ユーロNCAPが新たな先進運転支援機能の評価を開始

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ドイツのプレミアム勢が揃って高評価に。運転と支援のバランスにも言及

欧州で新型車の安全性をジャッジするユーロNCAPが、新たに先進運転支援機能の評価結果(アシストドライビング・グレーディング)を公表した。評価内容は「支援能力(アシスタンス・コンピテンス)」と「安全バックアップ性能(セーフティ・バックアップ)」に大きく分けられ、それぞれの性能を細かくチェック。支援能力に関してはアダプティブクルーズコントロールの性能やステアリング支援、速度警告機能などに加え、運転者へのインフォメーションの優劣や、ドライバーモニタリングの優劣なども評価している。もうひとつの安全バックアップ性能は衝突被害軽減ブレーキの介入度、運転者が何らかの理由で運転不能となった場合の安全確保機能(自動停止)などを評価している。

新たに追加された先進運転支援機能の評価は、支援能力と安全バックアップ性能に大きく分けられ、それぞれの性能が細かく評価される。

記念すべき第1回、10車の評価結果は別表にある通りだが、メルセデス・ベンツGLE、BMW3シリーズ、アウディQ8のドイツブランド3車が従来の5つ星に相当する最高評価「ベリーグッド」を得たのに対し、フォード・クーガは「グッド」、フォルクスワーゲン・パサート、ボルボV60、テスラ・モデル3、日産ジュークが「モデラート(中程度)」、プジョー2008とルノー・クリオのフランス勢はやや厳しい「エントリー(入門レベル)」となっている。
装備の充実度が高いプレミアムモデルが優位となるのは致し方ない面もあり、それだけにユーロNCAPも従来の星数での評価ではなく、4段階のチェックボックスとやや緩やかな表現での評価としているのかもしれない。2つの大項目の評価に関しても従来どおり達成率を%で示す方式をとっているが、テスラ・モデル3は安全バックアップ機能に関してはドイツのプレミアムモデルを上回る最高の評価を受けながら、支援能力は36%と低評価としている点は興味深い。
この項目には自動運転に向けての安全確保に対するメーカーの姿勢の違いがあらわれていると言えるが、低評価に関してユーロNCAPは、テスラのオートパイロットシステムが自動運転をうたっている点を「混乱を招く」と指摘。優れた車両支援機能にドライバーが過度に依存する恐れがあるとしている。運転と支援のバランスがとれていない点を指摘するあたりは、ユーロNCAPらしいところでもある。
唯一の日本車であるジュークに関しては、まず自動運転を想起させる「プロパイロット」の名称が不適切と指摘し、ドライバーの監視システムもやや弱いと評価。運転支援と安全バックアップのバランスはいいが、システムの洗練度に欠けるとしている。また、フランス2車は、最先端の高度なバックアップ機能が装備されていないゆえに「エントリー」としたもので、今後の進化に期待するとコメントしている。
いずれにしろ、最新の国産車にも装備され始めている先進運転支援機能を、さまざまな方向から多角的に評価している点はユーロNCAPならではで、新たな指標のひとつとなっていくことはたしかだろう。新型コロナ禍の影響により衝突試験主体の安全性評価の公表は遅れているようだが、今後はこうした運転支援機能評価も欠かせないものとなるだけに、より多くの車種を試験し、的確な評価情報を届けてくれることを望みたい。

ルボラン2020年12月号より転載

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