JAXAと国際宇宙探査ミッションで協力
トヨタと宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、国際宇宙探査ミッションでの協業の可能性を検討していくことについて3月12日に合意した。
その第一弾として、これまで共同で検討を進めてきた「燃料電池車(FCV)技術を用いた月面での有人探査活動に必要なモビリティ「有人与圧ローバ」について、さらに検討を協力して加速することに合意。月面まで輸送し得るエネルギーが限られる中、この有人与圧ローバは月面で1万km以上の走行を可能にするという。
国際宇宙探査ミッションでは、人類の持続的な繁栄を目指し「人類の活動領域の拡大」と「知的資産の創出」を目的として、人類が大気圏を超え、月・火星を目指す。その実現には、小惑星リュウグウへのタッチダウンに成功した小惑星探査機「はやぶさ2」のような無人探査とローバにより宇宙飛行士が月面で活動するような有人探査の協調が不可欠だ。また、月や火星の探査というチャレンジングなミッションに各国が競争しながら技術を高める一方、協調した取り組みも進んでいる。
今回、トヨタとJAXAの協力合意に際しJAXAの山川理事長は以下のようにコメント。
「JAXAでは、我が国の国際宇宙探査への参画に向けて、国際調整や技術検討を進めており、我が国として優位性や波及効果が見込まれる技術で貢献することを目指しています。今回、トヨタ自動車様が国際宇宙探査に挑戦する“仲間”に加わっていただき、大変心強く思います。有人与圧ローバは本格的な月面の探査・利用において重要な役割を担う要素であり、我が国の技術力を結集して技術検討に取り組んでいきたいと考えています。今後の共同検討により、トヨタの優れた走行に関する技術力を活用させていただき、有人与圧ローバの実現に向けて、技術検討が加速していくことを期待しています」
一方、トヨタの豊田社長は以下のように語っている。
「自動車業界としては、これまで「ホームタウン」、「ホームカントリー」を念頭に取り組んできましたが、これからは地球規模の環境問題への対応など、我々の故郷である「ホームプラネット」という概念が非常に大切になってきます。国・地域といった枠を越えて、どのような役割を果たしていけるのかを考え続けている私たちと、国際宇宙探査は志を同じくするものだと思います。また、クルマは地球上のあらゆる地域で使われており、地域によっては生きて帰ってくるための相棒として活躍しています。今回のプロジェクトに求められることは、まさに生きて帰ってくるということだと思います。そうしたプロジェクトに、これまで培ってきたトヨタの車両の「耐久性、走破性」と「FC」という環境技術に期待を寄せていただいていることを大変うれしく思います」
なお、トヨタとJAXAが検討を進めている有人与圧ローバのコンセプト案だがボディサイズは全長6.0m、全幅5.2m、全高3.8mというマイクロバス約2台分。居住空間は4畳半ワンルーム程度で、通常時は2名滞在(緊急時は4名)が可能なものだという。