【海外試乗】「BMW アルピナ・XB7」新世代アルピナの旗艦SUVが完成

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半世紀以上に渡ってドイツBMWとの強固なパートナーシップを維持し続け、エクスクルーシブな高性能モデルでエンスージャストを魅了してきたアルピナが、これまでノーマークであった旗艦フルサイズSUVをいよいよ手掛けることに。今回はその最終検証の現場で垣間見た、驚異のパフォーマンスの片鱗を報告しよう。

最新フルサイズSUVの驚くべきポテンシャル

BMWのSAV(SUVと同義)シリーズ最高峰モデルである、X7のアルピナ ・バージョンがこの5月に完成した。注目はアルピナ独自の調律が施された4.4Lガソリン仕様V8ビターボ ・ユニットの最新バージョンで、その最高出力は同ブランドのフラッグシップサルーンB7を凌ぐ621psを放ち、最大トルクに至っては市販車としてトップレベルの800Nmを発生させる。

54mm径ツインスクロール式タービン2基を備えた4.4L V8直噴ユニットは、 ZF製8速スポーツATとフルタイム4WD、専用ピレリPゼロを介して路面にトラクションを伝達。

そのパワフルな心臓部がもたらすダイナミック性能は、0→100km/h加速の所要時間が4.2秒で、200km/h到達までわずか14.9秒。最高速度は290km/hと、これまでのSUVの常識を覆すような数値が並ぶ。

独アルピナのボーフェンジーペンCEOドライブによるプロトタイプ同乗試乗では最高速度が265km/hに達した。

一方、こうしたダイナミック性能を支えるべく、専用のエアロパーツや大径ワイドタイヤが与えられているにも関わらず、その佇まいはアルピナ独特のスポーティ&エレガンスを保ち、このままフォーマルなシチュエーションに乗り付けても失笑されることはないはず。もちろん、上質な素材で仕上げられたラグジュアリーなインテリアも、セレブなパッセンジャーに歓迎されることだろう。

4輪操舵機構や電制LSD、専用設定のエアサスなどの装備が、巨艦に高いスタビリティと旋回性能をもたらす。

幸運なことにリポーターは、このアルピナXB7の最終セッティングに同行することができた。もちろんテストドライバーは、アルピナ社CEOのアンドレアス ・ボーフェンジーペン氏である。フォーミュラ ・フォード欧州選手権を皮切りに、24歳の頃からモータースポーツに参戦してきた彼は、同年のドイツ選手権で3位を獲得するなど、デビュー早々にそのタレントの片鱗を見せつけ、その後もスパ・フランコルシャンやニュルブルクリンクなどでの24時間耐久レースまでこなせる、オールマイティなレーシングドライバーの手腕を身に付けている。

アルピナならでは上質なインテリアはレザー仕立て。ブルーとグリーンを配色したデジタルメーターや正規シリアルプレート、エンブレム付きiDriveダイヤルなどが専用装備だ。

アルピナのCEOに就任してからも、会社経営に関わるデスクワークのみならず、パワートレインやシャシーの開発に積極的に参画し、特に量産に向けてのヴァリデーションテストでは、必ず自身でステアリングを握って最終検証を行っている。最終プロトによるオンロードコース検証への同行を許されたのは、アンドレアスCEOのサービス精神の賜物なのだ。

この当時でBMWのX7はすでに市場投入されていたが、アルピナ ・バージョンの旗艦SAVは存在自体が未公開だったため、テストカーには厳重なカムフラージュが施されていた。しかもインテリアや装備類はスタンダードなX7のままで、計測テスト機材のケーブルがダッシュボードのあちこちから覗いているような状態だ。

エンジニアによるウォームアップが終えると同時に、アンディ(アンドレアス氏の愛称) とリポーターはカメラマンを従えてアルピナ本社を出発した。まずは近郊のカントリーロードでその乗り心地を入念にチェックしていく。ベースであるX7が 「空飛ぶ絨毯」 を標榜するだけに、XB7の快適さは疑う余地もないが、続いてワインディングに入ると、全長5m超の巨体を感じさせないほどの敏捷さでコーナーをクリアしていく。

さらにアウトバーンの速度無制限区間では、前後の間隔を確認してフル加速。フルデジタルのスピードメーターは、まるで壊れたかのように数字が上昇していき、車重約2.6トンの巨体が、あっという間に265km/hに達していたのだ。しかも驚くべきは、そのスタビリティの高さだ。まさに空気の壁に挑戦する速度域でも、言葉通りのオンザレール感覚。1時間程度のデモンストレーションランではあったが、アルピナの旗艦SUVに与えられたポテンシャルの片鱗を垣間見ることはできた。

3列シートの2列目は独立タイプに。ナッパレザー素材のほか仔牛革を用いたラヴァリナレザーも選べる。

このハイパーSUVは、さらなる開発行程を経ることになるが、今年の秋までには世界中の顧客に向けてリリースされる予定だ。

フォト=アヒム・ハルトマン/A.HartmannAG ルボラン2020年7月号より転載

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