トヨタとスバルの共同開発により生まれた2ドアスポーツクーペの86とBRZ が2代目へと進化を遂げた。今や希少ともいえるこのカテゴリーだが、両モデルとも開発者の想いが存分に込められた力作。そのプロトタイプをサーキットで試してみた。
二代目は両車の違いがより明確に差別化された
トヨタとスバルの共同開発によるFRスポーツカーが、10年ぶりにフルモデルチェンジを果たした。加えてこれまではトヨタ86、スバルBRZだった名称が、トヨタはスポーツモデルをGRブランドから送り出すため、その名をGR86へと変更して2代目へと進化した。
先代では、スバルの工場で生産されるため、内外装のデザイン的違いはわずかなものに留められた。新型でも基本的にそれは踏襲され、今回も変更点としては外装ではヘッドライト(内部)およびフロントバンパー、リアバンパーおよびエンブレムなどが異なる。一方内装ではステアリングのデザインや内装色で差別化が図られている。
そしてメカニズムの違いだが、従来はわずかな違いで走りの差別化が行われていたが、今回は細かなパーツが異なる。例えばフロントのハブは86が鋳鉄でBRZはアルミ。スタビライザーもフロントで径が違うばかりか中空/中実の違いもある。リアはスタビライザーの取り付け方法そのものが違い、86はクロスメンバーに装着されるが、BRZはボディ側に取り付ける新たな方式となる。また各ショックアブソーバーの減衰力も、コイルスプリングのレートも異なり、その上でパワステやスロットルの特性も変更されている。
それ以外の基本的なメカニズムは同じものの、先代からは大きな変化があった。まずトピックは搭載される水平対向4気筒エンジンがこれまでの2Lから2.4Lへと排気量が拡大されたことだ。これにより最高出力は235ps、最大トルクは250Nmへと向上し、0→100km/h加速も6.3秒と先代よりも1秒以上速い動力性能を手に入れた。またボディ構造は基本的に先代を引き継ぐものの、スバルが新型レヴォーグで採用した構造の一部を採用したインナーフレーム構造としてボディ剛性も大幅に進化した。またATモデルでは運転支援システム「アイサイト」の採用がトピックだ。
実際に走らせるとGR86とBRZではまずスロットル特性が異なり、加速がより鋭く感じるのはGR86、アクセル開度にリニアなのはBRZとなる。また操舵した瞬間の感覚から2台には違いがあり、86はソリッドでシャープなノーズの向きの変化があるのに対して、BRZはあくまでも操舵量に忠実でリニアな反応を見せる。さらにコーナリングも86は前述したソリッドでシャープな感触から旋回が始まるが、そのまま比較的早くリアがスライドを始める特性。対してBRZはリニアな反応が持続して、そのままロールが前から後ろへとキレイに移っていき、どこまでも粘りのあるコーナリングフォームを見せる。
そしてこの味付けの違いこそが、今回の86とBRZでメカを変えたところから来る違いとなる。ここまでパーツが異なると、工場での組付けも工数がかかり、同じラインで流す意味を逸脱する感もある。しかしながらメカで味を変えたのは、今回の開発の最終段階で、GR側からセット大幅変更のリクエストがあったため。これはマスタードライバーであるモリゾウ(豊田章男氏)からのもので、完成間近の86を試乗して「これはGRの味ではない」と評したからだという。これを受けて86は、開発終了直前で仕様変更が行われ、BRZと走りが大きく異るものとなった。結果86は発売が延期され、BRZが一足先に登場となった経緯がある。
とはいえ、電動化が叫ばれるこの時代に、ピュアなスポーツカーの2代目を送り出せたことは奇跡といえよう。この2台が登場したことで、またしばらくはコンパクトで比較的軽量なFRスポーツを
我々は手にすることができる。それは実感こそ薄いかもしれないが、とても幸せなことでもあるのだ。
【Specification】スバルBRZ R
■車両本体価格=3,245,000円(税込)
■全長×全幅×全高=4265×1775×1310mm
■ホイールベース=2575mm
■トレッド=前1520、後1550mm
■車両重量=1280kg
■エンジン型式/種類=FA25/水平対向4DOHC16V
■総排気量=2387cc
■最高出力=235ps(173kW)/7000rpm
■最大トルク=250Nm(25.5kg-m)/3700rpm
■燃料タンク容量=50L(プレミアム)
■燃費(WLTC)=11.8km/L
■トランスミッション形式=6速AT
■サスペンション形式=前ストラット/コイル、後Wウイッシュボーン/コイル
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前215/45R17、後215/45R17