欧州自動車メーカーの復活が本格化

田畑修
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ドイツメーカーやボルボがいち早く生産を再開。生産現場のあり方が大きく変わる可能性も

今年3月にいち早く都市封鎖(ロックダウン)や外出禁止を打ち出し、新型コロナウイルス(COVID-19)の終息に向けて動いた欧州各国。ドイツ、フランス、イタリア、英国などは感染スピードが速かったこともあり、自動車メーカーも次々と生産を休止し、ほとんどの生産ラインがストップすることとなってしまう。だが強硬ともいえる規制の効果は大きく、4月半ばからは終息のメドが見えてきたこともあって生産再開のニュースが日本にも伝えられた。

工場稼働を再開したフォルクスワーゲンは毎朝自宅で体温を測定し提出することを求めるという。

その動きを振り返ると、まず4月15日に最大手のフォルクスワーゲン(VW)が段階的な生産再開を示し、欧州だけでなく南アフリや北米、南米での生産再開の計画も明らかにした。17日にはボルボがスウェーデンの工場とオフィスを再開し、追ってベルギーと北米の工場も再開すると発表。アウディも同じタイミングで欧州各地の工場での生産を再開するとリリースし、28日にはVWが新型ゴルフを主体とするウォルフスブルグ工場での生産を再開したと発表した。

フォルクスワーゲンの工場では、多くの場所で写真のようなパーテーションが使用される。

一方で感染者と死亡者が早いペースで増加し、深刻な被害が伝えられたイタリアの状況も心配されていたが、FCAは4月27日にイタリアのセベル工場での生産再開をアナウンスし、フェラーリは5月8日からマラネロとモデナの工場でフル生産を開始すると発表。多くの犠牲を払ったイタリアは経済復興にも時間を要すると思われるが、主要産業である自動車生産の復活は欠かせない。日本にもファッションや料理などイタリアのファンは多く、社会全体の早期回復を望む人も少なくないはずだ。
フランスでもグループPSAが5月4日から段階的に生産を再開し、ルノーも5月に入ってフランス国内およびブラジル工場での生産を再開。パリを始め徹底した都市封鎖が長く続けられ、多くの人が不自由な思いをしてきたが、クルマの生産に関しても約2カ月の休止を余儀なくされている。
再びドイツに目を戻すと5月4日にはポルシェの生産が再開し、ダイムラーもラシュタット工場での生産を同じ日に再開。また、生産工場ではないが公開中止となっていたメルセデス・ベンツ・ミュージアムも5月9日にオープンし、BMWも4日にミュンヘンの本社に隣接するBMWワールドを再オープンさせている。
そして5月6日にドイツのメルケル首相が外出規制や飲食店を含む全店舗の再開を許可すると宣言。当初からPCR検査件数を積極的に増やし、感染率と死亡率を低く抑えたことが高く評価されたが、他人との接触制限は6月まで継続すると慎重な姿勢は崩していない。
こうして再開が進む欧州メーカーの生産工場だが、従業員の安全を守るための体温測定、消毒設備の充実、近接作業を防ぐための可動パーティーションの設置、清掃・消毒の徹底など、これでもかといえるほどの対策を施している。生産効率に影響が出る恐れもあるが、人命重視、健康優先は徹底されており、こうした対策を長く続ける必要があるだけに自動車生産現場のあり方が大きく変わっていく可能性も高い。
テレワークでは対応できない生産現場だけに完璧な対策を完成させるにはまだ時間が必要だが、そこにまた新たな生産技術やビジネスやが生まれる可能性もある。日本を含め、1年後には世界の自動車生産体制はどんな進化を遂げているのか。しっかり見届けていきたい。

ルボラン2020年7月号より転載

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