本来であれば3月のジュネーブ・ショーで復活の狼煙を上げるはずだった高性能アルファの称号“GTA”。ジュリア・クアドリフォリオに対して約100㎏軽く、30psパワーが嵩上げされたそのパフォーマンスは、果たして我々をどんな世界に導いてくれるのか。待ちきれないアルフィスタに向けて、嶋田氏の妄想が炸裂する!
何よりもまず軽量化が効いているはず!?
これは手強いぞーーと思った。フルスロットルたった1発目からして、気分のレヴカウンターがレッドゾーン近くまで瞬時に跳ね上がる。まぁ、それもそうだろう。このマラネロ由来の2.9L V6ツインターボの元々の510psでさえ充分に速いのだし、シャープなレスポンスや、ドイツのライバルたちと違って回すほどに澄んでいく美しいサウンドに、僕たちはやられてしまうのだから。30psのエクストラを得た540ps仕様に不満を感じるわけがない。
何より、この加速だ。アクラポヴィッチ製のエキゾーストが奏でる、標準型のそれよりも乾いた、そして純度の高そうな音色が演出してくれるところもあるのだろうが、空気の底を突き破るようにして前へ進もうとするその勢い、どこまでも伸びていこうとする足かせのなさは、たった+30psとは思えないほどに増している。
GTAの“A”、つまりはAlleggeita=軽量化が効いているのだ。大物パーツは当然、ホイールハウスのインサートやサイドとリアのウインドーフレームといった細かいところまで、ありとあらゆる部分に軽量素材を用いることで、100kgほど削ぎ落とした1520kg。およそ2.81kg/psとなるパワーウエイトレシオを元に単純計算式するなら、100kg減はざっくり+35psほどに相当する。仮に標準型クアドリフォリオと車重が同じなら、+65psの575psを得ているのと同じことになる。加速が鋭さを増してるのが体感できるのも然り、である。
けれど、扱いづらさを感じさせないところがアルファロメオらしい。ピークパワーが高まった分の美味しさこそ回転の高い領域に上乗せしている感じだが、それは加速度的に膨らんで行くものであって、決して途中でボンと爆発するようなピーキーな放物線を描いてはいない。トルクに関してのアナウンスはいまだにないが、標準型の2550rpmで600Nmを沸き立たせる底力は、バンドこそごくわずか上寄りに移った気もしないでもないが、同じかそれ以上の働きっぷりを感じさせる。だから街中を流すような場面でも全く難儀することがない。GTAはメーカー謹製チューンドカーではあるけれど、あくまでもストラダーレ。扱いづらさは楽しさを阻害しがちだし、コースに持ち込んでもラップタイムを刻み続けにくい、ということを知っているのだ。
驚きはシャシーにもあった。標準型の持つ意外にもしなやかな乗り心地は、望外なことにさほど悪化していなかった。締め上げられたとしてもわずかな範疇で、コツコツした感触が伝わってくるのは1インチ大きい20インチのファットなタイヤによるものだろう。
でも、驚きはそこじゃない。前後とも50mm拡大されたトレッドの効果だ。11.7対1のステアリングギアレシオが生むクイックなフィールやノーズの動きの素早さが、軽く1段階はレベルアップした感じなのだ。確かに1.730というホイールベース/トレッド比は、もはやセダンじゃなくてスポーツカーの領域。操作に対して素晴らしく敏捷に反応してくれる、そのフィールが嬉しい。もちろんパワーの大きな後輪駆動だから、ペダル一発でテールを振り出すことは容易だ。そこは標準型クアドリフォリオと変わらない。が、セオリーどおりに走ったときのコーナリングスピードは、とてつもなく速くなっている。
それにはもちろん、ザウバーが開発を手伝った空力システムが生むダウンフォースも貢献しているはず。後付け感満点のリアフェンダーもやり過ぎとも思えるスプリッターも、間違いなく必要から生じたモノだったのだ。
ーーと、妄想は広がるばかり。GTA……乗りたい乗りたい。一度でいいから乗りたいぞー!