2019年12月に発表され、2020年2月から発売されているヨコハマのクロスオーバーSUV向けタイヤ「BluEarth-XT AE61(ブルーアース・エックスティー・エーイーロクイチ)」。この最新サマータイヤを、モータージャーナリストの斎藤聡氏がリポートする。
優れたハンドリングと静粛性を備えたクロスオーバー専用タイヤ
いま人気のクロスオーバーSUVは、スタイリッシュなのはエクステリアデザインばかりでなく、足回りのセッティングもぐっとオンロードに重心を置いた味付けになって、快適性が重視されるようになっている。
そんなクロスオーバーSUVにピッタリのタイヤとしてヨコハマが開発したのがブルーアースXTだ。
SUV用タイヤでありながらブルーアースブランドとすることで、省燃費性能も実現。タイヤグレーディングでは転がり抵抗「A」を得て低燃費タイヤとしての性能を満たし、ウェットグリップはグレーディング最高評価の「a」を獲得。低燃費タイヤとしても優れた性能を備えている。
タイヤ自体も乗用車用サマータイヤそのままのデザインで、4本の縦溝を基調にしたリブデザインで、4本の溝に挟まれた3本の太いリブ(ブロック列)と左右のショルダーブロックで構成されている。またショルダーブロックの横溝はブロックを貫通させず、高剛性を実現することで、高いハンドリング性能を発揮する。
静粛性の面では、溝が接地するタイミングを分散させてタイヤが路面に接地する際に発生するノイズを抑制。また横溝の間隔を5種類にして最適な配列にすることで、パターンノイズの低減も図られている。
このほか、重心の高いSUVで発生しがちな偏摩耗をマウンドプロファイル(トレッドの断面形状を凸型)にすることで対応。ロングライフ性を高めている。また接地面中央の接地長を長く取ることで、直進安定性も高めている。
コンパウンドは、ナノブレンドゴムで複数のポリマー(≒ゴム)に2種類のシリカを配合したもの。ヨコハマ独自のA.R.T.Mixingによってウエット性能と低燃費性能を高次元で両立させている。
試乗してまず感じたのは、走りだしが軽いことと、滑らかにタイヤが転がっていくこと。走りだしの軽さは、転がり抵抗の少ないタイヤの特徴ともいえるもの。タイヤグレーディングの転がり抵抗Aが性能として感じられるということだ。
しかもタイヤのトレッドデザインからも想像できるように、横溝が極端に少ないので、タイヤの転動感が滑らか。ちょっとダンピングの効いた引き締まった印象の乗り味と相まって、スムーズに軽快にタイヤが転がっていく印象だ。
最初にトレッドデザインを見た時、コンフォート系なのかな? と思ったが、よく観察すると、アウト側ショルダーブロックにサイプがなくリブ(ブロック)剛性が高そうだ。コンフォート系というよりもハイパフォーマンスタイヤのフェースに近い。滑らかにタイヤは転がっていくが、しなやかというよりは張りのある乗り味で、引き締まった印象もある。
高速道路を走らせてみると、コンフォート系スポーツタイヤくらいの引き締まった乗り心地。ハンドルを切り出した時の応答も比較的シャープで切れ味の良さがある。
今回はシトロエンC5エアクロスに装着したが、もともとソフトな味付けの足回りで乗り心地はすこぶる良好だ。多少ハンドルを切り足した時でも応答が良いのでスーッとノーズが向きを変えてくれる。
かろうじて過敏というほどではなく、シャープといえる範疇だが、マッチングはもう少し引き締まった味付けの足回りを持ったSUVのほうが良いのではないかと思う。
そういいながら、ある程度の距離を走ってクルマの動きに慣れてくると、軽快シャープなステアリング応答が楽しくなってくる。ソフトな乗り心地なのに身のこなしが軽くフットワークがいい、そんな印象だ。
全体の印象としては引き締まったスポーティな味わいで、軽快な乗り味が特徴のタイヤだ。また転がり抵抗が少なく走りだしが軽い。滑らかなタイヤの転がる感触も転がり抵抗の少なさからきているものが少なくないはずだ。
もう一つ、このタイヤで注目しておきたいのがタイヤグレーディングでa評価のウェットグリップだ。今回は試すことができなかったが、a評価のウエットグリップは、雨降りの路面でも安心感をはっきり感じるレベルのグリップ性能や手応えがある。雨の日の走りやすさ、安心感はこのタイヤの大きな魅力の一つと考えていいと思う。
シティ派のクロスオーバーSUVにピッタリのタイヤだと思う。
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取材協力 横浜ゴム https://www.y-yokohama.com/product/tire/