北海道から南紀まで日本中の風景が楽しめる
北緯40度に位置する男鹿半島の入道崎。夕日の美しいことで知られる。
寒風山の頂上に立って妻恋峠の方向を振り返れば、この山が火山だったことは、誰にもひと目で理解できるだろう。妻恋峠を挟んで並ぶ大小ふたつのすり鉢状の窪地はかつての噴火口。その西には直径1km近い大噴火口(寒風山第一火口)跡が広がり、道はその縁に沿って大きく半円を描きながら男鹿半島の奥へと下っていく。
ある意味、パノラマラインの眺めがいいのも当たり前のこと。妻恋峠の西側区間は、世にも珍しい『お鉢巡り』の道なのである。
白黒の縞模様が印象的な入道崎灯台。『日本の灯台50選』のひとつで、灯台展示資料室(入館料200円)もある。
寒風山が活発な火山活動をしていたとされる2万年前は氷河期の終わりの時代。その後、気温の上昇とともに海面も上昇して、男鹿半島は本州から切り離され、約1万年前には日本海に浮かぶ火山島になっていたという。そして、さらに時代が下ると、海流の影響で島と陸地の間に砂が堆積し、2本の砂嘴で再び本州と結ばれた。
秋田名物“ババヘラアイス”。道ばたのパラソルの下、おばあちゃんがヘラを使ってアイスを盛りつけてくれる。
琵琶湖に次ぐ国内第2位の面積を誇っていた八郎潟は、砂嘴と砂嘴の間に取り残された海の名残。この水深のきわめて浅い汽水湖は、昭和32年(1957年)からはじまった干拓事業により、その大半が農地に生まれ変わったのだが、そんな湖の誕生から生まれ変わりまで、寒風山の頂上に立って眺めると、手に取るように分かる……ような気がしてくる。
男鹿半島の南側に位置する潮瀬崎。ゴジラ岩をはじめ、カメ岩、双子岩、帆掛島など、様々な形をした奇岩が点在する。
男鹿半島をクルマで旅していると、何より驚くのは、その風景が実に変化に富んでいることだ。
県道59号で半島の南側から北端の入道崎をめざすと、まるで南紀のような荒々しい海岸風景が続く。その大半は火山噴出物が作り出したもので、八望台周辺には美しい火口湖まで点在している。一方、内陸のなまはげライン沿いには、いかにも東北らしいのどかな田園風景が広がり、入道崎を回り込んだ北の海岸には美しい砂浜もある。さらに八郎潟の干拓地へと足を延ばせば、まるで北海道のような大平原と定規で引いたような直線路にも出会うことができる。
日本海にちょこんと突き出した半島をひと巡りするだけで、日本中の風景を楽しめるといったら、ちょっと誉めすぎだろうか。
近くには鬼伝説の残る五社堂もある。八郎潟放水路にかかる男鹿大橋のたもと、総合観光案内所の駐車場に立つ巨大なナマハゲ像。身長は15mもある。