レクサスLCに息づく伝統と最先端テクノロジーの源を尋ねる旅/ニッポン再発見プロジェクト【第2回】

【Interview】おもてなしの精神は快適性と技術に再現

改めて2台のLCを試した後、開発責任者のLexus International 製品企画チーフエンジニアの武藤康史氏に話をうかがった。まず訊いたのは、新たに設定されたLCコンバーチブルの狙いについてだ。

Lexus International 製品企画 チーフエンジニア 武藤康史氏(写真右)/1993年に入社。V12、V8と主にエンジン開発に携わり、2005年からIS、RC、GSなどの商品企画を担当。2017年よりLCの開発主査、2019年よりチーフエンジニアとしてLCクーペとコンバーチブルを担当。

「大命題としたのは、LCらしいというだけでなく、レクサスらしいコンバーチブルとすることです。使い勝手や所作には、日本のメーカーらしいおもてなしの精神などに配慮しました。トップの開閉スイッチはパームレストの蓋が開くようになっていて、その内側に隠してあります。そしてオープンにする時には書の筆運びのようにスッと素早く動き出してスーッと滑らかに開き、そして最後シュッと閉まる緩急をつけているんです」

レクサスはこうした開閉部分に襖を開け閉めする時の動きを採り入れている。約15秒の開閉時間の中で、動き出しや動作の切り替えに0.2秒程度のタメを設けて、優雅な動作を実現しているのだ。
おもてなしという言葉は、耐候性、耐久性にも当てはまる。テストは徹底的に行われたという。

写真のように、ごく限られたスペースにソフトトップが収まるだけでなく、開閉時の所作も日本の襖の動きを模して再現されている。

「日本は寒暖も激しいですから、ここで通じるクルマは世界中どこでも楽しんでいただけると思います。日本人らしい心配性で、ルーフの耐久試験も雪が10cm積もった状態でも、開くかどうかまで見ましたよ。普段はそんなことはしないけれど、うっかり開けようとした時に致命的に壊れたりしないように」
四季を意識する。実はこの時点で、すでに日本らしさはにじみ出ているのかもしれない。コンバーチブルの追加で、クーペの役割はどうなるのだろうか。その位置づけに変化はあるのか。

ホイールの質量低減などによる足回りの軽量化や、パフォーマンス性の高いダンパーが装着されたことで乗り心地の向上が図られている。

「役割分担は考えました。クーペとは、やはり元々走るためのクルマです。LCは当初から“より鋭く、より優雅に”と掲げて開発されてきましたが、その中でも“より鋭く”の部分、要するに操作に対して正確に動くというところを突き詰めています。ゆったりと走ってV型8気筒ユニットの咆哮を楽しめるコンバーチブルに対して、クーペも同じ場所に留まらず進化させることで、LCファミリーとして幅が広がったと思います」

クーペにはLC500に加えて、マルチステージハイブリッドシステムを搭載するLC500hという選択肢もある。こちらの位置づけも再考したと武藤氏は言う。

「理屈は抜きにして、運転する人が楽しいクルマにしたかった」と語る武藤氏。欧州で開催された試乗会でもその想いは現地ジャーナリストに伝わったと頬を緩ませた。

「ハイブリッドはクーペにしかない。その良さをどれだけ感じてもらえるのかも新しいチャレンジでした。実は解析がどんどん進んできて、今まで遠慮していたバッテリーの持ち出しが、どうやらもっとイケるといったことが見えてきたんです。実はLSでは、それをエンジン回転を下げるのに使っているのですが、LCではトルクを出すために使っています。電動化ユニットは自由度があるので、そういう部分でよりLCらしさを感じてもらえるよう考えました」
クーペのLC500とLC500hに、コンバーチブルのLC500。LCには今、3つの異なる個性が揃うこととなった。
「我々はラグジュアリーライフスタイルブランドとして、生活の中のどういうシーンで乗っていただきたいかを想定し、それを技術にどう反映していくのかを常に考えています。コンバーチブルはやはり自然を感じてほしい。対するクーペは都会的。ハイブリッドならその静粛性も街に合っていますよね。そういう風にキャラクターが分かれて、訴求しやすくなったと思っています。いずれを選ばれたとしても、このクルマに乗っている時は仕事を忘れて、ひとりの自分に帰るために乗っていただけるといいですね」

「LC500h / LC500 Limited Edition AVIATION」国内販売70台の特別限定車。「アビエーション=航空」という名が示すように、空力性能に着目したパフォーマンス性の高い限定車が発売。CFRPで作られた専用リアウィングを装着することで高い操作性と走行安定性を実現する。

フォト=岡村昌宏/M.Okamura(CROSSOVER) ルボラン2021年1月号より転載

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