欧州メーカー上半期実績、明暗分かれる

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フォルクスワーゲンは好調ながら、ダイムラーは利益が大幅減。PSAは好調を保つ

米中の貿易摩擦による世界経済の不透明感、自動運転や環境規制対応へのコスト増など、欧州の自動車メーカーもさまざまな要因に揺れている。2019年上半期(1-6月)の決算が出揃ったが、最大手のフォルクスワーゲン・グループ(VW)は世界販売台数こそ前年同期比マイナスとなったものの、売上高、利益ともに順調に増加。利幅の大きいポルシェの好調や、インドでのシュコダの好調などが他ブランドの落ち込みをカバー。大きな痛手をこうむったディーゼル排ガス不正からも立ち直り、世界最多販売メーカーとしての底力を見せつけた形だ。


ダイムラー・グループは中国の関税引き上げの影響をもろに受けて利益が大幅に減少。売上高はなんとかプラスを保ったものの、中国での台数減に加えてディーゼル車のリコール費用の増加が大きく響いて利益は8割減。4-6月の3カ月決算に限ると15億5500万ユーロの赤字となっており、早急な立て直しが必要となる。日本では好調のメルセデス・ベンツだが、ダイムラー全体では厳しい状況となっており、下半期にどこまで復活してくるのか目が離せない状況だ。
BMWも販売台数、売上高はプラスを保ったものの、営業利益、純利益ともに5割近い減少となっている。原材料の高騰や経済状況の変化などを減益要因に挙げているが、BWMは研究開発費の増加を強調。電動化、燃料電池車、自動運転などへの先行投資額は上半期だけで28億ユーロにおよび、設備投資も含めて利益に大きな影響をおよぼしたという。いわば積極的な姿勢にともなう減益であり、2019年通期の見通しも見直さず強気の姿勢は崩していない。
ドイツ以外に目を向けると、PSAグループは販売台数、売上高は前年同期比マイナスに後退したものの利益は増加。中国、イラン、新興国での販売減に見舞われたものの、シトロエンやDSなど利益幅の大きいニューモデルの投入や、オペル/ヴォクソールの統合によるコスト削減が利益を押し上げたとしている。
一方でルノーは唯一、販売台数、売上高、利益ともに減少。これは日産自動車の業績悪化の影響が大きく、日本でも話題となったとおり業績が大きく後退した日産の株価下落により株主利益が減少。それに販売減が重なって純利益も半減している。この影響がいつまで続くのか、日産にとってもルノーにとっても悩ましい状況となっている。ちなみに2018年はグループ世界販売台数でトップに立ったルノー・日産・三菱アライアンスだが、2019年上半期は3社の販売減によりフォルクスワーゲン、トヨタに次ぐ3位に後退している。
販売台数、業績金額ともに他メーカーよりひとケタ小さいボルボ・カーズは、約1兆5000億円の売上高と世界販売台数は過去最高を更新。その半面、販売競争の激化、中国の関税増の影響などにより利益は減少。右肩上がりだった業績が踊り場に差しかかった感もあるが、下半期は人員削減やコスト削減などで対応するとしており、再びプラスに戻すことができるのか興味深いところだ。
半期だけの業績ゆえに確定的なことはいえないが、表組内の三角マークが増えているところを見ても、状況が変化していることが分かる、下半期の頑張りでどのメーカーがプラスに戻してくるのか。状況を見守りたい。

ル・ボラン2019年10月号より転載

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