【国内試乗】「ホンダ・フィット」激戦のコンパクトカー市場に満を持して投入

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2001年に登場して以来、グローバルで750万台以上、日本国内で約268万台を販売したホンダが誇るコンパクトカー「フィット」。約6年半ぶりに全面改良が行われたので、その出来映えをお伝えしよう。

開発キーワードは「心地よさ」

ベーシック、ホーム、ネス、リュクス、クロスターの5グレードが用意される新型フィット。どう違うのかというと、パワートレインはそれぞれハイブリッド(e:HEV)とガソリンがあるが、主にインテリアや装備の違いに限られ、価格差はあるものの上位下位といったグレード差をあまり感じさせないラインアップとしている。

前後ピラーとルーフ両端、ドアミラー、ドア下部にライムグリーンを配したアクセント・ツートーンカラーはネス(NESS)専用色。

どのグレードを選んでも視界のよさ、室内の明るさ、広い後席を含む居住性のよさは共通で、たしかに開発キーワードの「心地よさ」は国産コンパクトカー随一といっていいだろう。バネの構造を見直したというシートも腰の据わり感がよく、特に本革とファブリックを組み合わせたリュクスのシートは、表皮の張り感も手伝ってドライビングポジションが決めやすく快適性も高い。

4気筒1.3Lガソリンエンジンは先代とほぼ同じ仕様でスペックは98ps、118Nm。

一方で運転中に常に触れるステアリングホイールが、e:HEVのホームとリュクス、1.3Lガソリンのリュクスは本革巻きながら、それ以外はウレタンしか選べないのはちょっと残念。また、試乗時は弱い雨だったが、1.3L車は間欠ワイパーの速さ調整ができないのも気になった。走行性能に差がないぶん、購入するときはグレード別装備をじっくり検討してチョイスすることをお勧めする。

1.5Lエンジンとモーターを組み合わせたe:HEVは109ps、253Nmを発揮。

クロスオーバー風のクロスターの最低地上高が25mm高められている以外、シャシーやサスペンションは全グレード変わりなく、フットワークはの差は感じない。キモを押さえて剛性感を高めたボディに加え、サスペンションもよく動くのでワインディングでペースを上げても接地感は変わらず、手応えのある走りを楽しめる。

ネスはボディカラーに合わせてインテリアも各部にライムグリーンが配される。フラットでテーブルのようなダッシュボード上面がスッキリとした視界確保に貢献。TFTメーターのサイズは控えめながら視認性は良好。

新たにe:HEVと名付けられたハイブリッド車は大半はモーター駆動で走り、高速道路の巡航時などエンジン走行のほうが効率のいいときのみエンジンと車輪がクラッチでつながってエンジン駆動となる。従来のi-MMDと同じ制御だが、その切り替わりはほとんど体感できない。タコメーターをよく見ているとアクセルの踏み込みに対する回転の上下がちょっと変わる程度だ。

モーター駆動とはいえアクセルの踏み込みに対してエンジン回転も高まるので、感覚はピュアEVとは異なるが、直線的に高まるトルク感はモーターならでは。一般路、高速道路を問わず爽快な加速感を味わえる。スペースが限られるフィットにi-MMDと同等のシステムを搭載するのはかなり苦労したようだが、電力の昇圧技術を高めたことでコンパクト化しながらもトルク感は損なわれておらず、それが力強い走りにつながっているという。車載燃費計の数値も一般路では20km/Lを超え、高速道路をハイペースで走っても18~19km/Lをキープしていた。

1.3Lガソリンはアクセルを踏み込んだときのトルク感こそe:HEVにかなわないが、通常走行で不満はない。燃費計の数値は16~18km/L程度で、元気良く走るとやや悪化するものの、CVTの制御もリニアで非力に感じることもなく実用上は十分だ。だが35万円程度の価格差を燃料代で取り戻すのは難しいとしても、スムーズかつトルクフルな走行感覚と装備の充実度を秤にかけると、筆者はe:HEVを選びたくなる。短い距離を走るなら1.3Lで十分だが、ロングツーリングもストレスなく楽しみたいならe:HEVがお勧めといえそうだ。

フォト=小林俊樹/T.Kobayashi ルボラン2020年5月号より転載

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