【LEXUS LS/IS Test Drive & Talk Session】新しいLS/ISが導くプレミアムの新潮流、レクサスの現在地と今後向かう地平とは

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1989年、初代LS発売を機にブランドをスタートさせたレクサス。32年の時を経て、ジャパンメイドのプレミアムブランドとしての現在地や向かう先はどこか? 新しいLSとISの試乗を終えた島下泰久氏と藤島知子氏が、いまのレクサスと両モデルについて語り合った。

LCで切り拓いた世界がLSでさらに深化した

最近のレクサスには、どこか突き抜けたような勢いがある。世界のライバルに比べれば、歴史やヘリテージでこそ敵わないが、それを逆手にとって唯我独尊と言わんばかりに己の個性を追求して、ジャパンメイドのプレミアムブランドを構築している。
そんな姿勢に共感する気鋭のモータージャーナリスト、島下泰久氏と藤島知子氏が、LSやISといったニューモデルを中心に、プレミアムブランドとしてのレクサスの「いまとこれから」を、自身の体験を交えて語り合った。

(写真左)=島下泰久(Yasuhisa Shimashita)/走行性能からブランド論、クルマを取り巻くあらゆる社会事象など広い守備範囲で執筆。昨年末には2021年度版『間違いだらけのクルマ選び』( 草思社)を上梓。(写真右)=藤島知子(Tomoko Fujishima)/自動車専門誌、一般誌、TV、WEBと様々なメディアで走り好きの目線と女性の目線の両方向からカーライフ全般をサポート。『クルマでいこう!』( テレビ神奈川)に出演中。

島下/まず、LC(注01)があの大胆なデザインで世に出てきたこと。あれは相当に大きい。レクサスブランドが持つ元来の個性だった静粛性や快適性を含ませたうえで、アグレッシブなイメージを前面に打ち出し、あらためて走りにもこだわってきた。過去に打ち出したライフスタイルの提案など、あらゆる施策の中心にはちゃんとクルマがいるんだ、と。LCがそれを再認識させてくれたようでした。

LEXUS LC(注01)/2017年にデビューしたフラッグシップクーペ。5L・V8を搭載するLC500と、ハイブリッドのLC500hに大別される。レクサスFR用のGA-Lプラットフォーム初採用車でもある。

藤島/レクサスとしてフラッグシップクーペは必要、という開発者の方々の言葉は、とても印象深かったです。実際、スポーティなのに快適で、とにかく心地良いクルマでした。そんなLCに内包されたブレイクスルーは、年次改良されたLSにもしっかりと根付いているように思います。

LEXUS RC(注01)/クーペとしては先発のRCも昨年、一部改良が行なわれ操縦性や安定性を向上している。

島下/LSは現行型からクーペフォルムへと変更。でも決して、セダンでなくなったわけではない。そこにはしっかりとフォーマルな印象が同居している。僕はあのデザイン、すごく秀逸だと思いました。今のレクサスらしさの、ひとつの象徴なのかもしれない。

LEXUS LS500h “EXECUTIVE”/内外装、走り、安全装備、運転支援装置など多岐にわたる改良を加えて、昨年11月19日に発売された。この年次改良により日本人の美意識やジャパンテイストをさらに強調。

藤島/これまでのLSは、とにかく静かで快適。ボンネットの上にシャンパングラスを置いた初代LSのテレビCMがとても的を射ていました。そこにきて現行型は精悍な印象で、ドライバーズカーとして積極的に選びたいクルマにもなりました。ドライバーの意思に対して忠実にクルマが反応し、段差を乗り越えた際にもスッとクルマの動きが収まる。意のままに動くという点でも、とても進化したクルマだと思います。

LEXUS LS500h “EXECUTIVE”

島下/デザインや走りに代表されるエモーショナルな扉が開かれたいっぽうで、初期段階は静粛性や乗り心地に関しては、正直、物足りない部分も見受けられました。けれども、年次改良されるにつれて、そこをきっちりと埋めてきている。歴代のLSを思えば原点回帰だけれども、単に過去に戻ったのではない。レクサス固有の伝統と、LC500に端を発する新しい表現方法が、ひとつのカタチとして結実したのだと思えました。

