六十里越(No.049)
雪深い県境の峠は春とともに躍動する。
豪雪地帯であるこの地に青葉が芽吹く頃、山の斜面を覆っていた雪は水となり、サラサラと流れを作って低きへと集まる。そんな遅い春を待ちきれずに道や畑を覆う固く凍った雪を割っては、地面を露出させていく。こんな行為を〝雪わり〟という。
新潟の柏崎と福島の会津若松を結ぶ国道252号。この道の新潟/福島県境、魚沼市と只見町を結ぶ峠を古くから六十里越と呼び、現在では「雪わり街道」の愛称でも呼ばれている。六十里越とは、実際には6里の道ながら60里に感じるほど剣しかったからだという。そして、雪わり街道の言葉が示すように、冬は雪に閉ざされる。
会津側からだと、けっこう急峻な登りのワインディングとなる。気が つけば眼下に田子倉湖。
六十里越のクライマックスとなるのは県境に位置する田子倉湖(ダム)を眼下に眺める福島側の風景。とくに春先の開通間もない時期であれば、いまだ冬を過ごす白い山の端と新緑のコントラストが鮮やかに広がる日本離れした風景に出会える。乾いた路面のそこここに流れる雪解け水に、しぶきを上げながら走るワインディングの爽快さは他に類をみない。もちろん、春が美しい道は、夏も秋も美しい。そして、見ることはないだろう冬の六十里越も厳しく、美しいのだろう。
なお、只見町で六十里越から分岐して北に向かう国道289号は八十里越と称されてきた。もちろん、その理由は8里の道が80里に感じるからである。この国道はいまだ開通していない。
★メインカット撮影ポイント
◎正式名称/国道252号
◎区間距離/32km(魚沼市大白川-只見町)
◎冬季閉鎖/11月中旬-4月下旬
◎撮影時期/6月中旬
田子倉湖の下流にある万台橋は2011年の只見川水害で一部が流されたまま。
アクセスガイド
新潟側からアクセスする場合、国道252号に最も近いのは関越道の小出IC。練馬ICからは約205km。福島側は磐越道・会津坂下IC経由でもいいが、東京からなら東北道を白河ICで降り、甲子トンネル経由が意外と早い。
観光情報
魚沼市観光協会 Tel:025-792-7300
只見町観光まちづくり協会 Tel:0241-82-5250
六十里越の北を抜ける八十里越は、戊辰戦争で活躍した越後長岡藩の河井継之助の没地。只見町には立派な記念館がある。
文:佐々木 節/写真:平島 格
※料金・営業時間・問合せ先などは平成27年9月時点のものですので、お出かけの際には最新情報をご確認ください。また特に表示のないものは消費税8%税込み料金で、宿泊料は原則2名1室利用時の1名分の料金です。