「プジョー・デザイン・ラボ」としては上海、サンフランシスコに続く3拠点目のサテライトスタジオに
グループPSAに属するプジョーはこのほど、ブラジル・サンパウロにデザインのサテライトスタジオ「プジョー・デザイン・ラボ」を開設したと発表した。これでプジョー・デザイン・ラボは、上海、サンフランシスコに続く3拠点目となる。
210年以上の歴史を持つプジョーは、131年にわたって自動車デザインで築き上げてきたノウハウを活かして、2012年にクルマ以外のクライアントにサービスを提供するデザインスタジオ「プジョー・デザイン・ラボ」を立ち上げた。プジョー・デザインのディレクター、マティアス・ホッサンは次のように紹介する。
「デザイナーのすべての想像力と創造性は、クルマの開発に必要な非常に高い精度と組み合わされ、外部クライアント向けの製品とサービスの開発に適用されます」
プジョー・デザイン・ラボは2012年に初めて開設されて以来、航空機メーカーの「エアバス」や、ヨットやモーターボートなどプレジャーボートを製造する「ベネトウ」、ピアノメーカーの「プライエル」など、世界の有名なクライアントとコラボレーションしてきた。
エアバスとは「H160ヘリコプター」の製造でコラボレーション。エクステリアデザインは、同ラボによってエレガントでダイナミックなラインが用いられ、エアバス社のヘリコプターの視覚的なアイデンティティを再定義した。
その一方で、複合素材を用いたフェアリングや複葉機リヤスタビライザー、傾斜リヤテールローター、ブルーエッジブレードなど、革新的な技術が積極的に導入されている点も大きな特徴で、飛行時の効率性や静粛性も高められている。
ベネトウとのコラボでは、プジョー車に用いられている「i-コックピット」と、ベネトウが開発した「シップ・コントロール」コネクテッド技術を組み合わせた機能的デモンストレーターである「シー・ドライブ・コンセプト」を開発。両者の長所を組み合わせ、ボートのコックピットが将来どうのようになっていくべきかを探ったものだ。
プジョー車を連想させるコンパクトサイズのステアリングホイールをはじめ、コックピットは現行プジョー車に見られるようなディテールが見て取れる。インパネには「シップ・コントロール」のインターフェイスが表示される17インチタッチスクリーンや、ナビゲーション情報をパイロットに提供する取り外し可能なタブレットが装備される。
ピアノメーカー「プライエル」とのコラボでは、ピアノのメカニカルコンポーネントの位置を下げ、蓋をキーボートの高さに合わせることで、観客はアーティストの演奏をどの角度からも見ることができるという、世界初のピアノを開発。アーティストの巧みな指さばきはさらに脚光を浴び、観客はこれまで以上に高い音質を実感でき、アーティストと観客とのに大きな相互作用が生み出される。
外観は、ピアノの古典的カラーのひとつとしてブラックが用いられるが、同ラボはボリュームや人間工学、アーキテクチャーの観点から、これまで定石とされてきた手法を変えることに努め、ピアノという楽器を再解釈。クルマの製造で培った高い品質や洗練性が与えられ、軽量に設計されたそのシルエットは、彫刻のような美しさと空力的なフォルムを実現。見る角度によってはレガッタボートの船体を想起させる。
なお、このたび開設したプジョー・デザイン・ラボ・ブラジルの責任者には、フランス人のファビアン・ダーチが就任。彼は2001年にグループPSAに入社して以来、プジョー、シトロエエン、DS各ブランドのコンセプトカーおよび量産車の開発に携わり、2020年からは同社サンパウロスタジオのアートディレクターを務めている。