1955年、レーシングドライバーでありルノーディーラーの経営者だったジャン・レデレがパリに設立した自動車メーカーが「アルピーヌ」。創立当初よりルノーチューナーとして、レースコンストラクターとして名を馳せた同社の名声は、ラリーで大活躍した「A110」によって歴史上に燦然と輝いている。
今回は新型A110を発表して注目を集めた、アルピーヌの主要モデルを駆け足で振り返ってみよう。
記念すべき市販第1号はA106
タイトル画像として掲載したのは記念すべき市販第1号モデルの「A106」で、ごく初期に製造された個体。1950年よりモータースポーツの世界に身を投じ、モンテカルロやミッレミリア等のラリーをルノー4CVで戦い、好成績を得ていたジャン・レデレが、大量生産車のパーツを可能な限り流用したフランス製小型スポーツカーの市販を実現したのだ。
A106のベースはルノー「4CV」。エレガントなFRP製ボディーの製造はシャペ兄弟の手による。モデル名の「A」はジェスが勝利を挙げた「Critérium des Alpes」の「A」を、「106」は4CVのコードナンバーから取っている。
ジェスは1955年6月25日にアルピーヌを法人化。同年のパリモーターショーにてA106を初展示し、同年中にA106の製造を開始するという早業を成し遂げた。後にミケロッティ・デザインを採用したカブリオレや、カブリオレにルーフを搭載した「グランルクス」など、モデルバリエーションを拡大。A106は1959年までの期間に251台が製造された。
1959年のパリモーターショーでは、A106の直系となるニューモデル「A108」が発表された。コンセプトはA106と同じであるが、A108は同じルノーの量産車である「ドーフィン」をベースとしており、エンジン、トランスミッション(トランスアクスル)、サスペンションなどを流用。またこのA108では次モデルA110で伝説となる、固定ボディの「ベルリネット」が追加されたのがトピックといえる。
そして1963年にリリースされたのが伝説的モデルの「A110」だ。ベースは前年に登場したルノーの最新セダンであるルノー「8」。リアエンジン&リア駆動のRRで、チューニングされたエンジンを軽量な車体に搭載(ボディはやはりFRP製)。さらに足回りを強化したA110はラリー界を席巻した。1973年には初代WRCマニュファクチャラー・チャンピオンを獲得、伝説を築いた。
その後はGTへと進化を遂げて
1971年には「A310」をリリース。市販車としてもラリー界でも大成功を収めたA110の後継車であるため、鋼管バックボーンフレーム、RR駆動、FRP製ボディなどA110のコンセプトは受け継いだものの、よりラグジュアリーなGT的味付けがされていた。当初のエンジンは直列4気筒であったが、後にV6エンジン搭載モデル(GTA)もリリースされた。
その後1984年の「GTA(日本名:V6ターボ)」を経て、1991年にリリースされたのが「A610」。ボディ構造がスペースフレームに変更されたのが大きなトピックとなる。また駆動方式はRRを維持しつつも、重量配分を考慮してエンジン搭載位置を前方に移動するなどの改良が施された。が、いずれの後継モデルもA110の成功を上回ることはできず、1995年に生産中止。以降、アルピーヌブランドの車両は市場から姿を消した。
ところが……2012年、突如アルピーヌの名が復活することがアナウンスされ、コンセプトカー「A110-55」が発表された。ケータハムとのコラボレーションがとん挫するなど紆余曲折があったものの、2017年のジュネーブモーターショーで新たなA110が発表されたのはご存知の通り。この新型A110は、オリジナルA110のコンセプトを完全に取り戻した現代のライトウェイトスポーツ。オリジナルに勝るとも劣らぬ魅力を秘めている。アルピーヌ・ファンならずとも市販化が待たれる1台だ。