Twitterでもイベント情報が得られる今日このごろ
2020年1月19日(日)、バスファン個人が主催する”奈良交通HU435号車で行く観光地訪問ツアー“が開催されました。
退役の時が迫る前後扉車に乗り、奈良市内の観光地と奈良交通平城営業所、北大和営業所を巡りながら撮影するというツアー。
このツアーには高校2年生から中年まで25名の参加者があったのですが、募集はツイッターで行われたということに驚きました。とても今どきだなと。
当日集まった参加者は、Twitter上では知り合いではあるけれど顔を合わせるのはほとんどの人が初めてであり、アカウント名しか知らない間柄だとのことでした。
本名、住所、電話番号も知らない相手だし参加費用も当日現金で回収することになっていたため、本当に集まってくれるのだろうかと主催者の速水優哉さんはドキドキしながら集合時間を迎えたそうです。それはそうでしょう、キャンセルする人が多かったら差額自己負担が甚大だからです。しかし遅刻した人はいたもののドタキャンはなかったので、ホッと胸をなで下ろしていました。こういう趣味の世界の集まりではたとえ本名を知らなくても変なことをするひとは希なのかもしれませんね。
ちなみに私がこのツアーを知ったのは偶然。バスの定点観測をしているといかにもバスファン的な人たちが集っているのが見えたので、興味津々で主催者と思しき速水さんに声をかけたところ飛び入り参加も歓迎だと言ってくださったので喜んで参加させてもらったという次第。
実に今風の感じですが、Twitter上にはマニアックな情報が様々流れており、イベント情報などもそこで得られるそうなのです。私も一応アカウントは持っているのでこれからはマメにチェックしようと思いました。
また車内で何人かに訊いてみたところ、奈良交通沿線に住んでいる奈良交通ファンだけでなく、県外在住の別のバス事業者ファンも多かったし、奈良交通バスに乗ること自体当日が初めてという参加者もいました。ちょっと意外。なぜなら、たいていのバスファンは地元主義だからです。
でも共通点はありました。それは“古いバスが好き”だということ。型式だと”KC-代”以前の平成6年規制適合車あたりまで。事業者ごとの個性があった時代の車両です。“国土交通省認定標準仕様ノンステップバス”のステッカーが車体に貼ってある、車体色以外に差異がほとんどないバスが増えた昨今、この日撮影したような古いバスが揃っている事業者は奈良交通くらいしか残っていないからでしょう。
ツアーは、JR奈良駅西口で参加者を乗せて出発。奈良公園、猿沢池横で興福寺をバックに撮影し、奈良交通平城営業所、北大和営業所で撮影会をして近鉄奈良駅・JR奈良駅西口に戻って解散という行程でした。
社内で交わされるバスの話は濃すぎて正直ついていけませんでした。興味がないというか、日ごろウォッチしていない事業者のことはさっぱりで。でもそんなちんぷんかんぷんな情報のシャワーを浴びているのが楽しかったりもします。
それでは、当日見た、乗った、撮影したバスたちをご紹介しましょう。
“HU435”とはこんな車両
1995年製日野ブルーリボン前後扉車(U-HU2MPAA)。奈良営業所には残り4台。ツアーで使われた”奈良22き・435”のナンバープレートは奈良交通の現存営業車で最も古い。全社で6台しか残っていません。
前後扉車はもはや風前の灯火
今回のツアーのきっかけにもなった前後扉車は、さすがの奈良交通でも退役へのカウントダウンが始まっていて、2020年末までには全社退役が予想されています。
私は三扉車が好きなのでそちらの退役に気を取られていたら、実は前後扉車の方が先になくなってしまいそうなことに今さら気づいたので早く乗って記録しておかないと!と、思い始めています。
そういう点で今回飛び入り参加できたのは良かった。
2020年3月末時点では残念ながらこの435号車も含めて退役、残った前後扉車と三扉車はこれだけになってしまいました。
三扉車に関しては、新車で導入し廃車まで使い続けた事業者が保有する三扉車は奈良交通以外では関東バスに1台残っているだけなので、そんな貴重なバスは全国で15台しか残っていないことになります。
日本の高度成長期に駅と団地(住宅地)の間を結び、鉄道駅で大勢の通勤通学客をできるだけ早く降ろし、できるだけ早く乗せるために生まれた三扉車は車両遺産というだけでなく日本の文化遺産だと思っています。日本一導入していた奈良交通にはぜひ保存しもらいたいと思います。
同社はボンネットバスを動態保存してイベントに活用しているので、ここに前後扉車と三扉車も追加して欲しいと切に願っています。
(取材・写真・文:大田中秀一)