【比較試乗】「ランドローバー・レンジローバー・イヴォーク vs ボルボ XC40 vs ジャガー Eペイス vs BMW X2」デザインコンシャスなコンパクトSUVはいかがですか?

気分よく乗れるFFのBMW

今回のように複数台を集める企画では、BMWだけがエンジンを縦置きにする後輪駆動の場合が多かったのもいまや昔の話。X2は横置きエンジンの前輪駆動ベースなので、今回の4台のエンジンレイアウトはいずれも同じである。そもそも4輪駆動なんだし、縦置きか横置きかFRベースかFFベースかなんてことに興味がある人はほとんどいないのかもしれないけれど、エンジンとトランスミッションが直列に繋がっている縦置きはいってみれば“平屋”、エンジンの下にトランスミッションがぶら下がっている横置きは“2階建て”だから、前後重量配分や重心高は異なるし、当然のことながらそれは操縦性や運転フィールに大きな影響を与える。

BMW X2 M35i:ヘッドライトやフォグランプ、キドニーグリル、ミラーキャップは、専用のセリウムグレーを採用するなど、エクステリアには、Mパフォーマンスモデルの専用装備を組み合わせることで、ダイナミックさを際立たせている。

それでも継続は力なりというか、ずっと横置きのクルマを作ってきたメーカーの中には、長年の経験と実績から縦置きに勝るとも劣らないハンドリングを確立しているところもある。一方で、ずっと縦置きを作ってきたメーカーが横置きを作るというのはなかなか難しい所行らしく、メルセデスやBMWも最初の頃はなんだかピンとこなかった。ところが現行のAクラスやこのX2などはついにまったく違和感なく気分よく乗れるようになった。

XC40もイヴォークも、車検証によれば前軸重のほうが後軸重より300kg以上も重いのに、X2は230kg。さすがに50:50は無理だったようだけれど、なんとかしてそれに近づけようとした努力の跡が窺える。実際、フロントの重さは他のクルマほど感じないし、ステアリング操作に対する車体の初期応答などは後輪駆動のBMWにちょっと似ている。
試乗車はM35iというもっともスポーティなモデルで、コツコツと突き上げはあるしエンジン音もずいぶん勇ましい。18iや20iのスタンダードモデルのほうがきっとX2の真価を味わえると思う。東京に暮らす人間にとっては機械式駐車場にも入る1535mmの全高も嬉しい。

日常から解放されたいアナタにオススメ

この4台の中で、もっとも快適だったのはXC40だった。“快適”というのは、乗り心地のみならず室内の居心地とか操縦性とか動力性能なんかを全部ひっくるめた印象である。ナーバスになったり気構えたり慎重になったり躊躇したりすることがただの一度もなかった。最初から最後まで平常心というか、平常心よりもさらに血圧が安定しているような気分だった。

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室内を見渡すと、目に入ってくるものがどれも柔らかい。ダッシュボードの造形やドアトリムのデザインやメーターのグラフィックなどは、決して華美ではなくシンプルでいながらどこか上質感のような雰囲気があって、そして柔和なのである。シートに腰を下ろした途端に居心地のよさを感じるクルマはそんなに多くない。
運転を始めると、当然のことながら手足を動かさなくてはならないのだけれど、居心地は相も変わらない。もちろん、運転行為に伴う緊張感は持っているものの、リラックスもしているという妙な心境である。その理由のひとつは、おそらくステアリングやペダルの操作荷重、車両側の反応速度が揃っているからだろう。ステアリングやペダルは軽すぎず重すぎず、エンジンのレスポンスやコーナリングフォースの立ち上がりは早すぎず遅すぎない。トルクの出力特性も線形だから、加速感はあくまでジェントルだ。こうした一連の所作が極めて自然でリニアなので、緊張感は必要最小限に抑えられ、リラックスした気持ちと同居できるのだと思う。
イヴォーク並みのオフロード走破性は持ち合わせていないし、Eペイスほどスポーティでもなければ、X2のようなコンパクトなボディでもない。それでも、普通の人が普通に運転する常用域での乗り心地や操縦性や動力性能や快適性は無難どころかかなり高いレベルでそれぞれ成立している。とげとげしい日常から解放されたいと思った時にドライブするにはうってつけの、マッサージチェアのようなクルマである。

フォト=郡 大二郎/D.Kori ル・ボラン2019年9月号より転載

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