トヨタも追突事故5割減の効果を示す
シティセーフティ、アイサイト、ドライビング・アシストプラスなどなど、呼び名はいろいろの先進安全機能だが、衝突被害軽減ブレーキを主体としたこの機能、実際の路上、リアルワールドでどこまで効果を発揮しているのか、なかなかつかみにくい面もある。
まず、そんな疑問に対するひとつの回答となったのが、スバルが2016年1月に発表したアイサイト搭載車の事故削減効果だった。スバル車のうちアイサイト搭載車と非搭載車、合計29万4224台の事故内容を分析したところ、事故が6割減、追突事故に関しては8割減という結果だった。日本では自動車メーカーが事故に立ち会って調査する権限はないので、調査機関である交通事故総合分析センター(ITARDA)が持つ数字から丹念に拾っていくしかないのだが、スバルがやって得た結果が前述の数字だった。
それから1年半を経て、今年8月にトヨタが同じくITARDAの数字を分析し、トヨタ・セーフティセンスP装着車の事故削減率を算出。対象車種はプリウスのみ、サンプル数は24万7000台とスバルより少ないが、追突事故が5割減、インテリジェントクリアランスソナー装着車では9割減という結果を得ている。スバルと近い数字であり、衝突被害軽減ブレーキを装着していれば、追突事故が半減することはほぼ証明されたと見てもいいだろう。
本来、こうした事故分析こそ公的機関が行って欲しいものであり、詳細な数字を持っている警察などの協力があればもっと多くのサンプルから正確な事故削減効果を知ることができるはず。ここにきて多くの新型車が先進安全機能を搭載してきているが、保有台数に対する普及率はまだ高くない。政府も年間の交通事故死者数2500人以下を目指すなら、こうした調査をしっかり行って結果を示すべきだろう。
一方、海外に目を向けると2016年10月には衝突回避自動ブレーキの本家本元であるボルボが追突事故76.5%減、対人事故58.6%減という結果を発表。その効果の高さを示したが、ここにきてアメリカでも保険会社の団体である全米道路安全保険協会(IIHS)が8月に車線逸脱警告の事故削減効果を公表。衝突被害軽減ブレーキではなく車線逸脱警告というところがアメリカらしいが、たしかに3車線、4車線が交錯するフリーウェイでは速度域が高いこともあって車線逸脱が重大事故につながる可能性が高く、IIHSがこの数字を出してきたのも理解できる。この調査はGM、メルセデス・ベンツ、ボルボ、ホンダ、マツダ、スバルの自動車メーカー6社が協力して行われ、2009年から2015年の事故車の識別番号から状況を分析している。その結果、車線逸脱警告が正面・側面衝突を11%削減し、乗員の傷害率を21%低下させていたと判明。死亡事故の発生率は86%も低減できたと結論づけている。また、非搭載車に車線逸脱警告が搭載されていれば2015年だけで8万5000件の衝突事故と、5万5000人の傷害を防止できたというデータも提示している。
今後、世界各国でこうした調査結果が示されてくると思われるが、日本においても先進安全機能のさらなる普及を図るなら、かつてのエコカー補助金のように、ユーザーの気持ちをくすぐる政策も必要となってくる。購入時の負担を減らす有効な政策が実行されることを望みたい。
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