第77回グッドウッド・メンバーズ・ミーティングで クラシック&モダンのトレンドを探る!

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往年のレーシングカーがアチラコチラに! ファン垂涎のイベント

ヨーロッパやアメリカで数多く開催されているヒストリックカー・イベントの中でもぜひ一度見てもらいたい! と思うもののひとつが、イギリス・グッドウッド・サーキットで毎年春に行われる「グッドウッド・メンバーズ・ミーティング」である。なぜなら1900年代の太古車から2000年代のLMPマシンまで、様々なジャンルを対象としたこのイベントこそが、世界のヒストリックカー・レースのトレンドを作り出す源泉となっているからだ!

 7月のフェスティバル・オブ・スピード(FoS)、9月のリバイバル・ミーティングに続く、グッドウッド第3のイベントとして2014年にスタートしたグッドウッド・メンバーズ・ミーティング。

 そもそもはグッドウッド・サーキットを設立した第9代リッチモンド公爵が、自身も所属するブリティッシュ・オートモービル・レーシング・クラブのメンバーのために1948年から66年にかけて開催していたレースイベントであったが、孫の第11代リッチモンド公爵(当時はマーチ卿)が、グッドウッド・ロード・レーシング・クラブのメンバー専用のヒストリック・イベントとして復活させたものだ。

1979年から80年にかけて、F1GPの前座としてF1ドライバーを集めて開催されたワンメイクのBMW M1プロカー・レース。その40周年を記念して開催されたデモランも、今回の目玉のひとつ。参加台数5台と少々寂しい内容となってしまったが、編隊を組んでのハイスピード・デモランは迫力満点。近い将来、ヒストリック・プロカー・レースなんかも始まるかもしれない。

 その最大の特徴は、1966年以前という厳格なレギュレーションのもとで行われるリバイバル・ミーティングと違い、グッドウッド・モーターサーキットを舞台に1900年代のクルマから、2000年代のレーシングマシンまで幅広い年式を対象としたレースプログラムを毎年実施していることだ。そしてここで注目されたカテゴリーが、のちに各地のヒストリック・イベントに広まるというトレンドセッターとしての役割も果たしている。

ポルシェ917の50周年を祝して、ポルシェ・ミュージアムはレストアが完成したばかりの第1号車917-001を持ち込んだ。写真のドライバーはマーク・ウェバー。917のコクピットは身長184cmのウェバーにはかなり窮屈らしく、首を少し曲げてのドライブとなったが、それでも十分以上の速さを見せるあたりはさすが。

 そんな彼らが今年ピックアップしたのは、誕生50周年を迎えたポルシェ917、生誕60周年を迎えたBMCミニ、創立100周年を迎えたベントレー、さらに1979~80年にかけてF1ドライバーを擁して行われたBMW M1プロカー・レースや、2000年代のNASCAR、そしてLMPカテゴリーなどであった。

ピットで談笑するのは、1970年に初めてポルシェにル・マン総合優勝をもたらしたリチャード・アトウッド(右)と936、956などでル・マン5勝をあげたデレック・ベル(左)。お互いに乗った917の情報を交換し合うなど、デモランとはいえ真剣そのもの。

 このうちBMCミニに関しては、60台ものエントリーを集めて(実際の応募は200台もあったという!)ワンメイク・レースを開催。土曜に30台ずつの予選レースを行い、日曜に勝ち上がった上位15台ずつ、合計30台による決勝レースを行ったのである。そのすべてが1967年までに製造されたMk1というだけでも驚きだが、今イギリスで最も熱いミニのチューナーで、ミニ遣いとしても知られるニック・スウィフト、昨年のヒストリックF1のチャンピオンであるニック・パドモア、さらにアストン・マーティン・ワークスのエースであるダレン・ターナーなど、ハイレベルなドライバーが勢ぞろいする、まさにドリームレースの様相となったのである!

BMC ミニの60周年を記念して、1967年以前のモデルを対象に行われたワンメイク・レース。30台ずつ2クラスに分けて予選レースを行い、勝ち上がった上位15台ずつが決勝レースを行なったのだが、現役のBTCCやDTMを凌ぐほどの接戦が繰り広げられ観客は大興奮!

 もちろん予選レースから、各所でサイド・バイ・サイド、テール・トゥ・ノーズの白熱した争いが各所で繰り広げられ、1周3.8kmのコースサイドを埋め尽くした観客(入場料はメンバーでも2日間で141ポンドと高額なのだが、チケットは完売だった!)は大興奮。日曜の決勝レースではニック・スウィフトとニック・パドモアの息の詰まるような近接バトルがオープニングラップから繰り広げられた末、最終ラップの最終コーナーでスウィフトが逆転勝利を挙げるというドラマティックな展開となった。

数あるレースプログラムの中でも高い人気を誇るのが、1970年から82年までのツーリングカーによって競われる”ジェリー・マーシャル・トロフィー”。ローバーSD1、BMW528、フォード・カプリ、ゴルフ GTI、シボレー・カマロZ28などちょっと古いクルマたちが繰り広げる本気のレースは大迫力。土曜にオーナーとプロドライバーが組んだセミ耐久、日曜にオーナーによるスプリントと2度レースが楽しめるのも人気の秘訣。

