もはや直線番長ではなくコーナリングの貴公子だ
それでいて、最新のアメリカンスポーツは刺激だけを追求したモデルではない。100km/h時のエンジン回転数は、コルベットが8速1300rpmでカマロは9速1200rpmと低め。なおかつ、両エンジンともアクティブフューエルマネージメントを採用。一定の速度を保つといった負荷が少ない場面では4気筒が休止され燃料消費を抑え、CO2の排出削減も実現。その制御はスムーズであり、走りに違和感はない。
サスペンションは、GM得意のマグネチックライドコントロールによりダンパーの減衰力を可変制御する。コルベットの設定は走行モード「ツーリング」でもガチガチに硬められているが、ストロークに余計なフリクションがない。荒れた路面を通過すると、タイヤがドカドカという大きめの打音を発するのに不快な突き上げとは無縁でいられる。ステアリングの手応えもかなり軽めなので、路面状態さえ整っていればラグジャリーな側面さえ感じさせるほどだ。
CHEVROLET CAMARO SS/シボレー・カマロSS、比較試乗で選出したのはシボレー・カマロSSだ。アメリカンスポーツ代表のコルベットも魅力的だが、同じエンジンを搭載しながら価格が現実的なところにヤラれてしまった。たとえば、GRスープラRZと比べても値ごろ感がある。
ただ、高速域の直進時は手応えが頼りなさに結びつく。路面から左右輪に異なる入力があると、ボディが横揺れを起こすのでなおさらだ。走行モード「スポーツ」を選べば手応えに重さが加わるので舵の落ち着きが増してくる。
ステアリング操作に対する応答性は、シャープさを演出することなくダイレクトさを重視。つまり、ハンドリングはドライバーの操作しだいとなり、コーナー進入時にステアリングをズバッと切り込めば、長いノーズがズバッと向きを変えるわけだ。
カマロの設定は、走行モードが「ツーリング」ならガチガチというほど硬くない。タイヤの打音やロードノイズもコルベットよりも抑えられているので、第一印象からフレンドリーに思える。ステアリングの手応えは適度に重く、直進性も優れているため安心して高速域のロングランが楽しめる。
CHEVROLET CAMARO SS/シボレー・カマロSS
走行モードが「スポーツ」なら、コルベットと同様にハンドリングはダイレクト。軽いとはいえないLT1エンジンはボンネット下の後寄りに搭載されているので、コーナリング中のフロントヘビー感は一切ナシ。LSDを標準装備するだけに、コーナー立ち上がりでもエンジンのパフォーマンスをムダにすることがないのだ。
すでに本国では、ミッドシップの次期型コルベットが発表されているが、現行型の方に〝らしさ〟がある。一方のカマロだって、もはや直線番長ではない。