オートモービルカウンシルでミニカーショップ店主との雑談中に存在を知ったモデルカーの蚤の市に行きました。4月18日に横浜産貿ホールで開催された“第107回横浜ワンダーランド・マーケット”。今年で40周年の歴史あるイベントです。
おなじみのトミカやホットホイールの現行やレアモデルから世界のアンティークモデル、プラモデル、パーツ、手作りミニカーなどさまざまなモデルであふれていて、時間もお金もいくらあっても足りないムードたっぷり。
ここでも社交が盛んで、お宝袋を提げながら出会った友人知人たちと旧交を温めたり、友人を紹介し合ったりしている姿が会場のあちこちで見られました。私も同行した友人に何人も紹介してもらいましたし、何年ぶりかで再会した店主ともしばしの雑談も楽しめました。
開場時刻が10時、私が到着したのが10時30分。すでに熱気に包まれ、”お宝”が詰まった袋を両手に提げた人たちがたくさんいました。
熱気あふれる会場で出会った気になったあれこれをご紹介いたします。
ハの字シャコタンで走る
最も懐かしかったのがマルイ製のスカイライン・ジャパン・2000GTターボの“ハの字シャコタンで走る”モデル。このシリーズの正確な発売日は覚えていませんが80年代前半だったと思います。ハの字シャコタンなのにモーターで走るということが画期的。さらにノーマル仕様、ヒップアップ仕様、“ワンテール”仕様などカスタマイズできることもあり人気でした。
実車でもいわゆるヤンキーたちが”ケンメリ”、”ジャパン”世代のスカイラインやローレルなどの中古車を”ツリ目”、”シャコタン”、”オバフェン”に改造するのが流行っていた時代。
まだ免許を取れない少年たちは、プラモデルを作り、改造しながら実車が買える日を夢見ていたもの。私もモーター巻き線の改造、モーターの積み替え、電池の増量などなにがしかの改造を施したプラモデルを駐車場で走らせ、模型屋主催のレースに参加していました。
当時は西部警察の全盛期とも重なっていたこともあり、最後は”西部警察ごっこ”。爆竹を仕込んで走らせ何台も爆破させました。しかし爆竹をただ仕込んだだけでは威力が大きすぎて破裂して木っ端微塵になってしまうので、火薬の量を調整し、ホワイトガソリンを車内にこぼしておくなどの工夫を施して西部警察の爆破炎上シーンっぽくなるようにしていました。テレビ番組風に言うと、「いろんな知恵や工夫はすべてプラモデルから学んだ」ということですね。
パッケージには720円という値札が見えますが、これは当時の価格であり今はこんな値段ではもちろん買えません。
数万円クラスのお宝がいっぱい
2万円、3万円、5万円と当時の価格を思うとトンデモナイ価格のプラモデルが並んでいましたが、その中でも最高価格だったのがこの東宝模型株式会社という今はないメーカー製の日産プレジデント。
ハンドルの回転でライトが点灯、ボンネット、トランクだけでなくドアが4枚とも開閉可能、しかもオプションでラジコンにもなるという豪華モデル。部品に欠品がなくこれだけの状態のモノはまず出ないとのことでした。
さてこれを買ったらどうするか?実際に組み立ててみたい気もしますが、きっとこのままの状態で保管するんでしょうね。
手作りミニカーで思い出を再現するのもいい
セラタオートスカルプチャーの手による手作り品。これはかわいい。一台からでもオーダーメイドを受けてくれるとのこと。一般的でないクルマでも4方向からの写真があれば作れるそうです。日本にないクルマでも資料さえあればいいのでアジア専用車も作ってもらえる。そういうクルマは当然ミニカーになることもないので、インドネシア在住時代のクルマを作ってもらい思い出のジオラマを作ろうかと思いました。夢が膨らみます。
香港中国メーカーのミニカーがいい
もう何年も気になっていて今回もやはり気になったのはやはりTINY、INNOという香港中国メーカーのミニカーです。これがよくできています。ディスプレイモデルだけでなく、日本のトミカのように箱から出して遊ぶモデルもかなりの充実ぶりだし種類も多い。ミニカーだけでなくジオラマ系もかなりの充実ぶりです。香港の空港にも専門店を出店するなど勢いも増しています。
