それは1959年、アマゾンにはじめて装備された
いまからちょうど60年前、1956年にボルボは新型4ドアモデルを公開した。そのエレガントな風貌は、ボルボのルックスに関するそれまでの一般的な認識を大きく覆すものだった。その名は「アマゾン」という。
ボルボPV444
それまでのPV444に続き、戦後2代目のボルボとなったこの新型車アマゾン。その車名はギリシャ神話の女性戦士Amazonsに由来する。当初はその綴りに“s”を使ったAmasonと表記されたが、生産開始前の1957年にグローバルな販売を視野に入れ、Amazonに変更された。ただ、あいにく原動機付き自転車とオートバイのメーカーであるドイツのクライドラーも、同時期にAmazoneという原動機付き自転車を発売していたため、主要マーケットではこの名前を使用することができなかった。
ボルボ122 アメリカ仕様
北欧市場ではこの新型車をアマゾンと呼ぶことに合意が成立したものの、世界のその他の地域では標準モデルが121、スポーツモデルが122、標準エンジンを搭載したエステートモデルが221、スポーツエンジン搭載のエステートモデルが222と呼ばれた。ただ、誕生から60周年をむかえようとする現在では、世界中の人々から親しみを込めて広く「アマゾン」と呼ばれている。
そして1959年、ボルボが特許を取得した3点式シートベルトが世界ではじめてアマゾンに標準装備された。まだ安全が重要視されていなかった時代に搭載された、この画期的な3点式シートベルトにより、今日までの57年間に100万人以上の命が救われたと推定されている。
その後1962年にはアマゾンのエステート版が導入。米国由来の水平分割式テールデートを備えた、エレガントなクルマだった。
ボルボ123GT(アマゾン)
ちなみにアマゾンのもっともスポーティなバージョンが123GTで、スポーツカー1800Sのエンジンが搭載された。123GTは1967年モデルとして投入された1台で、最高出力111hpを発揮するとともにオーバードライブを備えていた。
アマゾンは1956年から1970年の間に66万7791台が生産され、当時もっとも生産台数の多いボルボ車となった。アマゾンは海外での販売を重視して開発されたため、結果として全生産台数の60%がスウェーデン以外で販売されることとなった。
ボルボ221(アマゾン)
1970年7月3日、最後のアマゾンがトースランダで製造された。ダークブルーに塗られた個体は、後にボルボ・ミュージアムとしてオープンする、ボルボのカーコレクションに加えられた。
なお、スウェーデンで販売された約29万7000台のアマゾンのうち、約8%がいまだに現役だという。もっとも一般的なのは1966年モデルで、いまでも4804台が登録され、合計では2万4282台を数えるとのこと。
現代ではあたり前の装備となっている3点式シートベルト。そのルーツを紐解くと、ボルボ・アマゾンというクルマに辿り着く。ボルボが3点式シートベルトを開発し、アマゾンに装備しなければ助からない命が少なくなかったかもしれないと想像すると、ボルボの安全技術に対する真摯な取り組みは、まさに偉大というほかないのである。
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Text:Yasushi HOSODA Photo:VOLVO CAR JAPAN
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Volvo 221 (Amazon)