クルーの工場を堪能した後、用意されていたのはベンテイガの最新モデルとなるV8版。ここからコッツウォルズを経由し、ロンドンへまで約350kmのカントリーロードを走る。高速巡行が得意そうだが、意外にも一般道で快適な乗り味を見せつけてくれたのだ。
ベンテイガに魅力的な選択肢が加わった
クルー工場の取材を終えた翌朝、ホテルのエントランスで我々を迎えてくれたのは4台のベンテイガV8だった。ここから一路南下し、コッツウォルズを経由しロンドンへまで、2日間をかけて約350kの道のりをドライブする。
すでに国内に導入されているが、自分にとってベンテイガV8は初試乗。そのため前日には、クルー工場の脇にあるフラッグシップショールームのCW1ハウスにて、デザイナーから短時間のレクチャーを受けていた。
上質なウッドとレザーを惜しみなく用いたコクピットは、イギリスの最上級のラグジャリーを体現したもの。
エステリアのチーフデザイナーであるジョン・ポール・グレゴリー氏によると、「ベントレーブランド初となるSUVのベンテイガをデザインすることは、我々にとっても大きなチャレンジでした。その中で鍵となったのは、ベントレーの力強さを表現すること。前後のフェンダーアーチの盛り上がりは、他のモデルに共通するアイコンで、特にリアは虎が獲物にとびかかる直前の筋肉の様子を表現しています。これは大径ホイールを装着するベンテイガではいっそう強調されていると思いますよ。V8モデルではエキゾーストの造形を変更したり、クロム部分をブラックとすることで、スポーティなイメージとしました」
エクステリアデザイン責任者 ジョン・ポール・グレゴリー氏
一方インテリアのチーフデザイナーのブレッド・ボーイデル氏は、「インテリアでは、ダッシュボードとコンソールの造形を、ベントレーのエンブレムにある翼のデザインとしています。他のモデルと共通する意匠も採用していますが、ベントレー・ベンテイガV8 SUVらしいユーティリティも重視しました」
インテリアデザイン責任者 ブレット・ボーイデル氏
そんなV8モデルに乗ってまず気づくのは、4.0リッターV8ツインターボユニットの奏でるサウンドだ。もちろん低回転域では静かでジェントルなのだが、ひとたびアクセルを多めに踏み込むと、アメリカンV8にも似た、図太く迫力ある排気音が心地いい。その加速もW12に遜色ないフィーリングで、今回ルートの多くがカントリーロードだったが、ピックアップもよく、非常に乗りやすかったのが印象的。このあたり、スムーズな回転フィールで吹け上がるW12とはやや性格が異なっている。
4.0L V8ツインターボユニットは、W12より58ps/130Nmレスの最高出力550ps、最大トルク770Nmを発生。0→100km/h加速4.5秒、最高速度290km/hのパフォーマンスを発揮。可変シリンダー機構も備わる。
途中、ところどころワインディングロードも試せたが、ここではエンジン単体がW12より50kgほど軽量なおかげでノーズが軽く、思いのほかハンドリングもスポーティ。もちろん高い車高ゆえそれなりのロールは許容するが、ラインとレース性も良好で、車線が狭い箇所でもそれほどストレスなく走り抜けることができた。
ホイールは標準で21インチ、オプションで22インチも装着可能。タイヤはピレリPゼロが組み合わされていた。
これだけのパフォーマンスを誇るベンテイガV8は、W12よりリーズナブルなのも魅力のひとつ。まあそれを気にするユーザーは、そう多くはないだろうが。
センターコンソールにはオンロードでの走行モードのほか、雪や砂、岩などの悪路走行切り換え機能も備わる。
今回のツアーの会食時、セールス&マーケティング役員のクリス・クラフト氏が、ベントレーのいまとこれからを語ってくれた。
セールス&マーケティング役員 クリス・クラフト氏
「ベンテイガの成功で我々はセールスを拡大していますが、工場を見ていただいてわかる通り、最も重要なのは高いクオリティを維持することです。職人による伝統的なクラフトマンシップを継承しつつ、高品質なプロダクトを送りだす姿勢はこれからも変わりません。それが顧客の望むベントレーの姿なのですから」
スの最上級のラグジャリーを体現したもの。伝統のアナログ時計やエアコン吹き出し口のクローム製レバーも他のモデルと共通。
この伝統を貫き続けるベントレーの精神は、きっと彼らの今後の成功に繋がることだろう。