’15年にベントレー初のSUVとして登場したベンテイガがマイナ―チェンジ、前回のクローズドコースに続き、今回は公道を試乗する機会が与えられた。新型ベンテイガの最大のトピックはデザインが一新された内外装だが、先進の制御技術が新たに搭載されたことで、走りも進化を遂げていたのだ。
スポーティながらあくまでもジェントル
今に続くラグジュアリーSUV市場を確立したのはベントレーに他ならない。巨大なボディをまとい、608psを誇るW型12気筒ツインターボを搭載、SUVとしては初の300km/h超に成功した超絶怒涛の1台として世界中で注目されてきた。その後はシリーズ化され、V8モデルやトップモデルにスピードを加えるなど着実な展開を続けている。
その間、2ドアクーペのコンチネンタルGTと4ドアサルーンのフライングスパーはフルモデルチェンジされ、第三世代へと進化したが、今回それらに合わせるようにベンテイガもマイナーチェンジが行われた。フロント部分のボディパネルは先の2モデルと共通のイメージになるようデザインは刷新され、グリルは大型化。そしてクリスタルカットガラスをモチーフにしたLEDマトリクスヘッドライトが与えられるなど、最新ベントレーのアイコンを強調する。同時にコンチネンタルGT似のテールライトの採用やライセンスプレートをバンパーへ移行したほか、リアトレッドを20mm拡大したことで、洗練されながらもパワフルな印象に仕立て直されている。
ひと足先に上陸を果たしたベーシックグレードとなるV8モデルを試してみると、相変わらずの“ラグジュアリー感”に感銘を受けた。特にインテリアの質感は、コンチネンタルGTやフライングスパーと同等で、細部に渡る作り込みが見事。ステアリングやシート、ドアトリムに至るまで完全新設計されているだけあって、中に居るぶんにはとてもSUVとは思わせないフィニッシュが見て取れる。しかも今回のマイナーチェンジに合わせて後部座席の足元が100mm広くなっているというからプライオリティも高い。スペース効率の面でも抜かりない進化を見せるのは、やはりラグジュアリーブランドの意地だろう。
ベンテイガに搭載されるのは550ps&770Nmを誇る4L V8ツインターボエンジン。これは先代からそのまま受け継がれたもので、特にスペック的にも変化はない。アイドリングストップや気筒休止システム(8気筒→4気筒)が採用された定評あるエンジンだ。これにZF製8速ATを組み合わせ、0→100km/h加速4.5秒、最高速度290km/hを誇る――というが、デビューから約5年という間に多くのライバル車が出現、その中には姉妹車も存在するだけに、その選択に悩んでいる人も少なくないだろう。
結論から言わせてもらうと、このベンテイガは冒頭でも触れたようにコンセプト通りの完全なるラグジャリーSUVである。高級かつ上質で、たとえ550ps&770Nmを出力するといっても、このパワー&トルクを使い切ることに意味はなく、逆にこれだけのパワーがあるから心に余裕を持って接するよう促す。たとえばスポーツSUVなどは、過剰な演出も加わるだけにアクセル開度を早めに立ち上げるモデルが見受けられるが、ベンテイガにそういった傾向はほぼ皆無。もちろんスポーツモードにすれば期待にも応えてくれるが、少なくともデフォルトのベントレーモードでは、その名に相応しいジェントルな走りで魅了する。しかも乗り心地も最新の48Vシステムを組み合わせるだけに常に上質、可変ステアリングと相まってこの巨漢でも自重を感じさせないほど軽快に走る。今回ワイドトレッド化された効果もあり、以前にも増して高い安定感も得られるだけになおさらだろう。
この後、ベンテイガにはスピードと待望のハイブリッドも加わる予定だが、ベーシックグレードでここまでベントレーの本質を味わえるならこれは間違いない選択となりそうだ。ラグジュアリーの極みをSUVで味わえるのだから。