2年前に紹介したサーブ900に続いて再び900購入!【旧車ビギナーは要注意!100万円でドロ沼に陥る!?】

厳しい環境の北欧が生んだ設計の全てが心に刺さる

サーブ所有は、その段階で2台目で、2007年頃に初代サーブ(クラシック)900に乗っていた経験がある。赤いクラシック900ターボ16で、程度は抜群、走行距離も少なかった。でも持っていたのはたった1年ほど。なんで1年? というと、クラシック900は原設計が’60年代ということもあってキャビンが狭くハンドリングも古いFFのそれで、トランスミッションは今や化石のようなBW製3速A/T。ギア比が悪く100km/hで3200rpmを示すなど高速走行がツライ。ずっとフランス車に乗り長距離ドライブばかりしていた自分にはそれらが強く引っかかった。空調も温度調整がやたらに難しい。カタチは最高なのだが、乗るにはいろいろ我慢しないといけないクルマで、メインに乗るには(あの頃は)厳しかった。

古さを感じさせないモダンインテリア:見るからにもっちりしっかりなシートは実際に座り心地が良い。背もたれは立て気味の方がしっくりくる。全長を考えると車内は広くはない。1980年代のデザインだが、モダンなデザインのインテリアに古さは感じられない。

しかし今年の1月に2代目サーブ900を買ったお店に車検で行くと、そこには売り物のクラシック900がいた。RHDの900S。900Sとは高性能版のターボ16ではなく末期に追加された低圧ターボの中堅グレード。価格もターボ16の相場より断然安い。ソリッド紺の外装、青いモケットのインテリアもいい。車検代で頭金を……と”買い替えの正当化”が頭に巡る。結局僕はあまり迷わず買うことにした。変な開き方のボンネット、車体下いっぱいまで開くドア、トランクのバネ、吹き出し口の多いヒーターなど厳しい環境の北欧が生んだ設計の全てが再び心に刺さる。これら”元来のサーブ設計のカタマリ”と、何にも似ていない姿の前では10年前に感じた様々なネガティブ要素は、もはやどうでも良かった。あの当時に比べて運転がおっとりとしたのもある。

イグニッションスイッチはやはりここ:手袋をしたままで操作できると云われるほど各スイッチは大きく、分かりやすい配置になっている。前シート間中央に鎮座するイグニッションスイッチはサーブではおなじみだ。

2年前には2代目サーブ900をススメたが、結局クラシック900に”先祖返り”してしまった。2代目900にはサーブの血がちゃんと受け継がれていて今でもオススメだが、乗れば乗るほど”純血さ”が欲しくなった。かつて古いシトロエンを次第に求めていったのと同じように……。そういえばどちらもカタチや思想の『必然から生まれた独善的設計のカタマリ』が共通しているではないか!

高さはないが奥行きが深いラゲッジ:ラゲッジ容量は大きいが、古いセダンなので奥にやたら深く高さが足りない。リッドのダンパーは当時凍結しないそれが製造できなかったため、バネを用いていたと云われている。

所々に溢れる濃密な独善的設計:サイドシルがないのでドアはボディ裾まで伸びる。これは悪天候時にサイドシルでズボンの裾を汚さないようにする配慮。乗降性も抜群。フロントウインドーの曲率にも注目。まるで円錐。Aピラーが手前に来るため視界はかなり良い。この個体にはリアにレトロ感アップのロゴ入りマッドフラップが。これも購入の決め手になった。

 

1992 SAAB900S

車両購入価格●600,000円

満足度 ★★★★★
レア度 ★★★★
ドロ沼度 ★★★★

市場でのクラシック900はターボ16がほとんど。過走行も多いが専門店扱いの個体なら逆に整備が入っている証拠。900Sはレア。性能はターボ16と実はあまり遜色ない。なぜなら、ターボ16も燃費悪化が、怖くてアクセルを踏めない!

Text:遠藤イヅル/Izuru ENDO Photo:近藤浩之/Hiroyuki KONDOU カー・マガジン481号(2018年7月号)より転載

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