欧州メーカーの世界販売、わずかに増加

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フォルクスワーゲンとBMWが過去最高記録更新。フランス勢はやや苦戦

中国の新車販売減少に加え、新型コロナウイルスの影響で世界の自動車メーカーの業績も見通しにくい状況となりつつあるが、欧州メーカーの2019年実績もやや明暗が分かれた形だ。過去最高の1097万4600台を販売して世界トップの座を守ったフォルクスワーゲン・グループ(VW)は伸び率も2018年の0.9%から2019年は1.3%と上向き、まずは安泰といったところ。北米ではやや台数を減らしたものの、VWにとっての巨大市場である欧州では3.9%増、需要減に見舞われている中国でも0.6%増と横ばいを保ち、同じく前年比プラスで世界2位となったトヨタ・グループと並んで強みを見せつけた恰好だ。

ダイムラー・グループは、メルセデス・ベンツ車は前年比0.7%増と横ばいながら商用車部門がやや不振でわずかにマイナスとなる。すでにダイムラーは2019年の売上高や利益も発表しているが、EBIT(利払い・税引き前利益)は大幅に減少。ディーゼル排ガス不正の罰金や修復費用が上乗せされたことで2019年はやや厳しい状況となったようだ。
BMWグループは好調を保ち、世界販売台数は9年連続で過去最高を更新。SUVブームに押されてXモデルの販売が伸びたことでBMWブランド車は2%増。ミニはニューモデル効果が薄れたことで4.1%減とマイナスとなったが、それを埋めるようにロールス・ロイスが25.4%増と大きく伸びて底上げに貢献。Xモデルも含めて高価なクルマが好調なだけに、追って発表される2019年決算も期待できそうだ。ちなみにBMWはハイブリッドを含む電動化車両の販売台数も公表しており、2.2%増の14万5815台をデリバリー。グループ内での比率は5.8%程度だが、今後この比率は高まっていくものと思われる。

BMWグループの世界販売台数は9年連続で過去最高を更新。SUVの販売台数が伸びたことが大きく、またロールス・ロイスも若年層からの人気が高く、25.4%増と大躍進した。

一方でやや厳しい状況となっているのがフランス勢だ。昨年末にFCAグループとの経営統合を正式決定したグループPSAはややブレーキがかかり、10.0%減と6年ぶりのマイナスとなる。中国での販売減が大きく響いており、主力市場の欧州でもマイナスとなっている。DSブランドは好調ながら、台数の多いプジョー、シトロエンに加えてオペル/ヴォクソールも減少している。
ルノー・グループは欧州では前年比増となったものの、やはり中国や中東での落ち込みが影響してマイナスとなる。中国ではプレミアムブランドの強さを誇示したドイツメーカーに対し、フランス勢は景気後退の波をもろにかぶってしまった感じだ。また、重要な市場である中東がイランの政情不安により後退してしまった影響も小さくないようだ。
ボルボカーズは、台数規模は他の欧州メーカーにおよばないものの、1割近い伸びで創業以来初めて70万台を突破。ドイツメーカーと同じく中国でも18.7%増と好調を保ち、北米も10.1%増、欧州も7.2%増と、SUV人気を追い風に台数を伸ばしている。すでに2019年決算も公表しており、売上高が8.5%増、EBITが0.8%増と増加傾向を維持している。
2020年に関しては中国の景気後退を見込んで各社とも控えめの予想をしていたが、さらに新型コロナウイルス蔓延という想定外の事態が見通せない状況を招いている。この事態が自動車メーカーの動きにどう影響するのか。この先も目が離せない状況が続くことになりそうだ。

ル・ボラン2020年4月号より転載

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