LEXUS LS500h “EXECUTIVE”/着実に改良を重ねることで一層の高みに達した走りを味わわせてくれる。

新型ISを通して見る走りの質を高める姿勢

藤島/エモーショナルなデザインや走りへのこだわり、それは新型のISにもしっかりと存在していましたね。プラットフォームを踏襲したビッグマイナーチェンジと括られるけれど、実際に触れてみると大きく変わっていて。

LEXUS IS300 “F SPORT”/2013年に登場したISを基に、モノコックボディとシャシー以外をほぼ刷新するというフルモデルチェンジに匹敵する進化を遂げた。ハイブリッドのIS300hと3.5L・V6エンジンのIS350もラインナップ。

島下/特に走りには驚きました。マイチェンだから進化幅はこのくらいかな? なんて思って試したら、そういう概念を大きく覆す、質の高い走りが感じられました。

LEXUS IS300 “F SPORT”

藤島/ワインディングでは、ドライバーに的確な情報を伝えてきて、なおかつ操作に対して忠実に動いてくれる。ステアリングやペダルの、ほんのわずかな操作に対してもキチンと反応してくれる安心感は絶大です。まるで数多くの奏者を前に、音の強弱を緻密に合わせながら楽曲を作り上げるフルオーケストラの指揮者になったような感覚を抱きました。

LEXUS IS300 “F SPORT”

島下/先に述べたLSもそうですが、進化改良のアプローチとして、何かドラスティックな変化があったわけではなくて、地道なチューニングの積み重ねと聞きました。しっかりしたボディがあって、サスペンションをしなやかに動かして……という基本中の基本を丹念に作り込んでいくイメージ。タイヤの縦ばね剛性や、ダンパーやブッシュの仕様変更など、ひとつひとつの微細な研究開発が、大きな進化をもたらしている。やはりクルマは、小さなことの積み重ねが大切だと、再確認しました。

LEXUS IS300 “F SPORT”/クルマと対話をしながら走れる感覚はドライバーを情緒的な表現者にしてくれる。

藤島/“すっきりと奥深い”という言葉を、レクサスは好んで使いますよね。まさに新型ISのことかと思いました。この走りを獲得するためには下山テストコース(注02)で熟成させたことも大きいのかもしれません。すごく過酷なコースですよね。路面自体はニュルブルクリンクなどの方が荒れていて厳しそうですが、でも激しいアップダウンがあったり、カーブの途中で意図的に曲率が変わったり。

下山テストコース(注02)/正式名称はトヨタテクニカルセンター下山。ドイツのニュルブルクリンクを参考にした1周5.3km、高低差75mの試走場。今後は高速評価路や特性評価路なども随時稼働が始まる。

島下/で、そこには同時にバンプもあったり……。下山テストコースは、僕らにとって“楽しくないコース”ですよね。クルマにとってもドライバーにとっても負荷がかかり過ぎて。少なくともドライブを楽しむのにはまったく適していない。けれども、こういうコースであらゆる要求性能に対して高得点を出す開発を続けてきたからこそ、ISのようなクルマができるのだと感じます。
藤島/路面の変化に対して、しっかりとタイヤが追従してくれる走り。クルマそのものの基本性能が高くて、さらに過酷なコースの中でより良い走行性能を目指してきた結果でしょう。私もISに乗って、なるほどと思いました。

日本の感性と技術を持って未来を見据えるプレミアム

INTERSECT BY LEXUS TOKYO
住所:東京都港区南青山4丁目21−26
電話:03-6447-1540
営業時間:1F CAFE SHOP & GARAGE 9:00-23:00/2F BISTRO LOUNGE 11:00-23:00
定休日:不定休

島下/LSやISに代表されるように、最近のレクサスは確かに走りを語りたくなるような動的性能が際立っています。それはハンドリングとか出力性能だけではなく、静粛性や乗り心地、上質な感触などを含めて感じ取れます。クルマが主体で人間がただのオペレーターに終始するのではなくて、もう少し人間が主体となって、情感に訴えかけるようなクルマ作りになっているというか。それが操作系などのインターフェイスも含めて、ライバルのプレミアムブランドよりも秀でている、これもレクサスらしさだと思います。

