万人に受け入れられるフェラーリとして、失敗のできないモデルチェンジ!
2021年1月14日、フェラーリ・ポルトフィーノMの日本導入が発表された。これはもちろん、カリフォルニアが築いた、電動ハードトップを持つ”フェラーリV8GTスパイダー”のカテゴリーに属する最新モデルである。
2008年にデビューしたカリフォルニアは、2012年のカリフォルニア30、2014年のカリフォルニアT、2017年のポルトフィーノと進化し続け、エントリーユーザーを取り込むなど瞬く間に重要モデルとなった。それからちょうど3年、2020年夏にポルトフィーノMがイタリア本国でデビューを果たしたのだ。
Mはもちろんモディファイのイタリア語、”Modificata”を意味する。これは過去のフェラーリ・ロードモデルで言えば、F512M、456M、575Mマラネロで使用してきた手法であり、”なるほどそう来たか”といった印象だ。
事前に流れた噂や予想は、先にデビューしたローマで先行採用された技術やインターフェイスが投入され、フロントフェイスも”ローマ顔”になるのではないか、というものだった。しかし技術面でのフィードバックはあったものの、デザインの変更は最低限に留められ、インターフェイスの変化もなかった。いや正確には”変える必要”がなかったのだ。
台数こそ明かさないがこのクラスの販売はカリフォルニア時代から好調で、カリフォルニアT→ポルトフィーノのモデルチェンジも”正常進化”と言えるものだった。というわけで今回も外装は小変更で、ハイライトは技術面に集約されている。
V8エンジンは600→620psとなり、組み合わせるDCTは7から8速に進化。これまで3段階だったマネッティーノは、ウエットとレースを追加した5段階となった。ざっと書けば以上だが、今回の発表前日に行われたメディア向けのプレゼンで説明されただけでも、以下のように細かく改良している。
例えば新しいカムプロフィールによるバルブリフト量増大、タービンのスピードセンサー搭載で最高回転数が5000rpm向上、リアサイレンサーを廃止し新形状のバイパスバルブによる新たな制御方法採用、多段化にもかかわらず20%小型化したギアボックスでギアレシオを4%短縮、ヘッドランプに初めてエアロダイナミクス機能を採用……といった具合だ。
外観上での識別点は、左右インテークが大きくなったフロントバンパー、フロントタイヤ前に追加された切込み、エキゾースト回りを覆うような形状となったリアバンパー、新形状のリアディフューザー、専用デザインのホイールとなる。実車は小変更にもかかわらずかなりメリハリがついた印象で、デザインと機能の両立は相変わらず見事といえよう。また室内は基本的にポルトフィーノを踏襲するが、先進運転支援システム(ADAS)やネックウォーマーのオプション採用が新しい。
イタリア時代にカリフォルニアのプロダクトマネージャーを務めたフェラーリ・ジャパンのフェデリコ・パストレッリ氏はプレゼンで、”1台のふたつの魂がある”と表現。スポーティなクーペとエレガントなオープンを兼ね備え、365日いろんなコンディションで乗って楽しめるとその魅力を評した。
ある意味では万能フェラーリともいえるポルトフィーノMは、万人に受け入れられるフェラーリとして失敗のできないモデルチェンジが求められ、正直、手堅くきたという印象だ。しかしそれだけにより洗練されたことは間違いなく、これは乗ったら素晴らしいに違いないという、確信めいた予感を実車から感じたのであった。