最新のパワーユニットを比較検証
かつてメルセデスのチューニングを手がけていた会社が、モータースポーツ等での目覚ましい活躍により総本山の一部門を担うまでに成長を遂げたメルセデスAMG。このハイパフォーマンスブランドがラインアップする現行モデルのパワーユニットを検証してみよう。
メルセデスAMGは若々しさと刺激を表現!
AMGと言えば私が子供の頃は「アーマーゲー」と呼ばれ、泣く子も黙る存在だった。ウレタン製のリアスポイラーを付けているだけで誰よりも偉く、ロゴ入りホイールを履いているだけで、その正体をよく知らずとも皆から一目置かれるブランドだった。そして現在彼らはメルセデスのハイエンドモデルを担うワークスとして、すっかり世界の人々に認知されるようになった。本家メルセデス・ベンツが厳粛な高級感を守り抜く一方で、メルセデスAMGは若々しさと刺激を表現し、お互いを翼の両翼のごとく引き立てあいながらブランドを構築する。
今回はそんなメルセデスAMGモデルをGLA45からS63までまるっと一気乗り。そのキャラクターを比較してみた。
GLA45 4MATIC
今回集めた中で一番コンパクトなGLA45はコンパクトSUVというより、その手前で流行ったSUVクロスオーバーという方がしっくり来る。
その特徴はまず140mmのロードクリアランスがもたらす高いアイポイントと、街中で段差や縁石等に気を遣い過ぎずに済む日常生活での利便性だ。かたや1550mmの全高はタワーパーキングをクリアし、「大きなハッチバック」といえるボディも扱いやすい。世代的には「ハイ、メルセデス!」で起動するMBUXや横長のモニターを搭載しないが、内装の質感は高くディスタンス・パイロット・ディストロニックを基軸とした先進安全装備にも現役感がある。
純粋な運動性能だけを求めるならベースとなるA45の方がいい。SUV仕立てとなったGLA45は重心が高く、通常モードでは操舵に対し動きがやや過敏なのだ。スポーツモード以上ではその剛性も高まるようだが、今度は乗り味がやや硬めになる。もっとも高速域になるほど快適さは増すので、Aクラスにおける最上級モデルの役目はまっとうしているとも言える。
ENGINE TYPE:M133
世界最強の2L 直4ターボ
そんなシャシーの切れ味は、381ps/475Nmのパワー&トルクを放つ直列4気筒ターボのために用意された。この2Lユニットは野性味と緻密さのサジ加減が絶妙で、パーシャルスロットル時の扱いやすさはもちろん、アクセルを踏みつけたときの気持ちよさも格別。この速さを黒子的に底支えする4マチックの存在を含めて、モデル的には一世代前なのに、それを全く感じさせない仕上がりとなっている。
C43 4MATIC COUPE
C43は、実は最も趣味性に溢れたクーペと言える。兄貴分のC63は確かに興味深い。メルセデスAMG GT Rと同じ4L V8ツインターボを搭載する性能は魅力だが、一方で操作性が大幅に向上したとはいえ476ps、C63Sに至っては510psというパワーを後輪だけで受け止めることに敷居の高さを感じているドライバーは、少なくないはずだからだ。
そんな顧客の気持ちを察するかのような完璧さで、C43は仕立て上げられている。3LのV6直噴ツインターボは吸排気の鼓動が刺激的で、同じ6気筒でもストレート6にはない高揚感が味わえる。かつC63用V8ほどの過激ではなく、390psのパワーが楽しめてしまう。
これをアシストするのはFRベースの4マチックだ。リアサスの伸び側減衰力を高めたセッティングと相まってコーナーでの姿勢は安定性重視の弱アンダーステアだが、前後トルク配分の基本を31:69とFR寄りにすることから回頭性そのものは悪くない。かつアクセルを踏み込んだ際リアアクスルは落ち着き払っており、コーナー出口から安心してパワーが掛けられる。ここでCクラスのボディが最後の味付けとなり、スポーティなハンドリングが得られるのだ。
ENGINE TYPE:276M30
専用開発の3L V6ユニット
よってC43は、C63の弟分ながらより現実的なAMGの選択と言うことができるのである。
COLUMN 01/MERCEDES-AMG C63 S
最もスポーティな存在
純スポーツカーであるAMG GTを除けば、AMGで最もスポーティな存在がC63。特に後期型はESCが9段階の電子制御となり、路面状況やレベルに応じてV8エンジンとFRの走りを楽しめるようになった。速さはクーペだが、コントロール性はセダンの方がバランスがいい。