あらゆる部品や構造に最高峰の技術が投下されるF1の世界で栄光の歴史を築き上げたホイールサプライヤーがBBSである。とりわけ2000年代前半はBBSを履いたフェラーリが連戦連勝した。その時代を軸に捉え、あらためてBBSのF1での軌跡を振り返る。
フェラーリの5連勝に加え表彰台を独占した年もある
自動車メーカーやアフターパーツメーカーが己の商品性を世に訴えるときに「モータースポーツ直系」という言葉が常套句になっている。モータリゼーションでの自動車の進化は、モータースポーツ技術が欠かせない時代が続いたから、その言葉は大きな説得力を持って消費者に届く。
創業から半世紀を迎えた今も、頑ななまでにモータースポーツ直系を貫く筆頭がBBSホイールだろう。世界中のモータースポーツを紐解いても、BBS製レーシングホイールを装着するマシンが目に飛び込んでくる。彼らがクロススポークと呼ぶ一連のメッシュパターンは、あらゆる時代のモータースポーツシーンでキラリと光り輝いて、世界中のレース好き、クルマ好きを虜にした。
その頂点にあるのがF1での活動だ。初めてF1マシンへ採用されたのは1992年のこと。いきなり由緒正しきトップチームであるフェラーリF1チームとコラボしたのだから、出自からして頂点から攻めていったような印象だ。実際はむしろ「勝つために必要なホイール」として世界中を探し回っていたフェラーリからの要望だったという。モータースポーツでの活躍の根底には、日本の優れた鍛造技術があったことがフェラーリの目に止まった。日本の鍛造工場(当時のワシマイヤー)で製造されるマグネシウム鍛造ホイールは、実際に従来品に比べて約20%もの軽量化を実現した。軽量化の極みにあるF1マシンにとっては驚異の数値だ。ただ軽いだけでなく、フェラーリ側が求める強度や剛性を両立させるばかりか、ブレーキの冷却性、タイヤへの熱の入り方までが入念に研究開発された。この性能が認められ、以来、長きにわたってフェラーリF1マシンの足もとを支えることになる。
その黄金時代は1990年中盤から訪れる。1995年のベネトン時代を皮切りに、歴代最多である7回のワールドチャンピオンに輝いたF1界の赤き皇帝、M.シューマッハの連勝記録を支えたのである。特に2000年からはフェラーリで怒涛の5連勝を遂げた。2004年にいたっては、ドライバーズランキングで優勝したM.シューマッハに加え、2位のR.バリチェロ(フェラーリ)、そして3位のJ.バトン(BARホンダ)と、表彰台のすべてをBBSが独占した。
一連のF1用ホイールを眺めると、そのどれもが市販品との共通性を感じさせる。そしてリムには大きくBBSのロゴが添付される。パーツサプライヤーなのに、堂々とブランド名を公表できるのだから、どのチームもBBSへのリスペクトがあったのだろう。2002年にはF1での功績に加えロードカーへの供給も手伝って、フェラーリ革新大賞を受賞している。
M.シューマッハの活躍を核とするBBSの連勝経験や、その後も継続的に続けるF1への挑戦で得た技術は、冒頭の言葉通り間違いなく市販品へもフィードバックされる。己のアイデンティティのとして貫くクロススポーク技術はもちろん、2015年にはF1への挑戦から始まったマグネシウム鍛造1ピースホイール(FZ-MG)を量産化した。耐腐食性や疲労強度など長期的な信頼耐久性を考えると、厳密にライフコントロールされるF1用とは異なる難しさがあっただろうが、BBSはモノにしてみせた。これこそ「モータースポーツ直系」を色濃く感じさせるストーリーであり、だからこそいつの時代もBBSには、誰もを納得させる説得力がある。
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