INTERSECT BY LEXUS TOKYO

藤島/装飾の部分にも確固たる意思を感じますよね。例えばLSのインテリア。職人が手貼りしたというプラチナ箔のオーナメントトリムや、銀箔糸で織り上げた西陣織(注03)のドアトリムなど、日本の伝統工芸を持って日本のプレミアムブランドを表現しています。

プラチナ箔&西陣(R)(注03)/金沢の職人が極薄のプラチナ箔を手貼りしたオーナメントパネルや、京都の老舗で織り上げた西陣織のドアトリムなど、LSには日本の伝統文化を活かした装飾が取り入れられる。

島下/昔ながらの技法をただ持ち込むだけではなくて、それを基にプレミアムブランドとしてどのような表現をすべきか。そこがきっちり練られているのが素晴らしい。伝統を重んじながらも決してそこに固執せず、レクサスとしてのあるべき未来を提案している。

藤島/以前からレクサスは、日本らしい“おもてなしの精神”を大切にしたクルマ作りをしてきたと思います。パワーウィンドーが閉じる際も、閉まり切る間際の動きがすっと緩やかになったり。このような細部のこだわりを見ると、人の心の移ろいだったり、四季の移り変わりで感じる繊細な心の動きを大切に捉えていて、それをクルマ側で表現しているような気がしました。それがレクサスの独自性になっていると思います。

島下/レクサスがプレミアムブランドとして世界の強豪を前にしたとき、今まで歴史の浅さみたいなものがネガティブに捉えられることがありました。でも、最近のレクサスを体感するにつれて、プレミアムブランドにとって、もはや時間軸の長短は関係ないと感じます。重要なのは、その先に何を見せてくれるのかということ。もし、自分のそばにレクサスがあり生活を共にしたら、どんな未来が待っているのだろう。そんなワクワクさせてくれるような存在であるべきだと思います。そうした意味でレクサスは、想像を掻き立てられるような独自のプレミアムブランドとして成立しています。

藤島/今、自動車業界は、自動運転化や安全性の追求、環境負荷への取り組みなどモビリティの変貌と向き合わざるを得ない状況にあります。でも、クルマとしての基本性能を高める開発や、乗員に心地よく過ごしてもらう取り組みなどは、来るべき未来の自動車社会でも大きな武器になると思います。自動運転になってもピュアEVになっても、レクサスの価値は揺るぎないだろうって。

島下/レクサスの開発現場では“真似するな”っていう言葉が飛び交っているそうです。ライバルの後追いをせず、独自のやり方でつき進むべきだと。そこに日本の伝統と感性が融合して、レクサスはグローバルブランドに成長した。今、彼ら自身がそこに自信を持ち、さらに深化させている段階だと感じます。僕らはそんな過渡期を目撃しているわけで、ワクワクするし、レクサスの未来に期待したいと思いました。

※こちらのトークの模様をまとめた動画を「LE VOLANT CARSMEET WEB」のYouTubeで公開しています。是非ご覧になってください!

【Specification】LEXUS IS300 “F SPORT”
■全長×全幅×全高=4710×1840×1435mm
■ホイールベース=2800mm
■車両重量=1640kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1998cc
■最高出力=245ps(180kW)/5200-5800rpm
■最大トルク= 350Nm(35.7kg-m)/1650-4400rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=235/40R19:265/35R19
■車両本体価格(税込)=5,350,000円(2WD)

【Specification】LEXUS LS500h “EXECUTIVE”
■全長×全幅×全高=5235×1900×1460mm
■ホイールベース=3125mm
■車両重量=2360kg
■エンジン種類/排気量=V6DOHC24V/3456cc
■最高出力=299ps(220kW)/6600rpm
■最大トルク=356Nm(36.3 kg-m)/5100rpm
■モーター形式/種類=2NM/交流同期電動機
■モーター最高出力=180ps(132kW
■モーター最大トルク=300Nm(30.6kg-m)
■トランスミッション=マルチステージハイブリッドトランスミッション
■サスペンション(F:R)= マルチリンク:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=245/45R20:245/45R20
■車両本体価格(税込)=17,280,000 円(AWD)

お問い合わせ
レクサスインフォメーションデスク 0800-500-5577

 

フォト=篠原晃一/K.Shinohara ルボラン2021年5月号より転載

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