モビリティサービス事業を合併。カーシェアリングや駐車サービス事業を融合
欧米や中国、日本も含む世界のプレミアムマーケットでトップを競っているダイムラーグループとBMWグループが大きな提携に向けて動き出した。これから成長が見込まれるモビリティサービスの事業部門を合併し、合弁で新会社を立ち上げる計画を公表。ウーバー・テクノロジーズや中国の滴滴出行などがシェアを広げているモビリティサービスの分野でもイニシアチブを発揮していく構えだ。
BMWが50%を出資する「DriveNOW」は、約6000台の車両を持ち、欧州で約100万人の会員を抱える。
ひと口にモビリティサービスといってもその範囲は幅広く、カーシェリング、ライドシェアリング、駐車場検索・予約サービス、電気自動車の充電サービスネットワークなど多岐におよぶ。ちなみに日本ではカーシェアは浸透してきており、駐車場を提供するパークシェアも徐々に普及しつつあるが、相乗りサービスや個人で移動を担うライドシェアは法律の壁もあって普及はしていない。
ダイムラー子会社の「Car2Go」とは欧州を中心に米国や中国でも事業を展開し、車両は約1万4000台を運用し、会員数は約300万人。
ダイムラーとBWMはそれぞれブランドを掲げてモビリティサービスを構築してきた。カーシェアリングではダイムラーがCar2Go、BMWはDriveNowの名で展開し、31の主要都市で2万台の車両でサービスを展開し、その会員数は400万人を超えているという。2社の合弁ではこの2ブランドの統合が核となりそうだが、さらにフランスで展開するアプリによるタクシーサービス、駐車場検索・予約サービスを加えてスケールメリットを追求していくことになる。
すでに世界的な地位とブランド力を築き上げている巨大メーカーが、なぜモビリティサービスまで手がけるのか? という気もするが、その背後にはクルマの保有がやがて減少していくという予測がある。自動運転化などにより保有から使用へとニーズが移る時代を迎えたとき、ビジネスの主力はモビリティサービスに移る可能性もあり、その流れを把握しておかないと時代に乗り遅れる恐れもある。両社はすでにその危機を感じており、メーカー間の垣根を超えた提携でウーバーやグーグルなどIT企業に競合できる力をつけておく必要があると判断したと見ていいだろう。
この2社に限らず、トヨタ自動車も今年1月には豊田社長自身が「モビリティサービスのプラットフォームを構築する」と宣言し、アマゾンや滴滴出行、ウーバーなどとの提携を進めている。専用自動運転車両であるe‐パレット・コンセプトをCES(コンシューマー・エレクトロニクスショー)で発表するなど積極姿勢を見せており、そのトヨタの動きがダイムラーとBMWの提携を急がせたという見方もできる。
ダイムラーとBMWは昨年、部品の共同調達やEV充電設備の展開などで提携する動きを見せたが、そのときは独占禁止法に触れるのではないかというドイツ当局の指摘により断念している。今回の提携および新会社設立もドイツ当局の承認を得た上で、’18年中の具体化を考えている。
クルマの保有から使用へと移る時代がそんなに早く来るのか、ましてやプレミアムクラスでは所有が主流の時代がまだ続くと思うのだが、やはりその先を見ておかなければダメなのだろう。今後、このダイムラーとBMWの動きを見て他のグローバルメーカーがどんな反応を見せるのか。興味深いところだ。