 一方、50周年を迎えたポルシェ917(この後も各地で様々な催しが行われるようだ)に関しては、昨年ポルシェ・ミュージアムでレストアが完成したばかりの1号車917-001をお披露目した上で、1970年のル・マン・ウィナーであるリチャード・アトウッドと、元LMP1クルーのマーク・ウェバーがドライブを披露。さらにガルフカラーの917K、1971年のCan-Amマシン917/10、1972年のCan-Amチャンピオン917/30、1975年のインターセリエ・マシン917/30(917/20)という917の各モデルが集結。デレック・ベルやニール・ジャニらが乗り込みデモランを行ったのである。

そのジェリー・マーシャル・トロフィーに今回初お目見えしたのが、懐かしいTE71型トヨタ・カローラ・レビン。BTCCに参戦していたTOYOTA GB仕様で、かつて日本のF2や耐久でも活躍していたティフ・ニーデルがドライブ。しかしセミ耐久でリタイアとなってしまった。

 もうひとつ注目を集めていたのが、2000年代のLMPマシンを集めて行われたデモランだ。実はヨーロッパでは一昨年からヒストリックLMPのレースが開催されており、今回もベントレー100周年を祝してベントレーが持ち込んだ2003年のル・マン・ウィナーカー、スピード8(ドライブしたのは当時の優勝クルーであるトム・クリステンセンとガイ・スミス!)を筆頭に、個人所有(!)の2000年型アウディR8、2012年型のプジョー908HDi FAP、2015年型のアルピーヌA450Bなど10台以上のマシンがハイスピード・ランを敢行。もうこの時代のマシンですらも、コレクターズアイテムになっているのだということを、まざまざと見せつけられた。

1960年代のレーシング・プロトタイプを対象とした”ガーニー・カップ”には、ヨーロッパのヒストリックレースで活躍する久保田克昭氏がロータス23Bで参加。格上のビッグマシン相手に総合8位でフィニッシュする大活躍を見せた。ちなみに久保田氏は8月に行われる鈴鹿10時間で、ミカ・ハッキネン、石浦宏明、両選手とともにマクラーレン720S GT3で参戦することが発表された。

 この他にもBMW M1プロカーのデモラン(台数が少なかったのが残念)や、1920年以前の太古車によるレース、1970年代のツーリングカー・レースなど、様々なプログラムが用意されていたのだが、ヒストリック以外にも大きな話題がふたつあった。

こちらは1954年から59年までのスポーツカーを対象とした”トニー・ゲイズ・トロフィー”。フロントローからスタートしたメルセデス・ベンツ300SLをドライブするのは、元F1ドライバーのデイヴィッド・クルサード。追いすがるヒーリーを振り切り、見事なドライビングで優勝をかざった。

 ひとつ目は、先日のジュネーブ・ショーで生産型が公開されたマクラーレン・セナGTRをマクラーレン・オートモーティブ(このイベントのスポンサーでもある)が持ち込み、ブルーノ・セナのドライブで世界初のデモランを披露したこと。そしてふたつ目はロンドンの超低排出ゾーン(ULEZ)規制に合わせてピニンファリーナが開発した1900psを誇るEVスーパーカー、ピニンファリーナ・バティスタのワールドプレミアが行われたことだ。

「こんなクルマでも本気でレースをするの!」と驚かずにいられないのが、1925年までの自動車を対象とした”S.F.エッジ・トロフィー”。手前は1910年型のフィアットS61、奥が今回の中で最も古い参加車となった1903年型のメルセデス60hpだ。

 このようにたった2日間ではすべてを消化することができないほど、様々なニュースと話題に溢れていた77thグッドウッド・メンバーズ・ミーティング。まだ日本では馴染みの薄い存在ではあるが、彼の地のトレンドを知るという意味でも、ぜひ一度見ていただきたいイベントである!

ヨーロッパでは、もはや2000年代のLMPマシンも趣味の対象。一昨年からはヒストリックLMPのレースがヨーロッパのGPサーキットを舞台に開催され、回を重ねるごとに台数を増やしている。今回はベントレーの100周年を祝い、2003年のル・マン優勝車スピード8(No.7)も加わり、ハイスピード・デモランを披露した。

1924年にベントレーに初のル・マン優勝をもたらしたジョン・ダフの名を冠した戦前期のスポーツモデルのレース。1台、1台が博物館級なのに、29台も集まって文字通りのガチンコレースを繰り広げる! とても日本では考えられない光景だ。

ジュネーブ・ショーで公開されたマクラーレン・セナGTRが公の場で初めて走行を披露。ドライブするのはブルーノ・セナ。「ロードカーのセナも素晴らしいけど、これはパワーもあるし、ダウンフォースも増えている。最近は一般道の規制が厳しいから、むしろこういったサーキット専用車の方が楽しめるかもしれないね」

ピニンファリーナが開発したEVスーパーカー、ピニンファリーナ・バティスタのワールドプレミアも開催。開発アドバイザーを務める元F1ドライバーのニック・ハイドフェルドによると、1900psのパワーとクイックなハンドリングはモダンF1マシン並みにエキサイティングだという。

フォト:藤原功三(K.Fujiwara)/藤原よしお(Y.Fujiwara)

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2019/04/13 13:00

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