそらく個体差の問題だと推測できるのだけれど、350のほうが全般的に動的質感が上質で、「いいクルマに乗っている」という印象が強かった。
秀逸だと感じたのは前後の駆動力配分である。固定ではない随時可変タイプで、状況に応じてかなり細かく変化させている。加減速時やコーナリング時、タウンスピードや高速巡航など、その時々で最適と思われる駆動力配分を行い、場合によってFFやFRにもなるらしいのだけれど、それがドライバーにはほとんど分からない。
でも例えば加速する際のばね上の姿勢とか旋回中の挙動などは、駆動力配分の変化によってもコントロールされているようだ。こういう芸当ができるのは、反応速度の早い電気モーターならではだと思うし、その制御マップを作り込んだエンジニアの、「クルマを正しく走らせるためにはどうすればよいか」を熟知しているセンスの良さが窺える。
GLB/EQBはGLA/EQAのホイールベースを伸ばし、それは3列シートを置くことが目的だったのだけれど、結果としては上質な乗り味も手に入れた。サイズ的にも性能的にも使い勝手でも、EQBは現時点で日本にぴったりなBEV・SUVだと思う。
【Specification】メルセデス・ベンツ EQB 350 4マチック
■全長×全幅×全高=4684×1834×1701mm
■ホイールベース=2829mm
■車両重量=2175kg
■バッテリー種類=リチウムイオン
■バッテリー容量=66.5kWh
■モーター最高出力=292ps(215kw)
■モーター最大トルク=520Nm(53.0kg-m)
■航続距離=(WLTC)419km
■サスペンション形式=前ストラット/コイル、後マルチリンク/エア
■ブレーキ=前Vディスク、後ディスク
■タイヤ(ホイール)=前235/55R18、後235/55R18