次期Sクラスとウワサされる
メルセデス・ベンツが昨年のフランクフルト・ショーで提案したヴィジョンEQSに試乗する機会を得た。このモデルはSクラスに相当するラグジャリーBEVで、EVA2と呼ぶEV専用プラットフォームを採用。VWのMEB同様にサイズが可変式なのが特長で、ボディは全長5.3m、全幅2.08m、全高1.43m、ホイールベース3.26mと、現行Sクラスよりひと回り以上大きい。
チーフデザイナーのゴーデン・ワーゲナーはLEDが今後の自動車デザインの鍵を握ると語るが、ヴィジョンEQSはまさにその象徴だ。
伸びやかなフォルムのEQSはブラックとシルバーの2トーンカラーに包まれ、その境界線をLEDライトがグルリと囲う。車両に近づくとセンサーによってドアが開き、広大なキャビンに招かれる。
床下のバッテリーによりフロアはやや高めだがヘッドルームには十分余裕があり、さらに巨大な面積のウインドーやグラスルーフにより車内の採光性はきわめて高い。
オフホワイトの巨大なダッシュボードはリサイクル素材で、各コンテンツやインフォメーションはそこをスクリーンにして照射される。インフォテイメントは次世代のNTG7.0だ。
運転席は、まさにスペースシップのコクピット。メーターパネルは存在せず、ウインドスクリーンにまで伸びた白いリサイクル素材製のダッシュボードに、COMANDから進化した次世代のインフォテイメントシステム、NGT7.0によって必要な情報がルーフから照射される。また、速度や地図などドライバーに必要な情報はARヘッドアップディスプレイで確認できる。飛行機の操縦桿のように上部がカットされたステアリングは小さく、エアバッグはおそらくダッシュボードから展開されるはずだ。細いAピラーにより前方視界は良好、後方もリアビューカメラでしっかりと確認できる。
ブラックガラスグリルの奥には計100個のLEDがホログラフ効果で散りばめられスターダストのように演出。リアライトは計229個の小さなスリー・ポインテッド・スターで構成され、後方視認性の向上にも貢献する。
試乗時のEQSは完全なコンセプトカーの状態で、キーもスターターボタンも存在しない。始動は助手席のエンジニア任せで、P、R、N、Dのドライブセレクトボタンはセンターコンソールのカバー内部に隠されていた。将来的なパワートレインは前後アクスルにフランジされた2基の電気モーターで、システム最高出力は350kW(476ps)、最大トルクは760Nm。0→100km/h加速は4.5秒、最高速度は200km/hに達する。バッテリー容量は100kWh以上で、最大航続距離は700kmを目指しているという。
世界に一台しか存在しないクルマゆえ、この日は最速で60km/hの体験試乗に止まったが、それでも4ドアビッグクーペの走りは優雅で荘厳。まさにBEVのSクラスの名に相応しいものだった。