【海外試乗】新開発のアクティブサスペンションにより実現した快適性とダイナミクスの絶対バランス「アウディ・RS e-tron GT」

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アウディe-tron GTがマイナーチェンジを受け、S e-tron GTとRS e-tron GT、そしてRS e-tron GTパフォーマンスの3タイプがラインナップ。走りもインテリアの仕立ても一層高いレベルで両立されており、プレミアムBEVとしてのプレゼンスは世界トップレベルに到達した。

多岐に渡って行なわれたアップデート

アウディのBEVラインナップにおけるトップパフォーマンスモデルであるe-tron GTがマイナーチェンジを受けた。ヨーロッパ市場では6月に発表済みで、すでに受注開始となっている。今回はデリバリー開始に先駆けて、ドイツ・フランクフルト郊外を起点に新型に試乗することができた。

デビューから3年強でマイナーチェンジとなったe-tron GTは、S e-tron GTとRS e-tron GT、そしてRS e-tron GTパフォーマンスの3タイプをラインナップ。その改良点は多岐にわたっている。

AUDI RS e-tron GT Performance/これぞジャーマンプレミアムと胸を張れる出来栄え。

今回は内外装デザインの変更のほか、バッテリーや電気モーター、シャシーに至るまで大幅にアップデート。ルックスの変化以上に中身は“e-tron GT ver.2.0”と呼んでも良いほどの進化を遂げている。

まずリチウムイオンバッテリーは、ニッケル、コバルト、マンガンの混合比最適化により、総蓄電容量が従来の93.4kWhから105kWh(正味容量は84kWhから97kWh)に拡大。最大充電電流は400A、ローンチコントロール時には最大1100Aの放電が可能になった。

新型e-tron GTには、アウディ・エクスクルーシブによる1000通り以上の内外装カスタマイズプログラムが用意されている。日本には、世界299台限定のアウディ・エクスクルーシブ・エディションから25台が導入予定とされる。

回生能力も400kW(従来は290kW)に増大した。DC急速充電は、従来からの50kW増となる最大320kWに対応。これは理想的な条件下であれば、わずか18分で10〜80%の充電が可能であることを意味している。

電気モーターは、従来通り前後に永久磁石式モーターを搭載するが、パワーエレクトロニクスの改良や新しいリアモーターの採用により大幅な性能向上を実現。システム合計では、S e-tron GTが680ps/717Nm、RS e-tron GTは857ps/865Nm、そして新登場のRSe-tron GTパフォーマンスは925ps/1027Nmという、圧倒的なスペックを獲得した。

0→100km/h加速は、それぞれ3.4秒、2.8秒、2.5秒で、最高速度はS e-tronGTのみ245km/hで、その他は250km/hで速度リミッターが作動する。

そしてシャシーには新たにアクティブサスペンションを採用。これは可変ショックアブソーバーに2チャンバー、2バルブ技術を備えたエアサスペンションを組み合わせたもので、ポルシェのパナメーラやタイカンに設定されているポルシェ・アクティブライド・サスペンションと基本的に共通のコンポーネントを使用したもの。あらゆる走行状況でピッチングやローリングを抑えてフラットな姿勢を維持し、優れたトラクションと上質な乗り心地を実現する先進的な電子制御シャシーシステムで、ダイナミックな走りとコンフォート性能を、一層高いレベルで両立させたという。

アシと路面の協調こそ最大の美点

この他にも様々な軽量化やADASの進化など、改良点は多岐にわたるが、そろそろ走りについて言及したい。今回は、この新型e-tron GTの中間グレードであるRS e-tron GTのステアリングを握ることができた。一般道とアウトバーンを走り、フランクフルトの南東方向のカントリーロードを中心に200kmほど試乗したのだが、その仕上がりには正直とても感銘を受けた。

FRONT AXLE/SUSPENSION/新型に採用されたアクティブサスペンションは、ポルシェ・アクティブライド・サスペンションとコンポーネントは基本的に共通。高電圧オイルポンプと2バルブ式の制御ダンパー採用でハイレスポンスを可能にした。

e-tron GTは、これまでも非常に完成度の高い高性能BEVという認識だったが、新型はそこからさらに飛躍。“これぞジャーマン・プレミアムブランドであるアウディに相応しいハイパフォーマンスGTカーだ!”と、筆者はドライブしながら興奮が収まらなかったほどである。

従来モデルから210psと35Nmもスペックが向上したRS etron GTは、さぞや過激な走りを披露するのかと思いきや、動き出しからジワッと転がり、アクセル操作に対する過敏さも皆無で、いたってジェントル。コンフォートモードでの乗り心地も極めてフラットで、ハイパフォーマンスカーとは思えないしっとり感。ラグジュアリーセダン並みとまでは言わないが、それに近い快適性を味わえた。

REAR AXLE AXLE/SUSPENSION

アクセルペダルを踏み込めば、たとえエフィシェンシーモードであっても十二分にパワフルな加速が得られるが、ダイナミックモードを選ぶと、レスポンスが向上して、それこそシートバック越しに背中を蹴られるような、猛烈な加速を披露する。ステアリングホイールに備わる赤いブーストボタンを押せば、10秒間だけ最高出力が70kW(95ps)高められるが、もはやそんな機能は必要ないと感じるほど、べらぼうに速い。

ハンドリングは極めてニュートラルで正確そのもの。後輪が最大2.8度までステアする4輪操舵システムのおかげもあって、低速域では俊敏な回頭性、高速域では抜群のスタビリティによる優れた直進性を実現している。

写真はアウディ・エクスクルーシブのデザインパッケージの一例。あらかじめ用意されたパッケージ以外にも、トリムの素材やカラー、ステッチのカラーなど、広範囲に及びオーナーの希望に合わせたカスタマイズが可能となっている。

特に感心させられたのは、舗装の継ぎ目やパッチの多い路面での乗り心地だ。このような路面をハイスピードで通過しても、ドライバーにインフォメーションを伝えながら、接地感は失わず、しかも乗り心地は常にフラットという、驚くべき振る舞いを披露したのだ。

WLTPモードにおける航続距離も598kmと格段に伸び、走りと快適性も大きく向上した新型は、ICE車も含めてGTカーとして世界トップレベルにあると言える。パフォーマンスモデルの走りがますます気になるところだ。

【SPECIFICATION】アウディ・RS e-tron GT
■全長×全幅×全高=4997×1964×1369mm
■ホイールベース=2900mm
■トレッド=前:1702、後:1667mm
■車両重量=2320kg
■モーター形式/種類=ー/交流同期電動機
■モーター最高出力=680ps(500kW)
■モーター最大トルク=前:305Nm(31.1kg-m)、後:590Nm(60.2kg-m)
■バッテリー種類=リチウムイオン電池
■バッテリー容量=97kWh
■サスペンション形式=前後:Wウイッシュボーン/エア
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ(試乗車)=前:265/35R21、後:305/30R21

※ドイツにおける車両本体価格(19%の付加価値税込み)
・S e-tron GT:12万6000ユーロ(約1970万円)
・RS e-tron GT:14万7500ユーロ(約2300万円)
・RS e-tron GT Performance:16万0500ユーロ(約2500万円)

 

 

フォト=アウディAG ル・ボラン2024年11月号より転載

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