グレードでは「S」と「ターボ」間に位置する「GTS」。その名の由来を辿ると、スパルタンな出自のモデルではあるが、現在のマーケットでは“分かりやすくスポーティなポルシェが味わえるモデル”として人気を得ている。ドイツ本国で試乗した新型カイエンGTSの第一報をお届けしよう。
豪快で心地良いV8サウンドを奏でる
ポルシェのSUVには、マカンとカイエンがラインナップし、ターボ、S、そしてスタンダードモデルが存在する。しかしそれは決してヒエラルキーではなく、どのモデルに乗ってもそれぞれ独自の魅力を持っている。
標準装備のスポーツデザインパッケージは、ブラックでカラーリングされた数々のアクセントによって唯一無二の外観を演出する。
特に2007年に登場したV8を搭載するカイエンGTSはターボ並みの性能を持ちながらお買い得感もあって、高い人気を得ていた。ところが2015年には燃費問題でダウンサイジングを余儀なくされ、V6を搭載したGTSが誕生した。それでも、人気は高くカイエンのトータルセールス35万台中で1万5000台がGTSだった。
4L V8ツインターボは460ps/620Nmを発生する。GTSのターボとカイエンターボの90psの差は過給圧によるもので、GTSは0.8bar、ターボが1.5barとなる。
しかし、V8を望むオーナーは多く、ポルシェも2020年モデルからGTSにV8を搭載することを決定した。カイエンGTSとGTSクーペ(E3)に搭載される4L V8エンジンは基本的にターボモデルと同じで、Vバンク内の2基のツインターボによって従来より最高出力20ps、最大トルク20Nmアップし、460psと620Nmを発生。トランスミッションは従来通りでZF製の8速ATとなる。カイエンGTSとGTSクーペの0→100km/h加速は4.5秒(スポーツクロノ搭載モデル)。最高速度は270km/hに達する。
インテリアにはアルカンターラ仕立てのルーフライニング、センターパネル、センターコンソールアームレストを採用。全体の品質を向上させ、オーナーの満足度を高めている。
GTSのフロントに装着される390mm×38mm、リア358mm×28mmのベンチレーテッドディスクは、オプションで粉塵を出さない炭化タングステン・コーティング(PSCB)、またはセラミック(PCCB)の2種類から選択が可能だ。
シャシーはオンロード専用モデルとして開発され、スタンダードよりも20mm低められている。
まずは、走りなれたドイツ・アウトバーンの8号線に乗りこむと、ノーマルモードでもやや硬めにセットされたシャシーが頬を緩ませる。スロットルペダルを踏み込むと、豪快で心地良いV8サウンドを奏でながら加速していくのだ。これこそ真のGTSフィールで、これを待っていたオーナーは大満足に違いない。
GTSはバックスキンステアリングホイール、赤いアクセントが入ったGTS専用メーター、チェック柄のスポーツシートなどで、より一層スポーティな雰囲気となる。
また、スムーズな8速ATとエアサスペンションの快適性が加わったことで、ロングツーリングも苦にならない。
一般道路へ降りてワイン畑の続くワインディングロードでは、ポルシェが作ったオンロード専用スポーツSUVの本領を発揮する。2175kg(DIN)のボディにも関わらずローダウンしたシャシーのおかげで安定した姿勢で駆けぬける。さらにポルシェ・ダイナミック・スタビリティ・コントロール(PDCC)によるロール抑制システムのおかげで、全高1.67mのSUVに乗っているとは思えないほどソリッドな乗り心地で走りを楽しむことができる。
ただし、その卓越したV8パフォーマンスの結果、やはり環境負担はV6ツインターボよりも悪化している。燃費はWLTP計測で9.8L/100kmから11.4L/100kmに。二酸化炭素排出量は228g/kmから260g/kmと公表されている。
現時点の情報では日本への上陸が今秋で、価格はカイエンGTSが1682万円、カイエンGTSクーペは1752万円と発表されている。冒頭に述べたように1983万円のターボよりは300万円安い。夫婦でドイツのポルシェ博物館へ行ってもお釣りがくるほどの差である。