マカオやアジアのサーキットを走ったレースカーのカラーリングのモデルや日本にはないモデルがあるのも魅力。
INNO製日産スカイラインGT-R(R32型)1992年アジアパシフィックツーリングカー選手権参戦車
INNO製日産スカイラインGT-R(R32型)1991年マカオグランプリ出場車
TINY製ハコスカGT-Rフェイスのサニートラック”ハコトラ”
苦悩しながら散財
当時は欲しかったけどお小遣いが足りなくて買えなかった、持っていたけど西部警察ごっこで壊してしまった、こんなミニカーメーカーは知らなかったなど欲しいものが多く見つかるけれど原資には限りがあります。会場をざっと一回りして、どうしてもこれだけはと思うモデルを買う。ということが理想ですが、そんなことをしていたら誰かに買われてしまいます。だからと言って片っ端から買うこともできない。とても悩ましい。
とりあえず遠目に見て、ここぞというプースを駆け足で回りつつ物色し、これはと思った場所にさっと戻り素早く吟味、という感じでいくつか買い(買ってしまい)ました。
イギリス製、フランス製、オランダ製と原産地ごとに個性がありますし、走らせるとワイパーが動くとかハンドルを回すとライトが点灯するというギミックが搭載されたモデルも昔はあったんですね。我慢できずに買ってしまったモデルからいくつかご紹介します。
コーギー(イギリス)製メルセデス・ベンツ・600プルマン
このモデルのハイライトはブーと走らせるとワイパーが動くギミックが搭載されていること。裏を見るとオンオフスイッチがあり、回すとギアが噛んだり離れたりも見えるようになっている。昔はこのようなギミックが搭載されたミニカーが多くありました。
Tekno(オランダ)製メルセデス・ベンツ・0302型バス
1928年創業の老舗トラック・バス専業ミニカーメーカー。ドア開閉可能。車体右側を上からぐっと押すとタイヤが左に切れ、左側を押すと右に切れるというギミックを搭載。実車は1965年から1974年まで生産されていました。ジャカルタ在住当時、シンガポールに行くとこのバスに乗れたのが嬉しかった思い出があるバスなので思わず。
solido(フランス)製メルセデス・ベンツ・280(W123型)
1932年創業の老舗ミニカーメーカー。1982年に廃業した日本のアサヒ玩具という会社が輸入販売した個体。これもジャカルタ在住当時の思い出がいっぱいなこととこの世代のベンツのミニカーは集めているということもあり思わず手に。
SAKURA(日本)製メルセデス・ベンツSクラス(W111/W112型)
アンチモニー製のため重量感は抜群だし、赤絨毯のような布にくるまれているので当時のベンツのありがたさも感じることができます。
ヨーロッパメーカー(たぶんIXO)のバングラデシュ製フランスSAVIEM SC10U型バス
実車は1965年から1989年まで改良を重ねながら生産ました。車体には当時発表されたばかりのルノー5の広告もちゃんと再現されています。フロントフラッシャーの位置と車体広告から、1970年に改良されたタイプで初代ルノー5がデビューした1972年の実車を再現したと推察されます。
お宝探しは今のうちに?
ところで、コロナ以降めっきり見かけなくなったこういう趣味の世界での外人バイヤーですが会場でひと組見ました。スマホで写真撮ってSNSなどでやり取りしながらあれこれ買っていました。世の中が正常化したらどんどんやってくるでしょうから欲しい人は今のうち。クラシックカメラ、クラシックカーの世界でも相場が高騰する日のことを心配する声が聞こえてきています。
第108回 ワンダーランド・マーケットは2021年7月25日(日) 10:00から横浜産貿ホールで開催されます。
(取材・写真・文:大田中秀一)