尾道が位置する備後地方のデニム産業の魅力発信と産地の活性化、尾道のまちの魅力を世界に発信することを目的とした「尾道デニム」。機械加工では作り出すことのできない、仕事や日々の生活の中で刻まれた皺や自然な色落ちなど、尾道デニムは全てが一点ものだ。
※この記事はル・ボラン2020年3月号からの転載です。掲載商品は現在販売していないものもあります。
尾道デニムのデニム
尾道は、尾根の道から名づけられたといわれ、山に囲まれた地形は所々に古寺が点在し、散策が楽しい。尾道大橋を遠くに臨みつつ、眼下に広がる市街地は海に向かって開かれ、自然の恵みや海上交通で栄えた地であることが一目瞭然だ。いまや現代アートの聖地となった瀬戸内からの若者や外国人観光客でも賑わう。古い街並みを残し、落ち着いたカフェや洒落た雑貨店がひっそり佇む。そんな商店街の一角に尾道デニムショップがある。
「観光を手段に事業と雇用を創出する」ことを目的に設立した会社、DISCOVERLINK Setouchi( ディスカバーリンクせとうち)。その事業のひとつが「尾道デニムプロジェクト」だ。同じ型のデニムを様々な職業の人がワークパンツとして穿き続けることで、職種によって異なるデニムに求める機能性が徐々に浮き彫りに。
店内中央を占める細長いカウンターにはユーズドジーンズがずらりと並び、そのタグには、漁師や大工、住職やトリマーなどさまざまな職業が記されている。それは尾道に暮らす職人がそれぞれの仕事で穿き込むことででき上がった自然のエイジングなのだ。
備後地方のデニムの品質と尾道の魅力を広く伝えるため、2013年に活動は始まった。賛同者には新品のジーンズが各2本支給され、作業着や生活着として1週間穿いたものを回収洗濯後に戻し、1年間繰り返す。こうした手間と時間をかけた世界初の試みは、まったくの未知数であり、当初は通販も検討したが、街興しとして尾道に来てほしいということから対面販売のみに絞った。そんな手探りで始めたところ、反響は大きく、国内ばかりか海外からも多くのリピーターが訪れるそうだ。
「尾道デニムプロジェクト」の一弾として誕生したワークパンツがこちらの「ODP001」。新品価格16,500円(税込)。
職業や個人によって当然、色の抜け具合やフォルムも異なる。手にすればそれぞれの仕事の世界が思い浮かぶようだ。そんな職人へのシンパシーや憧れとともに、尾道の日常に触れることができる価値ある1本だ。訪れた際にはぜひ立ち寄ってみてほしい。
さらにこうした活動を通してフィードバックした、作業着としてのノウハウを注ぎ込んだオリジナルジーンズもある。
商品写真のユーズドは、壁貼り職人が1年穿き込んだ色落ち見本で、尾道デニムは多種多様な働き方によって生まれた全て一点ものとなる。ユーズドに関してはその一本一本で異なる表情と、それぞれに刻まれた物語を伝えるために、旗艦店「ONOMICHI DENIM SHOP」にて対面販売に限定している。
購入したODP001は、柔らかなデニムに通常のポケットに加えて大型ポケットを左右に備える。これが思いのほか使い勝手がいい。大きめのスマホも収納でき、座った状態でも手が入るのでデスクワークや運転にも便利だ。やがてライターならではのユーズドデニムが仕上がるのがいまから待ち遠しい。
●問い合わせ先:ONOMICHI DENIM SHOP/TEL:0848-37-0398 http://www.onomichidenim.com/