490.484km/hの最高速を記録
ブガッティ・オートモビルズはこのほど、シロンの派生型プロトタイプで最高速チャレンジを実施。時速300マイル(482.80km/h)の壁を打ち破るとともに、304.773マイル(490.484km/h)の最高速を記録マークし、ドイツの技術検査協会「TÜV(テュフ)」によって正式に認定されたことを発表した。
最高速チャレンジは8月2日にドイツ北部のテストコース、エーラ・レッシェンで行なわれた。ステアリングを握ったのは、ブガッティのテストドライバーでありル・マン24時間レースを制した経験を持つアンディ・ウォレスだ。
コースインしたシロンはまず、車両コンディションをチェックするために慣らし運転を1ラップこなした。リフトやダウンフォースを確認しながら50km/hずつ速度を上げていく。そして北のコーナーから200km/hに加速し、8.8km/hにおよぶストレートでは見事490.484km/hの最高速度を記録した。
走行後にアンディは次のようにコメントしている。
「信じられないほどのスピード。量産車がこのスピードに対応できるとは考えられませんでしたが、シロンは準備万端で、超高速域でも非常に高い安全性を感じました」
彼が最高速記録をマークしたのは、実は今回が初めてではない。1998年に今回のシロンと同じこのエーラ・レッシェンにおいて、マクラーレンF1で391km/hという当時の世界記録を樹立している。そんなアンディは続ける。
「スタートから約70秒間はフルスロットルでした。北コーナーを200km/hで曲がっていかないと、ストレートで最高速度に到達できないのです。最高レベルの集中力が必要でした」。
この記録で彼は1秒間に136mを走ったことになる。
今回の記録挑戦にあたり、開発責任者ステファン・エルロットの指揮のもと、各エンジニアが綿密に準備。エアロダイナミクス性能の改善に加え、とくに安全性には細心の注意が払われた。シートベルトは6点式を採用し、保護セルを追加してドライバーの安全性を高めた。
さらにイタリアのレーシングスペシャリストであるダラーラや、フランスの大手タイヤメーカー、ミシュランの協力も不可欠だった。とくにミシュランとは長年のパートナーで、今回の記録挑戦のためにミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2はさらに補強され、公道走行基準に適合していながら5300Gに対応。今回の挑戦では、1分間に最大で4100回もタイヤが回転することがわかっていたので、最大511km/hの速度によるベンチテストを事前に実施したほか、完成後もX線検査を行ない、微細な部分まで最適化したという。
今回の記録を受けて、ブガッティのステファン・ヴィンケルマンCEOは次のように語っている。
「ブガッティはその可能性を今一度示しました。今回シロンが樹立した新記録によって、私たちは未知の領域に足を踏み入れたのです。私たちの目標は時速300マイルの壁を打ち破る最初の自動車メーカーになることでした。今回の新記録を含めて、これまで私たちは世界で最も速いクルマを製造していることを何度か示してきました。これからブガッティは、最速の量産車を生産するという競争から撤退し、他の分野にフォーカスしていきます」