ハイテク4WDがついにその本領を発揮!
8月25日、ホンダがついに新型NSXを日本市場に導入した。概要は先にお知らせした通りだが、ここでは何回かに分けてそのメカニズムやデザインを解説してゆこう。まずは運動性能の土台となるボディやシャシーの構造、制御技術などについてだ。
まずはボディ関連。初代同様、オールアルミボディが用いられているが、これはご承知の通り車両重量を抑えつつもボディ剛性を高めるためだ。特にコーナリング時に力が掛かるサスペンション取り付け部は剛性に優れる鋳物とすることで、ホイールストロークの正確さを高めている。
駆動方式には前輪を電気モーターで駆動する4輪駆動が採用されているが、このハイブリッドシステムを構成するパワートレイン関係一式は、できる限り車両中央に近くて低い搭載位置が選ばれた。左右別2基の前輪駆動用電気モーターはボディ中心寄り、電気モーター制御ユニットは左右シート間、リチウムイオンバッテリーはシート背後、その直後に置かれる3.5リッターV6ツインターボエンジンはドライサンプ化して低く、そして後輪を駆動力を補うための電気モーターとデュアルクラッチ式9速トランスミッションを最後部にといった具合だ。
左右前輪それぞれに別の電気モーターを用意したのは、単純なトラクション確保にとどまらず、旋回性能向上にも4輪駆動を活用するため。それを可能にするのがSH-AWDシステムである。
SH-AWDは2004年にリリースされたレジェンドに初搭載された技術で、その進化版にあたる新型NSX用は、フロントもしくは前後両方のホイールに左右で異なる駆動力または制動力を与え、前輪の舵角だけに頼らずに旋回力を発生させるというもの。具体的には、減速しつつコーナーに進入していくときにはイン側の前後両輪にアウト側よりも大きな制動力を、脱出に向けての加速時にはアウト側の前輪にイン側よりも大きな駆動力を配分する制御が行なわれている。この制御を実現するため、左右前輪用電気モーターを左右別にして、駆動を完全に独立させたわけだ。
コンチネンタルと共同開発されたタイヤもSH-AWDシステムに最適化されており、サイズはフロントが245/35ZR19、リアが305/30ZR20と、初代と同様に前後異径となっている。また、フロントをダブルウィッシュボーン、リアをマルチリンクとしたサスペンションには、運転操作や道路状況に応じて連続的かつ瞬間的に減衰力が変更される第3世代の磁性流体ダンパーが採用された。
ステアリングは電動パワーアシスト式で、舵角が増えるにつれてクイックになるギア比可変タイプ。これにより、全体的なギア比を高めつつも、自然な操作性を実現しているという。
ブレーキシステムにはブレンボ製のモノブロックキャリパーが採用されており、オプションでカーボンセラミックローターも選択可能だ。制動時にはエネルギー回生システムが介入するが、その際にフットペダルによる操作に違和感が出ないよう、電気サーボによって緻密に制御されている。
こうした各要素をドライバーの意図どおりに作動させるため、新型NSXには4つの走行モードを切り替える統合ダイナミクスシステムが用意された。選択したモードに応じてエンジンや3基の電気モーター、トランスミッション、ステアリング、ブレーキ、スロットル、車両姿勢安定システム、磁性流体ダンパー、SH-AWDなどの特性が統合的に変更されるというものだ。
もっともおとなしく制御されるのが「クワイエット」モードで、基本的には電気のみで駆動して最大効率を目指し、エンジン併用時も4000rpmまでに制限される。吸排気音のコントロールバルブを閉じて静粛性も高められるので、住宅地などを走る際に最適だ。その上が「スポーツ」モードで、エンジン回転数の4000rpm制限と吸排気音コントロールバルブが解放される。これがいわば通常走行モードだ。運動性能を引き出したいときには「スポーツ+」モードで、エンジンとトランスミッションがレスポンス重視の制御に切り替えられ、SH-4WDも稼働する。そしてサーキット走行用の「トラック」モードでは、あらゆる制御が走行性能最優先に切り替わる。
初代NSXは、第一級の運動性能を実現しながらもドライバーの負担を最小限に抑えた運転環境を構築し、当時のスポーツカー界に大きな変革をもたらした。それから四半世紀を経て誕生した2代目NSXのシャシーに投じられた技術にも、そうした初代の精神は受け継がれているようだ。
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