【比較試乗】「メルセデス・ベンツGLS vs BMW X7」7シーターはSUVの時代へ

7シーターであっても上質で力強い走りを披露

まずはGLSのコクピットへ。ドライバーの眼前に広がる大型のディスプレイや、タッチコントロール機能が備わるステアリングホイールなどは、いまはすっかりおなじみだが、センターコンソールに並ぶ4個の四角いエアベントや素材の美しさが際立つウッドパネルなど、いたるところにフラッグシップモデルらしい上質さが感じられる。

MERCEDES-BENZ GLS 400d 4MATIC

搭載されるエンジンは、最高出力330ps、最大トルク700Nmを誇る3L直列6気筒ディーゼルターボで、9速オートマチックを介して4輪を駆動する。さすがにこのクラスのSUVともなると車両重量は2.5トンを超え、このGLSは2590kgにも及ぶ。しかし、わずか1200rpmから最大トルクを発揮するこのエンジンは発進から余裕ある加速を見せ、常用する低回転域でも良好なレスポンスのおかげで、その車重を忘れさせてくれる。一方、必要とあらば4500rpmあたりまで力強く回転数を上げるなど、スポーティな一面も兼ね備えている。

MERCEDES-BENZ GLS 400d 4MATIC/48V電気システムを動力源に使用したアクティブサスペンション「E-ACTIVE BODY CONTROL」はオプションで装備可能。

一般道では多少ロール方向の揺れが気になることがあるが、乗り心地はマイルドで、速度が上がればフラット感はまずまずだ。

MERCEDES-BENZ GLS 400d 4MATIC

X7のコクピットは、GLSほど吹っ切れていないものの、セレクトレバーやスタート・ストップスイッチなどに使われるクリスタルや、ツートーンのレザーシートなど、ラグジャリーSUVとしての演出は、なかなか見事だ。

MERCEDES-BENZ GLS 400d 4MATIC/2列目は3人掛けのベンチシートで、スライドは左右独立で、一番後ろなら足が組めるほど余裕がある。

X7のエンジンも3L直列6気筒ディーゼルターボだが、最高出力265ps、最大トルク620Nmの数字はGLSに比べて少し控えめである。車両重量は2500kgとGLSよりも軽く、こちらも発進からスムーズな加速を見せてくれるし、アクセルペダルを深く踏み込めば強力なトルクが4000rpm超まで続く。ただ、直接乗り比べるとGLSのほうがより力強い印象だ。

MERCEDES-BENZ GLS 400d 4MATIC/GLSの3列目は左右独立のシート。3列目は前席下に爪先がすっぽり入り楽な姿勢が取れる。

一方、動きの軽快さはX7のほうが上手で、高速走行時のフラットさやコーナーでの安定感はBMWの面目躍如といったところだ。

BMW X7 xDrive35d DESIGN PURE EXCELLENCE

パッケージングは、ボディサイズに余裕がある分、GLS、X7ともに2列目はもちろん、3列目でも大人がさほど窮屈せずに座れるだけのスペースが確保される。厚みのあるクッションのおかげで座り心地もまずまずだ。

BMW X7 xDrive35d DESIGN PURE EXCELLENCE/オプションの「エグゼクティブ・ドライブ・プロフェッショナル」を装備すればスタビライザーを可変制御でき、快適性が向上する。

より広いのがGLSで、2列目はスライド位置によっては足が組めるほどニールームが確保される。3列目は前席の下に爪先がすっぽり入る分、ラクな姿勢が取れる。

BMW X7 xDrive35d DESIGN PURE EXCELLENCE

一方、X7の2列目は標準の3人掛けベンチシートに加えて、オプションで 「コンフォートシート」と呼ばれるセパレートシート仕様を選ぶことが可能だ。試乗車はそのコンフォートシートで、ゆったりと座ることができるうえ、3列目へアクセスするために、2列目を操作する必要がないのは便利だ。乗車定員は1名減って6名になるものの、その使い勝手の良さはとても魅力的だ。

BMW X7 xDrive35d DESIGN PURE EXCELLENCE/2列目シートは標準のベンチシートに加えて、オプションでセパレートタイプの「コンフォートシート」を選ぶことが可能。ラグジュアリーな雰囲気が堪能できるうえ、3列目へのアクセスも楽。乗車定員は1名減るがおすすめのオプション。

ラゲッジスペースは、3列目シート使用時こそさほど広くはないが、シートを収納することでより大きな収納スペースが手に入る。ここでもGLSのほうが奥行き、幅ともに余裕がある。

BMW X7 xDrive35d DESIGN PURE EXCELLENCE/3列目シート

スペースを優先させるならGLS、3列目を使う機会が多いならX7のコンフォートシート仕様、という選び方もあるだろうが、どちらもラグジュアリークラスにふさわしい上質さと力強い走りが楽しめるのは確か、コンパクトカーの世界だけでなく、ラグジュアリークラスにもSUVの人気は広がりそうだ。

フォト=安井宏充/H.Yasui (Weekend.) ルボラン2020年8月号より転載

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