ならではといえる工芸品的仕立ては健在!
トヨタ自動車は2017年に生産終了となっていた「センチュリー」を復活、6月22日に発売を開始した。先代は1997年デビューということで、今回の3代目は実に21年ぶりのフルモデルチェンジとなる。車両本体価格は、消費税込みで1960万円。
その開発テーマは、「継承と進化」。「匠の技」と「高品質のモノづくり」を継承しつつ、ハイブリッド化による優れた環境性能と新しい魅力を付与した内外装デザイン、ショーファーカーとしてふさわしい先進・快適装備を搭載。1967年の初代から受け継がれてきたトヨタの旗艦に相応しい乗り心地、静粛性、走行安定性を一段と向上させている。
ボディサイズは、全長5335×全幅1930×全高1505mmで先代より大型化。ホイールベースも3090mmと大幅に伸びている。スタイリングは、昨年の東京モーターショーで発表されたプロトタイプから変わっておらず、先代ないしは初代のイメージを色濃く残すフォーマルな仕立て。トヨタによれば、日本の美意識に通じる静的な均整感を保ちながら、後席を上座とする独自の思想を造形に表現したという。サイドビューは、あえて傾斜を立てた重厚なクォーターピラーにより後席の存在感を強調、ショーファーカーにふさわしく、ひと目でセンチュリーと分かる造形となっている。
サイドボディは、ドア断面の美しいカーブを追求するとともにショルダー部のキャラクターラインには「几帳面」と呼ばれる、平安時代の屏障具(へいしょうぐ)の柱にあしらわれた面処理の技法を採用。端正に並んで走る2本の線を角として研ぎ出し、わずかな隙に淀みなく通した面を1本の線として際立たせることで、高い格調を与えている。
センチュリーといえば、工芸品に通じる入念な作りも特長のひとつだったが、それはこの新型でも健在。フロントセンターの「鳳凰」エンブレムは、工匠が金型を約1カ月半かけて丁寧に手で彫り込み、躍動する翼のうねりや繊細な羽毛の表情を鮮やかに表現。さらにエンブレムを彩る縦格子のフロントグリル奥に、「七宝文様」を配置し、前後二重構造にすることで、「品位ある華」を演出する。
また新規開発色のボディカラー、エターナルブラック「神威(かむい)」は漆黒感を高める黒染料入りのカラークリアなど7層もの塗装に、研ぎと磨きを加えて奥深い艶と輝きを追求。漆塗りを参考に、流水の中で微細な凹凸を修正する「水研ぎ」を3回実施し、さらに「鏡面仕上げ」まで施される。
室内の作りも、センチュリーの名に相応しいものだ。後席はホイールベースを65mm延長したことで、乗員の膝まわりや足元に十分なゆとりを提供。加えて、後席サイドシルとフロアの段差を従来型より15mm縮小したことで、定評のあった乗降性を向上させている。また、本杢オーナメントで前後席の空間を区切りながら「折り上げ天井様式」を取り入れ、天井には「紗綾形(さやがた)崩し柄」の織物をあしらい、後席の格の高さを表現。無段階に調整可能な電動オットマンや座り心地を追求したリフレッシュ機能付き(左後席のみ)電動リアシートも採用される。
装備品も充実している。11.6インチリアシートエンターテインメントシステムを搭載するとともに、12chオーディオアンプと20個のスピーカーを最適配置。臨場感あふれる音響空間を創出している。また、後席アームレストの7インチ大型タッチパネルからオーディオに加え、エアコン、シート、リフレッシュ機能、カーテンなどのコントロールも可能だ。
先代は国産唯一のV12気筒エンジンを搭載していたが、新型では5リッター+モーターのハイブリッドシステムにスイッチ。エンジンは381psと510Nmを、電気モーターは224psと300Nmを発揮し、システムトータルでの最高出力は431psになるという。また、JC08モード燃費は13.6km/リッターと先代より大幅に向上。2370kgという車重を思えば望外といえるスペックを達成している。
センチュリーだけに、快適性の向上にも余念がない。熟練の匠が時間と手間をかけ、防音材を隙間なく組み付けるなど徹底的な防音対策が施されるほか、エンジン起動時の音や振動にはアクティブノイズコントロールで対応、圧倒的な静かさを実現している。また、電子制御エアサスを採用したほかボディ剛性を向上させる構造用接着剤、乗心地に特化した新開発タイヤなどを投入。さらにサスペンションアームやブッシュ、マウントなどのゴム部品にいたる細部までチューニングを施し、ソフトで目線の動きが少ないフラットな乗り心地を実現しているという。なお、トヨタの最新モデルということで当然ながら「トヨタ・セーフティ・センス」も採用。安全性はパッシブ、アクティブの両面で万全なものとなっている。
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