【国内試乗】「ホンダ・アコード」移動を楽しめる大人のセダン

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アコードは1976年に発売以来、長きにわたり愛されてきたホンダを代表するセダン。世界の120を超える国と地域で、累計2000万台が販売されてきた実績がある。10代目では、今の時代に自信を持って積極的に選ばれるセダンを目指して開発されたという。果たして、その仕上がりはいかに?

ホイールベースの延長で後席の快適性が向上

SUV人気に押され気味とはいえ米国では年間約27万台、中国でも約20万台が売れているホンダ・アコード。一方で日本では2018年が1902台、2019年が1056台と、9代目のモデル末期だったとはいえ存在感を示せない状況が続いていた。かつて日本仕様のアコードが属した中型セダンのカテゴリーをインサイトに明け渡し、上には上級セダンのレジェンドがあるなかで、アコードの位置づけが分かりにくくなっていたのも要因のひとつだろう。

北米および中国向けには1.5Lおよび2Lのガソリンターボ車もラインナップされるが、日本仕様は2Lアトキンソンサイクルエンジン+2モーターのハイブリッド車のみとなる。

10代目となった新型アコードは米国デビューが2017年7月なのでやや目新しさには欠けるものの、ワイド&ローのデザインはなかなかにスタイリッシュ。4900mmの全長はトヨタ・カムリとほぼ同じでマツダ6セダンより35mm長く、2830mmのホイールベースはカムリのほうが5mm短いがマツダ6とは同じ。全幅はアコードのみ1860mmと20mmだけ幅広く、そのぶん室内幅も広くなっている。

大きく寝かされたリアウインドーがスタイリッシュさを印象づける。18インチホイールにはタイヤ内部の共鳴を抑える消音機構を装備。

ハイブリッドEXのみのワングレード設定ながら通信機能付きカーナビやサンルーフ、前席パワーシート、前後席シートヒーター、アダプティブダンパーなど必要とされそうなものはほとんど標準装備。ちなみに日本仕様車はタイ工場製で登録上は輸入車となる。

前後席シートヒーターを備えた本革シートが標準装備となるインテリアはブラック(写真)とアイボリーが選べる。

5ドアハッチバックかと思わせるクーペ風フォルムはインサイトと共通で、後席のフットスペースはホイールベース延長の恩恵を受けてかなり広くなっている。一方でシート下にIPU(リチウムイオンバッテリーと一体化された制御機構)が搭載されるせいか着座位置は前席よりやや高めで、クーペ風フォルムもあってヘッドスペースは標準レベル。とはいえそのぶん前方の見通しはよく、快適に過ごせる空間となっている。

i-MMDからe:HEVに改名されたハイブリッドシステムはエンジンがほぼ発電に専念し、主にモーターで前輪を駆動する方式は従来通り。高速巡航時にはエンジンと駆動輪がクラッチでつながれてエンジン駆動となることもあるが、これも燃費向上のための機能で、エンジンが加減速に関わることはほとんどない。最大トルク315Nmのモーターを駆動する電力を供給する2Lエンジンはあくまでも黒子だが、走行時の違和感をなくすチューニングに力を注いだことで、アクセル操作に対するエンジン音の変化を含め、リニアで一体感のある運転が楽しめる。

アクセルの踏み始めから瞬時にトルクが立ち上がる感覚はモーター駆動ならではのもので、パドルシフト(減速セレクター)を駆使して積極的に走るのも楽しい。スポーツモードを選べばアクセルレスポンスが鋭くなるのに加え、アダプティブ・ダンパーの減衰と電動ステアリングの操舵感もスポーツ方向に振られるので、緩急自在のドライビングを堪能できる。乗り心地や快適性が優先されるセダンではあるが、この大きなボディをスポーツセダン的に振り回すのはなかなかに痛快だ。そして人を乗せたときや、ゆったり移動したいときはノーマルもしくはコンフォートモードを選べばいい。

燃費計に示された平均燃費は19.21km/Lあたりを行ったり来たりしていたが、1560kgのボディでこれだけ走れば不満はないだろう。室内の広さや乗り心地のよさだけでなく、意のままに走れるセダンを望む人にはうってつけのクルマといってよさそうだ。

トランク容量は573Lと十分で、分割式ではないがシートバックを倒せば長さのあるものも積み込める。

フォト=小林俊樹/T.Kobayashi ルボラン2020年6月号より転載

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